占いII
「いやーそうかー2人はクラスメイトだったんだね〜。」
魔白と偶然会った園蔵は、最初こそ驚いていたものの、カノンとの関係性を聞いた途端即座に納得した。
「園蔵さん占いなんてハマってたんだね?」
「あぁ...まぁ...ね...カノンちゃんの占いって中々に正確でさ、自分の過去をバシッと言い当てるんだよ」
少し歯切れの悪い返事をする園蔵だったが、魔白に悟られないよう誤魔化すために、この占いの凄さを伝える。
「じゃあ魔白くん、占いとはいえプライバシーに関わる事だから、一旦席を外してもらえる?」
カノンにそう言われ、魔白は席を外すことになった。幸いここは書店の中なので、暇を持て余すことは無い。
(...とはいえ気になるよねぇ〜ちょっと覗くくらいなら怒られないよね?)
園蔵は初回にやるワンオラクルとは違う方法で占いを行っていた。タロットカードの占い方は人によって違うのだが、カノンの場合は5つのカードを星の形に並べて、その絵柄で占う者の未来を判断する。
「...園蔵さんの...星の逆位置...今週の木曜日に...」
(流石に離れてるから内容までは聞き取れないな...)
結局、占いの大半を覗いていた魔白だったが急な罪悪感からその場を離れた。
(そういえばタロットカードの事なんて全然知らないし、占いの本を探してみるか)
自分が書店にいる事を思い出しタロットカードの本を探す。
「あった!」
魔白は"タロットカードの教科書"という本を手に取った。
(俺の場合は"The lovers"の正位置だから...恋愛、情熱、好きな趣味、重要な選択か...逆位置の場合は、不倫、ジェラシー、道徳心の欠如、選択ミス...逆位置じゃなくて良かったかも...)
魔白は、自分に対する占いの結果に改めて胸を撫で下ろしつつ、先程のカノンの言葉を思い出す。
(そういえば、星の逆位置って聞こえた気がするな...なになに〜星の逆位置は...洪水、働きすぎによる疲労、邪推、傲慢...園蔵さん思ったより社畜なのかな?)
「やっぱり覗いてたんだ」
後ろから揶揄うような楽しさと、ほんの少しの怒気を孕んだような声が聞こえる。
「うぇ!?黒魔さん!?」
慌てて本を閉じる魔白だがどう考えても手遅れだった。
「ごめん...つい気になって...」
「謝る必要はないけど...まぁ人の好奇心は止められないからね、占いだって好奇心があるからやるものだし」
「ここにいるってことはもう占いは終わったの?」
「うん、今日はもう終わり、だからさ...魔白くんがいいなら一緒に帰らない?」
「へ?...いい...です...よ...」
「プフッ、なんで敬語なの?」
完全に予想外な申し出で、変な受け答えをする魔白を見たカノンはつい笑ってしまう。
カノンの思惑など露知らず、魔白は一緒に帰ることを承諾した。
「折角だし歩いてかない?今まで魔白くんとお話すること無かったし」
「うん...」
(ただでさえ緊張を抑えながら今まで話してたのに、更に緊張しちゃう...)
「自転車漕ぎながらだと話しづらいし、歩きながら行こっか」
夜8時、2人は自転車のヘッドライトで手前を照らしながら、道幅に合わせて直列または並列になって進む。
魔白もカノンも同じ東平高校の生徒なので、盛り上がる話はいくらでもあり、意外と話題は途切れなかった。
「そういえば私達1年の時同じクラスだよね?あの時は全然喋らなかったけど」
「うん、僕自身あんまり女子と喋るタイプじゃないし、男友達と喋ってる方が楽しいから」
「そっか...私この見た目だからか、女子にも男子にも若干距離開けられちゃって、魔白くんが羨ましいな〜」
「僕は良いと思うけどな...」
「え?」
小声で呟いた魔白の声は車の音にかき消される。
「ううん、いや黒魔さんってすごい勉強出来るでしょ?それに妙に大人びてるし…凄い人オーラみたいなの出てるし...だからじゃない?」
「凄い人オーラ...フフっなにそれ変なの!」
「いやでも、なんか他の人と違うって感じ!実際、日直で一緒じゃなきゃ僕も話さなかった気がする」
「それはそうかも」
(私が皆とは違うっていうの、何となくでも察しちゃうもんなのかな)
グゥー
「あれ?今のお腹の音?」
カノンと帰ることで頭がいっぱいだった魔白は、自分が晩御飯を食べていないことに今更気づく。
(そういえば今日は外でご飯食べるって親に言っちゃったな…)
「ごめん、今日は外でご飯食べるって親に言ってあるからここで別れるでいい?」
「もしかして占いの時に我慢させちゃってた?」
「いやいやいや、単純に忘れてただけだから」
「そっかーもうちょっと喋りたかったけどなー」
「ごめん!...じゃあいくね」
「うん、じゃあね」
魔白と別れたカノンは、昔の記憶を思い出していた。
(なんだか"あの子"と似てたような気が...いや...気の所為だよね)
結局、考えても無駄だと感じたカノンはそのまま帰宅するのだった。
あー難産