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●第四話 倍々ステータス

 初めてダンジョンに潜る鵜飼は思ったよりいい動きだった。


「お兄さん、私が敵の注意を引き付けます。その間に攻撃してください」


「わかった。だが、無理しないでくれよ、鵜飼。普通、レベル3くらいでは、ホブゴブリンに挑んだりしないんだから」


「わかってますよ。ほうら、鬼さんこっち」


「GUAAAAH!」


 鵜飼の方へ向かおうとするホブゴブリンに後ろから思い切り斬りつける。


「GYA!」


 だが、さすがにホブゴブリンともなると、一撃では無理だ。こいつら背中の筋肉もムキムキだからな。


「させない! 【毒針】!」


「GYA!」


「追撃します。――蒼き天空を駆け巡る雷霆よ、我が指先に集え! されば閃光は我が敵を貫かん。ライトニング!」


 タイミングよくリリが呪文攻撃を入れ、痺れて動けなくなったところに僕が体重を乗せた突きで決着をつけた。


「クリア! うん、今のは良い連携だったな」


「もう一回、やってみます?」


「ああ。だが、鵜飼、あまり調子に乗って敵に近づきすぎないように。ケガをされたら真衣に怒られるのは僕なんだから」


「フフ、それはちょっと面白そうかも」


「おい」


「冗談ですよ。わかってますって」


 再びさっきの要領でホブゴブリンを狩ると、僕のレベルが一つ上がった。


『レベルが1つ上がりました。

レベル 6 久々津凪

STR10

AGI11

VIT 8

MAG 3

DEX 4+2

LUC 9

残りボーナス 2

次のレベルアップに必要な経験値 27』


上昇するステータスの項目はランダムのようだ。上昇幅とボーナスは2でそれぞれ固定か。


「晶、僕のレベルが上がったから、少し調整する時間をくれ」


「いいけど、何を調整するの?」


「ステータスだよ」


「んん?」



『レベル 6 久々津凪

STR 10

AGI 11+1

VIT 8+1

MAG 3

DEX 6

LUC 9

残りボーナス 0

次のレベルアップに必要な経験値 27』



「これでよし。鵜飼、ちょっといいか」


「なんですか、お兄さん」


 今の彼女のステータスはこうだ。


『レベル 3 鵜飼柑奈

STR 5

AGI 10

VIT 5

MAG 4

DEX 8

LUC 5

残りボーナス 4

次のレベルアップに必要な経験値 7』




「鵜飼さん、君ってレベルが上ったときに細かくステータスを調整するタイプのRPGゲームってやったことある?」


「ありますよ。あれってたいていは極振りが強いんですけど、リセットアイテムがリアルで高い値段で売ってたりするじゃないですか。だから詰まないように、攻略サイトを見ながらプレイしますけど」


 良かった、かなり詳しいようだ。


「なら、筋力、素早さ、体力、魔力、器用さ、運の6種類があったら、君はどの能力を伸ばしていきたい? ゲームじゃなくて、この現実世界で」


「そうですねぇ、私、トレジャーハンター志望なので、やっぱり器用さが一番かな」


「じゃ、それを念じてみて」


「念じる?」


「うーん、ほら、冒険者のちょっとしたおまじないってヤツさ」


「そんなのあったっけ?」


 晶が首をひねっているが、否定しなかったので助かった。


「フッ、私はそういうの、信じないほうなんですけど、ま、お兄さんがそう言うのなら、いいですよ?」


「本気でやってくれ」


「はいはい」



『レベル 3 鵜飼柑奈

STR  5

AGI 10

VIT  5

MAG  4

DEX 8+4

LUC 5

残りボーナス 0

次のレベルアップに必要な経験値 7』



「よし。次は晶も」

「ええ? 私はいいよ」



『レベル 7  里森晶

STR  9

AGI  9

VIT  5

MAG  6

DEX 10

LUC  8

残りボーナス 10』



「そう言わずに。頼むよ」

 彼女の場合、僕らよりレベルが高い分、残りボーナスの効果は大きいはずだ。



「じゃあ、攻撃力かなぁ」

「あっと、どれか一つでなくていいよ」


「ええ? さっき久々津が言っていたの、何があったっけ。まあいいや」


『レベル 7  里森晶

STR 9+1

AGI 9+1

VIT 5+5

MAG 6+1

DEX 10+2

LUC 8

残りボーナス 0』


「わぁ、皆さん、強さが上がりましたね!」


 リリが少し驚いたように言うが、彼女も鑑定系のスキルを持っているようだ。


「どういうこと?」

「つまりね、説明すると――」


 僕は簡単に残りボーナスのことを説明した。


「――ということなんだ」


「本当かしら?」


 晶は半信半疑だが、急に黙りこくって考える素振りを見せた鵜飼は、次に興奮したように僕の手を取った。


「凄い! じゃ、私達はレベルが一つ上がるごとに、他のパーティーより倍の速さで強くなるってことじゃないですか!」


「ああ⋯⋯そうなるな、おお」


「じゃ、私も、魔力、魔力、魔力⋯⋯えいっ! どうですか、久々津さん!」


 キラキラした目を向けてくるリリだが。


「あ、ごめん、僕には君のステータスは最初から見えてないんだ」


「えっ、そんなぁ」


「たぶん、レベルが上すぎるからだと思う。レベル15の二条さんも見えなかったし。リリの冒険者カード、ちょっと見せて」


 パーティー登録もそういえばまだだった。


「はい、どうぞ」


「ええとレベル⋯⋯さ、30?!」


「え? ホントに? 見せて。うわ」


 晶達も見て目を丸くする。


「レベル30って凄いじゃないですか。確かAランクの人たちがそのくらいでしたよね?」


 鵜飼はよく調べているな。


「そうなんですか?」


 リリは何も知らないようだけど。


「まぁ、そうだね」


 僕は苦笑してうなずく。


「じゃ、皆さんのレベルもどんどん上げていきましょう。お手伝いします!」


「それは⋯⋯ありがとう」


 リリも恩返しがしたいようだし、それくらいは好きにさせておこう。

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