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奇跡的な状況により生まれた魔白とカノンの日直は、5日前に終わりを告げた。

(もう水曜日か...)

学校へと足を運びながら、先週のような何もしなくてもカノンが話しかけてくる日々は終わり、虚しさを感じていた。

「よっす〜!」

そう言って肩に手を置いてくるお馴染みの人物に、なんとなく安心感を得ていた。

「徹!おっす〜」

「そういえば聞いてくれよ!」

「おん?」

「昨日モンスポで最強キャラのバフォメットをゲットしちゃったんだよ!」

「あーあれなー、強いけど見た目が個人的に好きじゃないんだよなー」

「えーかっこよくねー?あの色んな動物が合体しましたみたいな見た目とかさー」

「なんか不気味じゃない?しかもあのキャラ目力すげーんだよな、ちょっと怖いもん」

「それは分かる」

モンスポのバフォメットというキャラは、黒山羊の頭と下半身、人間の上半身に、蝙蝠のような翼など、色々な動物を組み合わせたような見た目だ。

「でも強さは折り紙付きってもんだからさ、今度マルチする時に強さを教えてしんぜよう」

「徹先生のレクチャー嬉しー」

「棒読みじゃんか...」

そうして流行りのゲームの話をしながら教室に着き、今日も虚しさを感じる学校生活を送るのだった。


「んじゃ帰りのホームールーム終わりー」

先週ならこの後にワンアクションがあるのだが、今はもうない。

そのまま帰ろうとしていた魔白だったが、唐突にあることを思い出す。

(占い...)

カノンに無理なく出会える理由が浮かび、それが一筋の望みとなり、魔白の足を動かした。


(着いた!)

以前カノンの誘いで来たアオンモールに再び足を運ぶ。

今度は迷うことなく、2階の過去屋書店に入る。

(黒魔さんいた!...他にお客さんが来てる...)

先客がいたようで、占ってもらうには時間を要すると判断し、立ち読みでもして時間を潰そうと考えた魔白だったが…

(あれ?もしかして園蔵さん?)

見覚えのある後ろ姿を発見してしまい、前回同様占いの内容に聞き耳を立てる。

「..."The tower"塔の正位置...積み上げたものが崩れる...今後の備えが...」

「ただでさえ夫婦仲が...借金だって...解決策は...」

「もう崩れる事が...借金を返せれば或いは…」

魔白は聞き取れたワードを理解しようとしたが、脳がそれを拒む。言葉の意味は分かるが、感情が理解という機能にストッパーを掛けてしまう。

(どういう...こと?借金...夫婦仲...?)

考えている内に園蔵が占い屋を後にしていた。

声をかけようとした魔白だったが、いつものように陽気な園蔵の顔は無く、怒りとやるせなさに満ち満ちた顔を見て、足を止めてしまった。

(園蔵さんのあんな顔初めて見た...)

本来ならカノンに会うためにアオンモールまで足を運んだ訳だが、会う以上のするべき事が出来てしまった。

「黒魔さん!」

「魔白君、どうしたの?そんな慌てた顔で...」

カノンはまるで予期していたかのように、落ち着き払った態度で魔白の来客を歓迎する。

「園蔵さんに借金とか夫婦仲がってどういう事なの!?」

「ねぇ、私前に注意しなかったっけ?」

質問に対して全く答えになっていない質問が帰ってくる。

「え?」

熱が入った魔白を宥めるように、しかし、同時に銃口を向けるような圧迫感を与えながらカノンは話し出す。

「プライバシーがあるから他人の占いを見聞きしちゃいけないって」

「それは...」

「私が言いたいのは見聞きすること自体を非難したいって訳じゃなくてさ、プライベートに土足で上がろうとするのが良くないって言ってるの」

「そんなつもりは」

「そんなつもりは無い?じゃあこれで1つ賢くなったね」

本心なのか嫌味なのかの判断がつかないほど、屈託のない笑顔を見せられ、魔白はついに口を開けられなくなる。

「それで何しにここに来たの?」

「あ、いや、占ってもらおうかなって思ってたけど...今日はいいや…じゃあ」

「言い忘れてたけど、いつも火曜日と水曜日にやってるから気軽に来てね」

「うん、ありがと...」

結局、カノンに会うという最初の目的は果たせたが、頭に靄を抱えた状態で帰宅することになった。


「まぁ、あの空気のまま占ってとは言えないよね」

(演技とはいえちょっと言い過ぎたかな?)

背を向け帰路に着くであろう小柄な少年を見ながら、カノンは反省していた。

しかし、何が不測の事態を呼ぶか分からない彼女にとっては、ルールを逸脱するものには釘をさしておかないといけないのだ...。

タロットカードの絵柄は人によって解釈が若干異なってくるらしいので、ネタにするのが中々難しい...。

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