席替え
キーンコーンカーンコーン
「はいテスト終わり!テスト用紙回収するから、後ろの席から前に回して」
金曜日、夏休み直前に行われる期末テストの最後の科目が終わり、学校中の緊張が弾けたように弛緩されていく。
そして、魔白とその友人とのお決まりの会話が始まる。
「魔白〜テストどうだった?」
「微妙かなー、今回テスト勉強に集中出来なくてさ...徹は?」
「親がうっさいから勉強はしたぜ?多分テストも良い感じ」
「はぁ〜バスケ部で頭良いとかズルだろお前?」
「じゃあ俺の通ってる塾来るか?」
「面倒いからパス〜」
「んだよ、お前がいたら塾も楽しく通えるんだけどな〜」
「何それ、楽しくないの?」
「塾通うのが楽しいわけねーだろ?親のご機嫌取りってやつ」
「徹の両親って昔からそうだけど、なんというか…教育熱心って奴だよね…」
「ハハッなんだよその言い方...そえば聞いてくれよー」
「ん?」
「俺結構モンスポハマっててさー、ランクもバリバリ上げてるんだけどさ、母さんにそんなゲームやってたら頭悪くなるって言われてさ…」
「うわぁまじか...」
「まじ酷くね?テストだって毎回学年で10位前後取ってんだから別にいいだろっての…」
「それ、俺がモンスポ薦めたから...」
「魔白は悪くねーんだから気にしなくていいっつの、なんならクソおもろいゲームに出会えて感謝まである」
「そっか...まぁこの僕の慧眼を持ってすればだね───」
「はいはいお黙り〜」
「なんだとー!?」
少し闇を感じさせる、しかしどこにでもありそうな会話を盗み聞きしている人間がいた。
(間部達くん...か...)
テスト終わりの喧騒の中で、なぜ盗み聞きの犯人がこの2人の会話をピックアップして聞いてきたかは、当の本人すらも分からず、自覚もしていないが、これは僥倖だと最後の計画を練るのだった。
「騒がしいぞー、お前ら座れー」
担任のサキオが、テスト終わりで騒がしい生徒達を着席するよう促す。
「さてホームルームをやる訳だが、その前にテスト終わりの席替えするぞー」
一度は静かになった魔白のクラスが、再び騒がしさを取り戻した。
「他のクラスは普通にホームルームやってんだから静かにしろ、席替え無しでもいいのか?」
目の前のおやつを没収されたくないと、クラスは再び静寂を取り戻す。
「はいじゃあ前と同じようにくじ引きな、四隅の席でジャンケンして、勝った所から順に引いてもらうから」
サキオはどこで買ったのか検討もつかない、神社に置いてあるような木製のくじ引きの箱を用意していた。
その箱の中には、このクラスの生徒数分の木の棒が入っているのだが、そこに数字が振られている。
1と書かれていた場合は1番右の席、2と書かれていた場合はその1つ後ろの席と言った具合に席順が決まる。
席順が決まり、三度騒がしくなる教室の中で魔白は驚きを隠せないでいた。
「あれ?隣って黒魔さん?」
「まさかの魔白くんなんだ、よろしく」
「...こちらこそ」
今までは2つ前の席にいた意中の相手が、この席替えによって自分の隣に来たのだ。
(こんな事ある!?)
魔白の胸中は、喜びと驚きとで渦を巻いていた。もうテストなんて無くてもいいと思う程に。
こうして、魔白の中で波乱の日々が始まろうとしていた。




