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18年前 峡谷にて

渓谷の夜は長い。鍛冶屋の家の階下には20人ほどの人々が集まっていた。預言者メクセリーナは、深いしわのある顔に思慮深い表情を浮かべ、古い本のページを丁寧にめくっていた。彼の声は、その場に集まった人々にはほとんど聞こえないほど小さかったが、その目に宿る決意には目を見張るものがあった。一文一文を注意深く読みながら、彼の唇はわずかに動いた。

「ある日、大地が吝嗇になったとしても、それを怒ってはならない。もし雲が雨を降らせないなら、それはあなたの責任だ。。もし栄えないなら、それもあなたの責任だ」

群衆の間から静かなすすり泣きが聞こえた。両手で顔を覆い、静かに涙を流している人もいた。誰もが深い悲しみと無力感に満ちた表情をしていた。彼らは手を膝の上に組み、肩を落として座っていた。シア・メクセリーナは座っている人々の顔を一人ずつ注意深く見た。そして深呼吸をし、本に目を戻した。

「手を泥にまみれ、顔を土にこすりつけよ。火と水をぶつけず、すべての空気を吸い込まないように...。そして両手を広げ、来るべき者、寛大な者を待ちなさい」

司祭の息子であるテムリハが急いで部屋に入ってきて、その場にいた人々に静かに声をかけた。

「彼らが来る」

集まった人々は慌てることなく、しかし急いで席を立った。静かに、しかし素早く、彼らはそれぞれの家の出口に向かった。ある者は地下に掘られたトンネルに向かった。ある者は家の最上階から見えないようにロープの橋を渡った。裏口から暗闇の中に消えていく者もいた。メクセリーナ司祭とその息子テムリハは、この家の持ち主である鍛冶屋の監視の下、ガラクタの山に隠れた部屋で待機していた。

ドアを通り過ぎると、大声で話しながら窓を監視する兵士たちの声が聞こえた。

「入れ」と一人が言った。もう一人は、うんざりするようなゲップをして言った。「腹いっぱいだ」

その時、ドアが壊れるようなノックの音がした。鍛冶屋の息子の一人がドアを開けた。「夕食は何だ!」兵士が叫んだ。「何もない」と鍛冶屋の若い息子は怒った。兵士は顔をしかめながら鍛冶屋の息子に近づき、肩を押した。少年はよろめいたが、目に宿る怒りは消えなかった。預言者の隣に立っていた鍛冶屋は、息子にぶつぶつ言いながら飛び上がり、兵士のそばで一息ついた。

「何事だ?」

「厨房はどこだ」兵士は足で品物を押しのけ、散らばった品々を見回しながら尋ねた。「一日中開いていますよ」鍛冶屋は兵士の顔に一歩近づくと、威勢のいい声で言った。「オートミールがありますが、小さな子供のために手をつけてないんだ」

「この飢饉の最中に食料を隠せるほど、お前は裕福なんだな」兵士は不敵な笑みを浮かべ、鍛冶屋の顔をじっと見つめた。唇の端はわずかに上気し、その目には軽蔑の色が浮かんでいた。

「何が望みだ」鍛冶屋は震える手を拳に握りしめて尋ねた。「隠しているものをくれるなら、このことは総督には言わない」と兵士は答えた。

鍛冶屋は息子に合図した。鍛冶屋は兵士から目を離さず、息子が中から食べ物を持ってくるのを待った。しかし、兵士の目は家中を歩き回っていた。鍛冶屋は今到着したばかりの息子の手からオートミールの入ったボウルを取り、兵士に渡した。兵士が鍛冶屋の手からお椀を取ろうとした瞬間、鍛冶屋は手を引き、歯を見せてうなり声を上げた。「もしここにもう一度でも来たら、何をしてでも殺す」

「心に留めとくよ」兵士は不機嫌そうにそう言うと、鍛冶屋の手からボウルを引き離し、振り返ってドアから出て行った。「次は一人では来ない」

鍛冶屋は絶望と怒りに満ちた目で、外で笑っている兵士たちを見ていた。息子が怒ってドアをバタンと閉めると、鍛冶屋の顔に深いシワが浮かんだ。胸が重くなるのを感じ、彼は深呼吸をして玄関を出て、重い足取りで隠れていた預言者とその息子と合流した。司祭は静かに言った。

「こんなことは続けられない」

鍛冶屋の目は怒りと絶望を隠せなかった。彼はしばらくテムリハを見つめ、唇を震わせた、

鍛冶屋は言った「私たちは23年間待っていた。 私たちの救い主は来てくれません」。

若いテムリハは頭を下げた。 預言者は言った。「父の三人の息子のこの言葉を覚えておきなさい。『もし雲が雨を降らせないなら、それはお前のせいだ。もし大地が作物を実らせないなら、それはお前のせいだ』」預言者は自信を持って言った。

鍛冶屋は頭を抱えて深いため息をついた。

鍛冶屋は言った 「お許しください。 残酷な総督がいるだけでいっぱいなのに、今度は飢饉だ」

預言者メクセリーナはゆっくりと窓辺に向かい、頭を上げて空を見上げた。 彼は決意に満ちた表情を浮かべ、その目には深い思いが宿っていた。

預言者メクセリーナは言った「地球は、ここがカプラの子供たちの故郷ではないことを思い出させてくれる。 しかし、私たちが正当に私たちのものであるものを、ひとつひとつ奪っていく日はきっと来る。 私たち以外にはふさわしくない支配権が、いつか私たちのもとに駆けつけるだろう」

鍛冶屋は預言者に近づきながらつぶやいた。

「それはいつだ?」

預言者は鍛冶屋の肩に手を置いて答えた。

「未来はそう遠くない」

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