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驚愕の事実

白魔術が使えるようになった魔白は、昨日に引き続き東平丘陵公園で、白魔術の練習をしていた。

「ふぅ...」

(とりあえず昨日よりハトを出す速度は上がったかな)

現在午後3時、魔白は既に3時間もの練習を行っていた。驚くべきは、家でもこっそりと練習をしていたのである。

それだけ魔白のやる気は高かった。

(そういえば...)

魔白は昨日見たある光景を思い出していた。

「やっぱりすごいなこれ...」

ハリーの拳が刻まれた木を再度見に行き、自分でも試そうと思い立った。

そうして、見様見真似で正拳突きの構えを取る。

「オラァッ!!」

ハリーとは比べ物にならないくらい勢いの乗っていないその拳は、音とも言えないような鈍い音を立てる。

「痛ってぇ...」

ほんの数秒の空白を置いた後、魔白は手を上下に振り、痛がる素振りを見せる。

「流石にまだ無理かぁ...」

窪みがあるどころか、木にダメージなど全く無いというのを見て、元の練習に戻る魔白だった。


「もう夕方だ…」

気づけば辺りの自然に、夕焼けの色が重なっていた。

ポケットのスマホを取り出し、スリープモードを解除すると、5時半と書かれた画面が映し出された。

未知の領域に足を踏み入れた魔白は、持ち前の好奇心から数時間の集中力を発揮した。

(とりあえずハトは一瞬で出せるようになったから、今度は持続時間を伸ばすぞ〜!)

心の中で意気込み、次への活力を湧かせた所で、帰路に着く。

「あ、そうだ!」

家へと帰る途中、魔白は再度スマホを取り出し、ハリーにRINEを送ることにした。

<(今日結構練習して、白魔術を想像した形にする時間がかなり短縮出来ましたよ!)

意外にも、RINEを送った数分後には既読の文字が付いた。

(そうか、練習熱心なのはご苦労だが、再来週からテスト期間だろ?学生ならまずはそっちを優先するべきだ)>

<(はぁ〜い)

魔白は苦い顔をしながら、相槌のRINEを返し、スマホをポケットにしまった。

その時、辺りを支配する強烈な違和感が身体を襲った。

「何の用だよ」

確認もせずに、魔白は後方の悪魔に声を掛ける。

『この短期間で随分と魔術の世界に浸かったようだな』

振り返れば、予想通りの姿がそこにはあった。

「何の用かって聞いてるんだけど」

『急かすな、我が貴様と会うのは話がしたい時だけだ』

「話...俺も聞きたいことがあるんだけど」

『ほう?』

「お前は誰かに召喚されてここにいるんだよな?」

『あぁ』

「誰がお前を召喚したんだよ?」

『ローズ・クロウリーだ』

「ローズ...クロウリー?」

サタンはやけにあっさりと、魔白の質問に答えた。

そして、質問に答えたと思いきや、急に掌から黒い炎を空に向けて放つ。

その黒い炎の中心部には、1人の人間が映っていた。

「この人が...」

一瞬、信じかけた魔白だったが、サタンが嘘をついている可能性を思い出し、疑惑の眼差しを件の悪魔に向ける。

『別に疑ってくれてもいいが、否が応でも信じることになるかもな』

「でもこの人...」

『此奴はとある出来事によって寝たきりの状態らしい』

サタンは魔白の質問を先読みし、敢えてぼかした答えを与えた。

(寝たきりって事は、ハリー先生が追ってる人じゃないって事だけど...)

魔白は家の近くで偶然見かけた、黒い不審者を思い浮かべる。

『しかし貴様、前にも思ったが、思考がそのまま顔に出るな』

「う、うっさい!それで、もしその話が本当だとして、ローズって人とは別に、お前と一緒に行動してる人物がいるはずだろ?それと、さっきのとある出来事ってなんだよ!」

『直接教えるのはつまらんから、ヒントを教えてやろう』

「ヒント?」

『とある出来事というのは、喧嘩だ』

「いや、喧嘩って…」

あまりにも日常的なワードだったため、魔白は拍子抜けしてしまう。

『夫婦喧嘩というやつだ、だがそれによってローズの夫は...警察...とかいう場所に連行され、ローズが病院...だったか?で寝たきりとなった』

「DVってこと?」

魔白の質問には答えず、サタンはヒントを出し続ける。

『そして、我と共に行動している人物はその両親の娘だ、母親を治すために黒魔術に手を染めた健気な奴でな、ちなみに貴様もよく知っているはずだ』

「警察、病院、娘、よく知ってる…」

魔白は過去の記憶を洗い出し、数分間考えた末に、確信と言えるほどの答えに辿り着いた。否、辿り着いてしまった。

「そんなわけない...」

俯きながら考えていた魔白は、改めてサタンの方へと顔を向ける。

そんな魔白を嘲笑うような顔で、先程と同じ黒炎によるビジョンに、見知った顔を映し出していた。

「黒魔さん...嘘だ、こんなの...」

『その狼狽し、歪みきった顔、実に人間らしい、その顔が見たかったぞ』

「いくら悪魔とはいえ、言って良いことと悪いことがあんだろ!」

魔白はどうしてもこの現実が受け入れられず、サタンに八つ当たりをする。

『まぁ、魔術を使った所を見た事がない貴様からすると、証拠不十分と言えなくもない』

「っそうだ!証拠不十分だ!」

魔白は自分自身でこの答えに辿り着いたという自己嫌悪から逃げるため、それを否定してくれる材料にしがみつく。

『だがそれは貴様自身で導き出した答えだろう?そうかもしれないと、否定しきれない自分がいるんじゃないのか?』

「黙れ...」

『何故そこまで頑なに否定する?意中の相手だからか?本当に分かりやすいやつだ』

「黙れ!!」

『意中の相手が人殺しじゃ不満か?』

「お前...いい加減にしろよ!」

目は血走り、拳を固く握った姿へと魔白は変貌していた。

あまりの怒りに魔白は脳内で、サタンを殴り飛ばすイメージをしていた。

そのイメージが白魔術による、身体強化という部分で形となっていた。

((いいぞ、そのまま来い、剥き出しの怒りほど間近で見たいものは無い))

魔白はサタンに向かって一直線に駆け出し、昼間より少し速い腕の振りで、サタンの腹に拳を喰らわせた。

閑静な住宅地に、鈍い炸裂音が響く。

しかし、サタンは何事も無かったかのように、怪しい瞳で至近距離の魔白を嘲笑う。

『ひとつ聞くが、黒魔術に手を染める人間とは、一体どんな人間だろうな?』

「はぁ...はぁ...」

不慣れな白魔術の使い方をした影響で、魔白の身体は一瞬にして限界を迎えていた。

産まれたての子鹿のように手足が震え、今にも倒れそうな人間に、質問を答える気力などあるはずも無かった。

数秒待つも返答はなく、サタンは痺れを切らし、口を開く。

『フン、魔術とはこう使うものだ』

サタンはそう言うと、掌を魔白の腹部に押し当てる。

直後、掌から黒のオーラを放ち、そのオーラを満身創痍の魔白にぶつけた。

抵抗する余裕もなく、くの字の状態で後方10m程空中を舞い、その勢いで地面に着いた後も数m転がる魔白の姿は、最早子供に投げ飛ばされる石のようだった。

一撃にして、魔白の腹部にある内臓はボロボロになっていた。口から血が漏れ、意識は完全に飛んでいた。

『さて、もう一度お前の絶望する顔が見たくなったが、このままだと死ぬのも時間の問題だ』

((ガイアに小言を言われそうではあるが、魔王の権限を使ってやろう))

そう言うと、サタンは指パッチンをし、何かの魔術を行使した。


白魔術の練習を終えた魔白は、ハリーとRINEのやり取りをしながら家へ向かっていた。

すると、辺りを支配する強烈な違和感が身体を襲った。

「何の用だよ」

確認もせずに、魔白は後方の悪魔に声を掛ける。

『今度は己で真実を知るがいい』

魔白が振り返った時には、サタンの姿はもう無かった。

「なんだあいつ?」

サタンのあまりにも不可解な行動に、理解が追いつかない魔白だったが、考えるだけ無駄だと思い、家へと帰ることにした。


なんか文章が長くなった。

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