表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/42

虚ろ

金曜日の夜、ハリーに撃ち込まれた封印の魔術を少しずつ解除する日課を終え、カノンは独り考えていた。

(あの男、私の知らない情報をかなり持ってる...色々知るなら彼と話すのが手っ取り早いけど...)

ハリーが敵であるという事実と、プライドが行動を許さなかった。

『肥大した自我こそが自己を制限する、か…』

二重のふてぶてしい声は、カノンの隣から聞こえた。

「私の部屋に入ってくるとかどういうつもり?そこまで気を許したつもりは無いんだけど?」

『知るか、暇だから話をしに来ただけだ、他意はないぞ?』

「あっそ、別に話すことなんて...」

サタンを即刻突き放すつもりだったカノンだが、ハリーが放った、サタンなら全て知っているというセリフを思い出した。

「そういえば、あんたってどこまで知ってるの?」

『どこまでとは?』

「分かってるくせに、イライラさせないで」

『フンッ、我を脅しの道具に利用した罰だ、そもそも我が人間を守るわけがなかろう、面白いから生かすだけだ』

「チッ!会話は盗み聞きするし、部屋に勝手に入るし」

『はぁ...そう不機嫌になるな』

カノンの愚痴をこれ以上聞く気にならないと、サタンは自分の口から話を始めた。

『我は全てを知っている、貴様の母親のこともな』

「じゃあ...お母さんは本当に黒魔術を?」

途端にカノンの目は怯え悲しむ子犬のような目に変わる。

『そもそも我を呼んだのは貴様の母親だぞ?』

「...えっ...は?」

もし黒魔術を使っていたとして、何故こいつと母親に関わりがあるのかと、カノンの脳は既に混迷を極めていた。

「じゃあ、あんたは私とお母さんの両方と契約してるってこと?」

『違うな、貴様とは契約していない』

「いや、確かに私はあんたを召喚したんだから契約してるはずじゃ...」

『悪魔総帥といえど二重の契約は不可能だ、貴様は母親の魔力を借りているに過ぎない』

「...」

カノンの顔が、全てを打ち砕かれたような虚ろな表情へと変わる。

「私が頑張って召喚魔術を覚えたのはなんだったの?あんたはなんで私の前に現れたの?」

『貴様は母が持っていた魔導書を使ったな?』

「多分そう...だけど」

『同じ魔導書から現れる悪魔は1つだけ、別の者と契約済みの我とは契約が出来ない、ただ貴様の母親からもしもの時は娘を頼むと言われていてな、だからここにいる』

「じゃあ、黒魔術の代償はどうなるの!?使用すればするほど不幸になるって、お母さんがこれ以上不幸になるなんてッ───」

『不幸?あぁ、人間が黒魔術を使うとそうなると言っていたな』

「あんた、分かってて大事なこと言わなかったんでしょ!?いい加減にしてよ!」

『落ち着きがないな、悪魔は黒魔術による副作用など存在しない、人間のことなどは知らん』

その時カノンの頭の中で点と点が線で結ばれた。

「あ、あぁ、黒魔術を使えば使うほど不幸になるなら、今までの事は全部代償のせい?それも私のために2人が犠牲に...」

弾かれるようにスマホを開き、アルビノについて調べた。今までは母親に、見た目が他の人と異なってしまう病気とだけ言われてきたが、ここまで来れば明らかに違うと分かってしまう。

「眼皮膚白皮症...」

国の指定難病であること、皮膚や虹彩の色が他人と異なること、視覚的な障害を伴うこと、場合によっては合併症を伴うこと、等々、自分の知識外の情報が多く乗っていた。

「私って今まで何やってたっけ?」

前提が覆ったのだ。今までは周りが自分達を苦しめていると思っていたものが、母親の優しから悲劇が生まれるという、自業自得に近いものだとカノンは悟ってしまった。

分かれば分かるほど、謎が謎を呼んでしまう。ついには脳がオーバーヒートを起こしてしまった。

カノンは人形のように虚ろな目をし、全身の力が抜けていた。

『これからどうする?我はどんな選択でも構わんぞ?』

「今は何も考えたくない...」

そう言うなり、カノンは布団に入ってしまった。


時間を置いて、カノンが寝息を立て始めたのを確認したサタンは、魔導書を手に取る。

『これが魔導書か、久しいな』

サタンはそう言うと、魔導書を片手にいつもの如く虚空へと消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ