不穏
魔白がカノンと日直をして2日が経ち、今日は折り返しの日だ。
「今日は雨降ってるなー...傘持って歩くのってなんか嫌いなんだよなー」
いつも通り7時に起きてから雨が地面を叩く音に気づく。
学校に行くことを考えると、とても鬱陶しい天気だった。魔白は、2階の自分の部屋から1階のダイニングに行き、テレビをつける。
「では朝のニュースです───」
「いただきまーす」
魔白が起きる頃には父と母どちらとも会社に行ってしまうため、平日は適当にテレビを見ながら朝御飯を食べる。
「ごちそうさま」
魔白家で出てくる朝御飯は毎回10分以内には食べ終わるため、登校するまでに30分程度の時間が空く。空いた時間は、いつもニュースを見たりスマホをいじって適当に時間を潰す。
(そういえば今日は徹達とモンスポやるんだった、今の内にランク上げしとくか)
最近新しく出たアプリのモンスタースポーツ、略してモンスポだ。ソーシャルゲームの利点である、暇潰しに最適という点をしっかり活用していく。
「あ、やべもうこんな時間か」
そうこうしている内に登校する時間になる。
「いってきまーす」
自分以外誰もいないのに言葉を投げかけるのは行儀の良さの表れか、それとも無知がゆえなのかは魔白には知る由もない。
雨が降る中、いつも通り8時に東平高校に着く。
「おーっす魔白ー!」
「よっすー」
「魔白、今日の放課後達也と涼太呼んでモンスポすっから忘れて帰んなよ?」
「わーってるっつの!てかそれ帰りのホームルームの後で言えばいいだろー、どんだけ楽しみにしてんだよw」
「確かにw」
放課後に遊ぶ約束を取り付け、2人は教室に入る。
「日直がんば〜」
「お前それ毎回言うつもりかよ…」
徹は相変わらずの煽り(エール)を飛ばしてくるが、魔白も慣れているので適当にいなし、お互いの席に着く。
「あれ、そういえば...」
「魔白はー...いたいた」
違和感に気づいたと同時に先生が声をかけてくる。
「すまん、今日は黒魔が家の用事で休みなんだけど伝え忘れてたな。」
「やっぱり休みなんですね」
「そそ、てわけでこれ当番日誌ね。」
「あ、ありがとうございます」
「今日は1人で日直やってもらうけど、何か特別な事がある訳じゃないからいつも通り頼むな?」
「了解です」
(黒魔さん休みなのか...家の用事ってなんだろう?まぁ考えてもしょうがないか)
「はいじゃあ朝のホームルーム始めるぞー」
クラス全体で見ればほんの少し違う朝だが、魔白にとって見れば大きく違う朝であった。
その頃、カノンは病院で入院している、とある患者に会っていた。
「お母さん...来たよ...」
銅色の髪に、茶色の瞳、端正な顔をした西洋出身の眠り姫がそこにはいた。
投げかけた言葉に返事は無い。目の前にいるのは"あの事件"によって脳にダメージを負い、植物状態となった彼女の母親だった。
「目は開いてる、息もしてる、時々身体だって動くのに...」
植物状態となった人間は脳の機能が一部停止し、話したり腕や脚を伸ばすといった、思考したり意識的な行動を取ることが不可能となる。
「おばあちゃん...お母さんはきっと大丈夫だから」
「え?そうだねぇお医者さんが今でも亡くならないのは奇跡的だって言ってたしねぇ」
植物状態になった人間は様々な要因により、6ヶ月程その状態が続くと死亡するのが殆どだが、稀にそれ以上の年月をかけて植物状態から治る場合がある。
「うん」
(3年も待たせちゃったけど、もうすぐだから)
悲しみは勿論あった。ただそれ以上に、まだ生きているという希望があった。しかし、その希望は彼女を暴走させるスイッチでもあった。
(今日は2人目...)
病院を出たカノンの目には、ほんの少しの涙と有り余る決意が籠っていた。
香ばしいねぇ〜カノンちゃん(*^^*)




