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何気ない土曜日

「あんた今日どっか行くの?」

「小川崎のオガワサキ水族館行きたいんだよねー」

「相変わらず好きねー」

「お父さんもついて行こうかなー」

「一人で行くから同行とかしなくていいですー!」

魔白の中で激動とも呼べる1週間が終わった。そして迎えた何の変哲もない土曜日に、家族と他愛の無い会話をしていた。

「んじゃ行ってくるねー」

「行ってらっしゃい」


「大体1時間くらいかぁ」

魔白はスマホで目的地までの時間を調べ、駅へと向かった。

東平駅から京玉線に乗り、10分程して乗り換えのために倍分河原駅で降りる。

倍分河原駅で降りたら、JR南式線に乗り、50分程電車に揺られると、小川崎に着くという予定だった。

新しくオープンした淡水魚特化の水族館に行けるというワクワク感は、魔白の足を軽やかに動かしていた。

電車に乗ってスマホゲームのモンスポをしていた時に、魔白はふと昨日の事を思い出し、RINEの画面を開く。

RINEの画面を開くなり、とある人物にメッセージを送ろうとした。

<(昨日は気まずい空気にさせちゃってごめん、相談でも愚痴でも話したいことあったら聞くから)

(何だこの文章?キモすぎる…)

カノンとのやり取りで、気の利いたセリフを言えなかったことを少しばかり後悔していた魔白は、RINEで元気づけようとしていた。

しかし、どんなメッセージを送ればいいのかと葛藤した後、先程のメッセージを消して、2人で言ったあの場所に誘おうと考えた。

「...河原、倍分河原に停ります」

<(また動物園に)

「ドアが開きます」

(あ、やば!)

RINEに夢中で危うく乗り過ごす所だったが、なんとか倍分河原駅で降り、南式線への乗り換えを行った。

再びRINEの画面に目をやる魔白だったが、その時あることに気づいた。

「あ...」

(間違えてメッセージ送信しちゃってる!?)

魔白は降車する際に、焦って文の途中で送信ボタンを押してしまったため、慌ててメッセージの送信取消を行う。

結局何もかも面倒になり、全てを放り投げ電車に揺られることにした。


(着いた〜!)

乗り換えてから50分程して、小川崎駅に到着した。

(確か、このビルの1番上だよね)

魔白は小川崎駅のすぐ側にある大きなビルに入り、エスカレーターで最上階を目指す。

(おぉ〜オガワサキ水族館の張り紙が張ってある!)

歓迎用のポスターに見蕩れている内に最上階へと着く。

「すいませーん、高校生1人で」

「学生証はお持ちでしょうか?」

「はい、お願いします」

「ありがとうございます、では1700円になります」

「お願いします」

「2000円お預かり致します、ではこちら300円のお釣りになります、入口は向こう側になります」

「ありがとうございます」


お決まりのやり取りをした後、入口に向かいチケットの確認を済ませ、いよいよ中へと入る。

水族館の中に入ると、オガワサキ水族館へようこそという看板が客を迎えていた。

そして、雰囲気作りのためか、フロア内が少し暗くなっており、鳥の鳴き声や、風、水の音など自然の心地よい音が流れていた。

最初に魔白を出迎えてくれたのは、少摩川に生息する魚達だった。

(ヤマメとウグイ!美しい...こっちにはコイとフナ!ウナギまでおる!)

魔白は早速、魚達に目を輝かせていた。

日本の清流に生息する魚達の美しさを再確認した所で、次のエリアへと向かう。

次に待ち構えていたのは、オセアニアやアジアに存在する魚達だった。

ハイギョやスッポンモドキなど、個性的な動物達がいる中で、魔白の目を一際輝かせる魚がいた。

(うぉーーー!アロワナじゃないかぁ〜!ん?過背金龍?紫紅金龍?こんな呼び名が?なんてカッコイイ呼び名なんだ!?)

アロワナは種類によって様々な呼び方があるのだが、その中の1つである金龍という響きは、魔白の心をいたく擽るものだった。

そして魔白は、さらに面白いものを見つけたと言わんばかりに、小走りでその動物に近づく。

そこに展示されていたのは、ワライカワセミという鳥だった。

(ワライカワセミ、初めて見たかも、なんかモフモフしてて可愛い...ん?6時からフクロモモンガと交代...これは!?)

時間によって展示される動物が変わるというシステムに、またもや目を輝かせ、再入館の決意をした所で、今度はアフリカのエリアに向かった。

アフリカの魚にはあまり馴染みが無かったため、睨みつけるように魚本体と魚の名前と写真が載っているパネルを、交互に見ていた。

(プロトプテルス...?テトラオドン...?なんて覚えづらい名前なんだ...世界は広い...)

世界の広さを改めて確認した所で、またも魚以外の動物を見かけた。それも部屋の中を複数の黒い何かが飛翔しているのだ。

(エジプトルーセットオオコウモリ...)

その正体はなんとコウモリだった。暗くなっている部屋の中で餌である果物を頬張るその姿は、愛くるしいの一言だった。魔白は数分コウモリの前に張り付いた後、個性的なアフリカの魚達に別れを告げ、エスカレーターで下に降りた。

次に待ち構えていたのは、南アメリカエリアだった。

まず出迎えるのは、ピラニア以上に恐れられる肉食魚のブルーカンディルだった。

そして、少し先を進むとアルマジロやグリーンイグアナ、マーモセットなどの、およそ水族館らしからぬ動物達が展示されていた。

(アルマジロとは珍しい...ちょこちょこ歩いてて可愛い...)

他にも南米の猛毒ガエル達や、アフリカエリアの魚達に負けず劣らずの、色とりどりで個性的な魚達を堪能し、次のエリアへと向かった。

道中にある大きなスクリーンで、バーチャルのイルカと戯れた後、ラボエリアに足を踏み入れる。

まず目を引くのは、大量のピラニアだった。

獰猛そうな顔つきとは裏腹に、実は臆病というそのギャップに、魔白は愛くるしさを感じていた。

さらにその奥には、ただの1ミリも動かずに、水槽の底に佇むデンキウナギの姿があった。

「ん?」

魔白は不思議なものに出会ったと言わんばかりの目で、ある魚を見ていた。

(ブラインドケーブ・カラシン...聞いたことない名前だけど、綺麗だな…)

メラニン色素の欠如により、真っ白な体をしているその魚に、魔白は一目惚れしていた。

コウモリの時よりも長く張り付き、やっと満足した魔白は最後のエリアへと向かった。

テラエリア、このエリアこそが、この水族館の最大の見せ場とも言える場所で、アマゾンの熱帯雨林を模したそのエリアは、長めの通路をガラスで覆い、歩きながらアマゾンの動物達を見れるようになっていた。

ショウジョウトキやフタユビナマケモノなどの陸生動物もいれば、シルバーアロワナやピラルクなどの、アマゾンならではの巨大な水生動物もいる興味の尽きない空間となっている。

(サルミヌス...?ポタモトリゴン...?相変わらず魚の方は知らん名前が多い...)

こうして通路を抜けた魔白は、一旦入口まで戻り、もう一周した後に、カワサキ水族館を出た。

水族館を出るなり、魔白はスマホで時間を確認する。

(2時間は暇だな)

スマホには4時と表記されていた。魔白は6時にまた再入館するつもりなので、小川崎駅周辺で2時間程時間を潰すことにした。

これただのカワサキ水族館ロケじゃん

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