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リプレイスメント  作者: 紫雪
1/1

◇特別個人授業

──────視線を感じる




学校、家の中、就寝中、登下校中至る所で誰かからの、それは敵意とも似ているような棘の刺さる視線。


俺は気になって左右に目配せするがあるのは白い壁と木漏れ日が差し込む窓だけ。当然周囲には誰もいない。ある1人を除いて




「おい、多忙な私がお前の為にわざわざ個人授業を実施してやっているというのにキョロキョロなにをみてるんだ」


額に青筋を立てながら鋭い目付きを俺に向けるのは担任の女教師である藤原塔子ふじわら きょうこだ。


「いや、あの視線を感じるんですよ」


「死線?欲しいなら幾らでも与えてやるが?」


「おっと!思いがけない所でサディスト発揮させないで下さい。視線ですよ視線」


俺の発言に藤原先生は怪訝な表情を浮かべる。


「そうやっておかしな発言をしていればこの時間が終わると思っているなら大間違いだぞ」




けしてそう言うつもりじゃない。明らかにこれはおかしいと俺の第六感が告げていた。学校の中だけならまだしも家の中ですら感じるのだから勘違いでは無いことは確かなのだ。




「先生は感じないんですか?この熱い視線を」


「感じないな」


「歳とると第六感って鈍るらしいですね」


風が吹き俺の眼前にある机が真っ二つになる。おそらく俺にも「それ」が来ていたのだろうけど当然の如く自動制御機能が24時間発動しているから何も感じない。




「た、体罰、出るとこでますよ!?」真っ二つになった机を『元通り直す』


「喧嘩を売ってきたのはお前だろ」


「出るとこ出てない人がなんか言って───────」


再び戻した机が真っ二つになった。




「キットカットじゃないんだからポンポンポンポン真っ二つにするのやめましょう?ね?」


「その制御機能何とかならないのか?説教をしていると言うのに手応えも何も無いからやるせなくなってくる」


先生は面倒くさそうに腰まで届く綺麗な黒髪を靡かせる。っていうか説教で真っ二つにする魔法使うってなんなの?この人よくこの学園で教師やれてるな




「はぁ、私は忙しい。だから端的に言う。『人助け』をやめろ」


「教師にあるまじき発言」


「いや本来は私だって諸手を挙げて君を褒めたいよ。けれどさすがに限度があるんじゃないのか?」




限度───────。確かに俺は隙あらば学校で人助けというか虐められている生徒を助けている。でもそれは何も進んででは無くただ通り過ぎて知らん顔するのは心中的にも嫌なだけだ。1日3回虐め問題を解決していた。




「ってかここ虐め起きすぎじゃないですか?スラム街か何かですか?」冷静に考えて1日3回虐めに遭遇するってなんだよ荒れすぎだろ一応進学校だよなここ?




「なにも分かってないんだな」


先生はそういうとため息を付きながら黒板を向きチョークで何かを書いていく。


「まずここに君がいる」先生が『馬鹿』と書く。…馬鹿?


「そしてここにいじめっ子といじめられっ子だ」先生が俺の隣にいじめっ子といじめられっ子と書いた。




「そして馬鹿がいじめっ子を撃退する」「遂に馬鹿って言いましたね」


「そしていじめられっ子は救われる」


先生は俺のちゃちゃ入れを無視しどんどんと書き連ねていく。いじめっ子にバッテンを付ける




「一件落着ですね」


「ほんとにそう思うか?」


「どういう意味ですか?虐め問題は解決はした様にしか見えませんけど…」


「そうか……。……じゃあこのいじめっ子、どうなると思う?」


「どうなるって反省して虐めをしなくなるんじゃ」




「違う。そのいじめっ子は他のターゲットを狙い始める、または他のグループから虐められるかの二択だ」




おいおい本格的に終わりすぎだろこの学園。生活指導員はなにをやってるんだ?


「そして君がまた助ける。その繰り返しのループが起きてるわけだ分かるか?」


「いやでもそれって俺が悪いわけじゃないですよね?結局のところ虐めをする人物が悪いのであって俺はなにも悪くないどころか良い行いをしてるじゃないですか」




そう俺は言って先生の瞳を真っ直ぐに見つめる。間違ったことは何も言ってない。来るならこい。


そのサディストに火をつけて。




しかし先生は俺を黙って見つめるだけでやがて目線を外し窓の方へと歩き出す。外では部活動をしている生徒が騒がしく何かを言って体を動かしていた。




「黒野、物事には何事も限度って物がある。ちょうどいいっていう言葉もある。時には黙って見過ごすしかない時があるんだ」


「………俺はそうは思いませんけどね」




誰かが誰かを傷つけてそれを黙って見過ごす人間にはなるなと親から口酸っぱく言われていたのもあるのかもしれない。




「君には言葉も魔法も届かないんだなぁ」


諦めたかのようにため息混じりにそう言った先生は帰っていいぞとだけ告げて教室を出ていった。




美人女教師との特別個人授業。普通の男ならその言葉に少しだけ期待してしまうものだけれど現実はそんな事は1ミリもなかったのである

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