雨のち晴れ?II
5時になるとハリーと魔白は再び合流し、東平駅の近くにあるガスポというファミレスに入る。
「いらっしゃいませー何名様でしょうか?」
「2人で」
「2名様ですねーではこちらへどうぞー」
どう考えてもおかしい組み合わせだった。ハリーはイギリス人で、魔白は日本人と見た目が違いすぎる上に、年の離れ方も親子というほど離れている訳ではなく、兄弟というほど近くもない。
しかし、そんな違和感など知った事ないと言わんばかりに、ハリーは堂々と店員の後をついていく。
「君は学生だ、この場は奢るから何か頼みたかったら遠慮なく頼んでくれ」
「いや、流石に大丈夫です」
「じゃあドリンクバーでも頼もうか」
ハリーは店員を呼ぶと、ドリンクバーを頼んだ。他の注文は無いため、話の途中で店員が来るということも無い。
「さて本題だ」
「はい...」
「誤魔化しても仕方がないな…済まなかった」
ハリーはそう言うなり、机に手を付け、頭を下げた。
「ってことは...」
「サタンの言う通り、君を利用していた」
「薄々気づいてました、サタンの言葉が嘘だったらよかったのにとは思ってましたけど」
「...」
これほどのお膳立てがあれば、護符とハリーが繋がるのは明白だった。しかし、サタンの言葉が嘘である可能性も捨てきれなかったため、真相が知れた魔白は少しほっとする。
「まずは最初の質問に答えよう」
「ハリー先生とサタンの関係について...ですね?」
「あぁ...奴と俺は敵対関係にある、しかしそれ以上でもそれ以下でもない、問題は契約者の方だ」
「契約者?」
「悪魔がいるということは、必ず悪魔を召喚した契約者がいることになるんだが、俺はその契約者を追っている」
「なるほど...それで昨日はサタンの所に?」
「そうだ、昨日に関しては、君に付与した護符が黒魔術を感知し、それを追っていたら奴に出会ったんだ、だが本来なら微弱な黒魔術しかキャッチしないはずなんだが...奴は全てを見通した上で、わざと威力の弱い魔術を使ったんだろうな」
「なんでサタンはそんなことを?」
「流石に悪魔の考えることは分からないな、奴はただ単に邪魔な存在なんだが…如何せん強すぎるのが問題だ」
「なら、契約者の方は何か知ってますか?」
「...いや...正体は分からない...分かっているのは、その契約者が儀式を行うために殺人を行っているという事だ」
ニュースやドラマではよく聞く殺人という単語も、人伝で聞くとどうにも現実味を帯びなかった。
「殺人...物騒ですね…僕を利用したのは、その人の正体を探るためなんですか?」
「あぁ...まぁ...そんなところかな」
途端にハリーの返答に対する歯切れが悪くなる。こうなると流石の魔白も何かを隠してると勘繰ってしまう。しかし、無闇矢鱈に聞いて話さなくなるのは逆効果であるため、聞きたい気持ちをグッと抑える。
「それで、怒らないのでいつから僕を利用していたか教えて下さい」
「先週の水曜日だ」
「水曜日って...!」
自宅の前で黒いローブの人間が、東平高校の生徒を襲ったであろう日だった。
「丁度契約者の近くに君がいたから、こっそり白魔術を付与して奴の出方を見ていたんだ、もし君の存在に気づいた契約者が、儀式そっちのけで襲い掛かるようなら全力で守るつもりだったよ」
「守るつもりって言われても...まぁ過ぎた事なんでいいですけど...」
「本当に済まなかった」
「それで...」
「ん?どうした?」
言いづらかったのか、少し間を置いてから魔白がある提案をする。
「僕に白魔術を教えてくれませんか?」
「ブフッ」
今この状況で1番ありえないであろう質問が飛び出したのだ。ハリーは驚きで、口に含んでいたアイスコーヒーを吹き出してしまう。
「馬鹿なこと言うな!君をこれ以上付き合わせるつもりは無い」
「ハリー先生が僕を魔術の世界に引き摺りこんだんです!責任取って下さい!」
「それとこれとは話が違う!いいか?遊びじゃないんだ!下手に首を突っ込めば死ぬかもしれないんだぞ!?」
「最後までとは言いません!契約者が分かったら、後はハリー先生に任せます!」
「いや...契約者は...」
ハリーは契約者、というより契約者擬きの正体を知っていたが、自分のクラスメイトが殺人鬼であると伝えられるほど、鬼のような性格をしていなかった。
「知らないんですよね?人手は多い方がいいと思います!後方支援で構わないので手伝わせて下さい!」
どれだけ言っても引く気のない真っ直ぐな目に、これ以上は無駄だと察したハリーは観念することにした。
「...分かった、ただし必ず俺の意見に従って貰う、流石に目の前で死なれるのは気分が悪い」
「いいんですか!?」
「はぁ...まぁ、魔白君を無理矢理付き合わせた事実は変わらない...それで罪滅ぼしが出来るなら構わない」
(何も知らない状態で利用するつもりだったが…)
ハリーは完全に若い者の好奇心を舐めていた。サタンから攻撃をされたという話を聞いて、この一件から手を引くと考えていたが、180度違う結果へと辿り着いたのだ。
「よしっ!」
魔白は小さくガッツポーズをする。
「さっきも言ったがこれは命に関わることだ、軽い気持ちでこの世界に来ちゃいけない」
「分かってますって!」
「...はぁ、明日は用事あるか?」
「特には無いです」
「じゃあ、明日の昼2時に丘陵公園の看板の所で待っててくれないか?身体を動かすからジャージで来てくれ」
「おぉ早速...了解です!」
浮かれ気味の魔白を見て、心配になってしまうハリーであった。
「とりあえず今日はこんな所でいいだろう、済まないがここから歩いて帰れるか?」
「大丈夫ですけど、先生は?」
「俺はもう少し残る、考え事をしたいんだ」
「分かりました、じゃあ僕はこれで」
「あぁすまん、ひとつ言い忘れていた」
「なんですか?」
「サタンはまた君の夢に出てくるかもしれない」
「あぁ...そんな気がします...」
サタンに会い、話したことのある魔白はハリーの言葉に対して疑う気など起きなかった。
「夢に干渉された場合は俺の白魔術でもどうにもならない、しかし向こうも夢の中では言葉を発する以外は何もできないはずだ」
「そうなんですね、良かった...」
「とはいえ、悪魔の言葉に魅入って心を許せば、悪魔の支配を受けることになる、そうなれば傀儡も同然だ」
「傀儡...」
安心した魔白に非情な現実を突きつける。
「そうだ、だから強い精神を持つんだ、悪魔には耳を貸さないという精神があれば大丈夫」
「分かり...ました」
精神の話となるとピンと来ないのか、魔白は分かったと口では言いつつも、分からないという風な顔をしていた。
「じゃあもう大丈夫だ、付き合わせて悪かったな」
「いえ、いずれは話をしたかったんで!じゃあこれで!」
「あぁ」
(サタン...目的は分からんが、彼をを表舞台に上がるように仕向けたのか...でも何のために?それに今日の事も気になる...)
1人になったハリーは、今日の"ある出来事"について考え出すのだった。
ふぁふぁふぁのふぁー




