裏内 薫
「明日から夏休みなわけだけど、ハメ外しすぎんなよー?てわけでホームルーム終わりー」
生徒達は1学期最後のホームルームを終え、いつも以上の騒がしさを見せる。
魔白はそんな中で1人、友人に書類を渡すために下校しようとしていたそんな時だった。
「よっとー」
「うおっ!?」
後ろからの衝撃に思わず振り返る。
「なんだ涼太かよびっくりさせんなって」
「俺もいるぞ」
見慣れた2人、涼太と達也がそこにはいた。
「徹、結局学校来てなかったな」
「普通に風邪だって」
「やっぱそうなんか」
達也の問いに魔白が簡潔に答える。
「2人は部活?」
「ったりめーよ!でも徹がいねーとバスケ部盛り上がんねーんだわ、あいつ1番上手いし」
「そこまでなんだ」
徹と同じのバスケ部に所属している達也の持ち上げ様に、少し笑いながらも相槌を打つ。
「確か小学生の時からバスケやってたんだよな?」
「うん、体育の授業でバスケする時とか1人でバカスカ点取ってた」
今度は涼太の問いに対して答えを返す。
「涼太の方はどうなわけ?陸上ちゃんとやってっか?」
「やっとるわ!達也と違ってな?」
「はー?なんだお前やるかー?」
「元気だね君達」
相変わらず下らないやり取りをし、気づくと下駄箱の前にたどり着いていた。
「じゃーなー」
そうして友人2人と別れ、魔白は今日欠席していたもう1人の友人の元へ向かうことにした。
その背に1匹の黒い蝶がとまっているとも知らずに。
下校がてら徹の家に行く旨をRINEで本人に伝える。
帰宅してRINEを開くとあざ、待ってるという文が送られていた。
(RINEすぐ返ってきたし、そんなに心配しなくてよさそうかな)
そして、着替えるのは面倒だと学生服のまま、自転車で徹の家へ向かう。
アオンモールを少し過ぎた所で右に曲がり、数分自転車を走らせると徹の家がある。
そして魔白は呼び鈴を鳴らす。
「魔白でーす」
「待ってた、今鍵開ける」
数秒と待たずに徹がドアを開いて、魔白を家の中へと招き入れた。
「いやー悪ぃなまじで」
「この件は貸しにしちゃおっかな〜?」
「それ病人に言うセリフじゃねぇからな?」
「冗談だって、風邪は大丈夫そうなん?」
「もう大分良くなったわ、で、プリントは?」
「はいこれ」
魔白はカバンからプリントの束を徹に渡した。
「センキュー、ありがとな」
「どういたしましてっと、じゃあ俺帰るわ」
「早くね?折角来たんだしもうちょいいてもいいんだぜ?」
立ち上がって帰ろうとする魔白を、徹が呼び止めた。
「つっても別にする事ねーしなー、病人とゲームしますってのもあれだし...」
「変に気ぃ使うじゃん、お前そんなんだったっけ?」
「なんだよそれ、人は常に成長するもんなんですー!」
「はいはい」
軽口を交えた会話は一旦終わりを迎えた。
そして、ほんの少しの沈黙の後に徹の顔は険しくなっていた。
「...あのさ」
「ん?」
「あー...ん、いや、なんでもない」
徹は頭の中で色々考えた結果、言葉にしようとしてやめたのだ。
しかし、魔白はそれを見逃すほど、徹との友人としての歴は短くなかった。
「なんだよ気になるなー、なんか悩み事?」
「いや...その...進路を変えようかなって思ってさ」
「え!?そうなの!?」
「やっぱ俺勉強よりもバスケの方がしたいなって思ってさ、だからバスケが強い大学に行きたくてさ」
「まじかー...でも徹だったら絶対いけるでしょ!」
「でも...うちの親がなんていうか分かんねーんだよな」
「あ、そっか...」
徹の両親は上場企業の会社に勤めるエリートであり、自分の息子に並々ならぬ期待を寄せていた。
徹は親の期待を取るべきか、自分の意思を取るべきか悩んでいた。
魔白を呼び止めたのは、この事を誰かに伝えて安心したいという思いからだった。
「まぁ結局は俺がどうにかするしかないけどな」
「...俺応援するから」
翳りの見える友人の下手くそな笑顔に、魔白は心の底から出た不器用な言葉をそのまま伝える。
「ありがとな」
「ん、じゃあ俺今度こそ帰るわ」
「OK、まじでありがとな」
「気にしなさんな、じゃあな」
「じゃあな」
本来の目的+αを終え、魔白は帰宅する、つもりだった。
ふと、道中のアオンモールで帰る足を止めた。
(金曜日は黒魔さんいないよな...)
カノンは先日火曜と水曜に占いをやっていると魔白に伝えていた。
書店にいないのは分かっていたが、なんとなく確認したくなった魔白はアオンモールに入っていった。
書店に辿り着いた魔白は、奥の占い屋を確認する。
すると、黒いローブを被った人間がそこにいた。
(あれ?今日金曜日で合ってるよな?)
魔白はカノンだと思い込み、黒いローブの人間に話しかける。
「黒魔さん?今日占いやってたんだ」
しかし、黒いローブから見えたその顔には、カノンの面影を全く感じなかった。
「今日はクロちゃんの日じゃないよ」
「え?」
年齢は70代ほどで、皺のある顔つきと低くワイルドな声を持った女性がいた。
「なんだ学生さんじゃないか、今日は変な客ばっかだねぇ」
「あぁ、あのごめんなさい間違えました」
魔白は即座にその場を去ろうとした。
「待ちな坊や」
「へ?」
しかしその女は、魔白のことを何故かその場に留まるよう伝える。
「あたしは直感ってのを信じてるタイプでね、なんだか坊やのことが気になるんだよねぇ」
「えっと...」
「まぁ座りな、この老婆と少しばかり話しようや」
「帰ってよろしいでしょうか...」
形容し難い危険な雰囲気を感じた魔白は、撤退しようと試みるも、無言でこちらを見る鋭い眼光に押し負け、話をすることになった。
「私は裏内 薫、まぁ見ての通り占いやってるよ」
裏内 薫と名乗ったその女は、舐め回すように魔白を見つめる。
(早く帰りたい...)
魔白は断ることの出来ない自分を悔いるのだった。
新キャラー!




