表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/42

神の悪戯

「ふぁ〜」

テストが終わり、もうすぐ夏休みが来るということで、魔白は少しばかり気が緩んでいた。

しかし、そんな気の緩みは一瞬にして吹き飛ぶことになるのだった。

今日はテストが終わった次の週の木曜日なのだが、本来なら何の変哲もない平日なのだが、朝食のお供として見ていた朝のニュースには、衝撃的な情報があった。

「東京都少摩市でまたも行方不明者が出ました、今回の行方不明者は、動物園蔵さん、男性、42歳です、行方不明となったのは約2週間前とのことです」

「はぁ!?」

名前どころ顔も見知った人間の名前が行方不明者としてニュースに出ていたために、テレビの前で驚嘆の声を上げる。

(嘘だ...なんで...てか、行方不明って...)

魔白が思い出したのは、黒いコートの人間とそれに襲われたであろう東平高校の女子生徒だった。

八千代千夜(やちよちや)、3週間程前に行方不明となった女子生徒は、結局見つかっていなかった。

高校に警察らしき人間が出入りしていたため、警察も動いているのは確実だが、それでも未だに捜索中という虚しい事実は、魔白に嫌な予感を与える。

(もしかして園蔵さんもあの黒コートに...)

妙に現実感の無い出来事だからか、魔白は冷静に分析をしていた。

しかし、魔白は分析する脳を無理やり止めた。

気づいてしまったのだ。よくよく考えたら、こんなことを警察でもないのに冷静に分析するなどおかしいのだから。

異能の力に関わった弊害なのか、知人の行方不明に対して、"分からない"という恐怖感が薄れていた。

そんな自分が"分からない"と、今度は自分自身に対して恐怖感を覚える魔白だった。

結局、何か光明を見つけるでもなく、むしろ自身の心に影が差すような感覚を味わったまま、登校することになった。


登校すればいつもの男の声、ではなかった。

「お、魔白じゃーん」

「あれ?達也じゃん、なんでこんな時間に登校してんの?」

魔白がよくつるむ3人の内の1人、達也と出会した。

少しチャラついたような雰囲気のその男は、少し遠い場所から自転車で通学しているのだが、普段は遅刻ギリギリで登校するため、登校のタイミングが魔白と被ることはないはずだった。

「いやーチャリがパンクしてたから今日は電車」

「あーそゆこと」

理由を聞いた魔白は納得し、教室に向かおうとするが、今度は達也が質問を繰り出す。

「あれ?徹は?お前と登校の時間被ってたよな?」

「あー今日まだあってないわ、普通に休みとかじゃね?」

「そゆことね、んじゃ教室行きますか」

「OK」

教室に向けて歩き出した2人は、テストが明けて結果が出たこともあり、当然テストの話題をするのだった。

「そういえばテストどうだった?」

「あー微妙だった、どれも平均点よりちょっと良いくらい、達也は?」

「古文以外は良い感じだったぜ!」

「お前勉強しなさそうな見た目なのに点取れるのずるいわー、え、でさ、古文何点?」

「40点」

「ハハハッ相変わらず国語系苦手だよな」

「昔っからなんか無理なんだよな〜」

「まぁまぁ他の教科が良いんだから落ち込むことないだろって」

「冷静に考えてなんで魔白に慰めらんなきゃいけねーんだ俺は?」

「あ、教室着いたわじゃーなー」

「ういー」

2人は教室が違うため、昼休憩以外は完全な別行動となる。

そうして教室に着いた魔白は、緊張気味に席に座る。

彼女が隣にいるから。

「おはよう」

「うん、おはよう」

魔白からすれば、朝の挨拶でさえ声を掛けられるのは嬉しいのだが、同時に不思議でもあった。

返しの挨拶はすれど、カノンが自発的に挨拶をするところを見たことがないからだ。

だからこそ席替えをしてからの数日間、特にこの朝の時間は、魔白からしてみれば妙に落ち着かない時間だった。

「そういえばなんだけどさ...」

落ち着きの無い人間とは、行動する事でそれを解消しようとする。

魔白は何かを話さなければという気持ちに突き動かされ、咄嗟に朝のニュースを思い出していた。

「黒魔さん朝のニュースって見た?」

「ニュース?」

「うん、園蔵さんが行方不明になったって」

「それ見たよ、残念だよね」

「え?うん...」

こんな話をする自分は如何なものかと思いつつ、カノンからの返事に魔白は微妙なズレを感じていた。

共通の知人が行方不明と分かり悲しむのは理解が出来る。しかし、行方不明ならまだ見つかる可能性があるにも関わらず、まるで全てを諦めたようなカノンのその態度に、魔白は奇妙さを覚えていた。

「席着けーホームルーム始めるぞー!」

朝に聞くいつもの声で、学校生活の始まりを告げられる。

嫌な不安は登校後も引き継がれ、そのまま今日1日の学校生活を送ることとなった。


授業が終わり、魔白は少摩動物公園に来ていた。

テスト前は来ていなかったため、1週間空けた状態での来園だった魔白は、いつもなら満面の笑みでアフリカゾウのサムを見ているところだが、今日は浮かない顔をしていた。

(サムは元気そうだな...)

いつものような元気があるとは言えない魔白をよそに、サムは耳をパタつかせながら元気そうに歩いていた。

いつもなら10分程眺める所を、なんだか気分が乗らないと1分程度見て帰ろうとした時に、動物園のスタッフを見かけた。

「あの、すいません!」

魔白は小走りでスタッフに駆け寄る。

「はい?どうかしました?」

「あの、今日園蔵さんってここに来てます?」

「あー...えっと...今日は来てないですね」

「そうですか...すいません引き留めちゃって」

「いえいえ」

もっと突っ込んだ事も聞けたのだが、相手の反応に含みがあるのを感じ、それ以上の追求はしなかった。

(やっぱりニュースの通りなんだ...)

ただの休みならあのような反応になるはずがない、スタッフの態度が、この事態を本当に起きてしまったことだと裏付けてしまったのだ。

結局、癒しを得るために動物園に来たはずが、その逆の結果となってしまい、悶々とした思いを抱えながら帰宅することとなった。

ふむ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ