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夏休み前日

夏休みの前日となった金曜日、登校する生徒達は明日から何をするか、どこに行くかなど、浮き足立つ心のままに夏休みの計画を立てていた。

そんな生徒達の雑踏に混じりながらも、別のことを考えながら魔白も登校していた。

「よう魔白〜」

考え事をしていたため、声の主に対する返事が少し遅れる。

「ん、あぁ達也じゃん」

「なんだお前、眠いの?」

「そんなんじゃねーから」

「ほーん、んで徹はまた休み?」

「分からん、けどそうっぽい、会ってないし」

「お、あいつズル休みか〜?」

「徹は達也と違ってズル休みしないっての」

達也の茶化したノリに魔白も乗じつつ、徹のことをフォローするようにやんわりと否定する。

「いや、俺ズル休みした事ないわ!」

「あれ?涼太だっけ?」

「そうだよ!あいつ1年の時にだるいからとか言って2回くらい仮病使って休んでるからな」

「それ俺もやろうかな〜」

「んじゃ皆でズル休みすっか!」

「それあり!」

男2人の余りにも下らない、しかし本人達は楽しいと感じる、そんな会話を交わした後に、昨日と同じく別々の教室に入る。

毎度自分より早く登校している隣の席の人間を見て、魔白の身体がほんの少し緊張で固くなる。

「おはよう」

なんとなくだった。今日はなんとなく自分から先に挨拶する気になったのだが、挨拶は返ってこなかった。

(あれ?)

「おはよう」

小さい声で聞こえてなかったのだと思った魔白は、少しだけ声量を上げて挨拶をした。

「あぁ、魔白くん?おはよう」

まるで先程の魔白のように考え事でもしていたのか、少し遅れてカノンは挨拶を返した。

「...どうかしたの?」

なんの意味もない問いかけだったが、いつもと違う様子に魔白はそう問いたくなっていた。

「いや、一瞬だけ目がぼやけちゃってさ、寝不足かなぁ?」

「え?大丈夫?」

「多分大丈夫だから気にしないで」

「そっか...」

そして、ぎこちない会話が終わると同時にサキオが教室に入ってくる。

教壇に立ちホームルームを始めるかと思いきや、魔白の元へやってきた。

「魔白、ちょっといいか?」

「はい?」

「徹んちの近くに住んでる生徒、誰か知らんか?」

「徹の近く...ちょっと分かんないですね...」

「そっか」

「徹がどうかしたんですか?」

「いや、あいつ今日も休みでさ、プリントとか渡したい物があるんだけど明日から夏休みだろ?てことは渡すタイミングが無くなるんだよ」

サキオは魔白と徹の仲が良かったのを知っていたため、魔白から徹の家の近くに住む生徒のことを聞きに来たのだった。

「あー確かにそうですね」

「まぁ最悪俺が届ければいいんだけどな」

「あ、じゃあ僕が届けますよ!チャリで全然行ける距離なんで」

「え、いいのか?」

「いいっすよ!」

「すまん助かる!」

サキオはそう言うと、教壇に置いてきたファイルから纏められた書類を取り出し、それを魔白に渡した。

「じゃあこれ頼むわ、ありがとうな」

「頼まれました!」

魔白は真正面からの感謝に照れてか、敬礼のポーズで少し茶化したような返事をする。

魔白は"徹"と書かれた緑の付箋の付いた書類の束を、自分のファイルにしまい、鞄に入れた。

「魔白くんってサキオ先生と仲良いんだね?」

「え?」

サキオとの会話を終えると、今まで静かに魔白とサキオのやり取りを見ていたカノンが唐突に質問をする。

「違うの?」

「んーまぁ時々喋るけど仲良いって感じでは無いような...」

「ふーん、そうなんだ」

カノンは不思議そうにその青い瞳で魔白を見つめる。

そんな視線に耐えかねた魔白は、これからホームルームが始まることを見越して前を向く。

「ホームルーム始めるぞー!」

サキオの声を聞いたカノンは、魔白から目線を外し前を向いた。

カノンの視線から外れたことで、魔白は心の中でほっと安心の溜め息をついていた。

ぽへ

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