6話「二度目の交流、からの衝撃」
それから私たちは様々なことを話した。
たとえば趣味、たとえば好きなもの、そういった小さなことも今は話題となる。
お互いをそこまで知らないからこそ話題も豊富なのだ。
人生に大きくは関わらない小さなことだとしても、感じの良い人と喋っていれば楽しいものなのだ。
「アメイリアさん、今度はどこか街でも行ってみませんか?」
話が一段落したタイミングでルクセーはそんな提案を言葉にしては放ってきた。
「街?」
「はい。たまにはそういうのも良いかなーと思いまして」
「ええと……でも、良いのですか? 私に時間をかけすぎていませんか」
他にも候補者がいるなら私のことなんて気にしなくていいのに。
そんな夢をみせるようなことをこまめにしなくていいのに。
――そんな風に思ってしまうのは、私がひねくれているから?
「ええ、もちろん。時間はたっぷりかけますよ~」
「でも! 私にそういうことをするくらいなら、他の方に時間を使う方が良いと思います!」
私にばかり気を遣わないでほしい。
……そう思っていたのだが。
「初めて気になっている人に、ですから」
「……へ?」
ルクセーの口から出たのはまさかの言葉で。
「あ、変でしたかね。もしそうだったらすみません。でも、僕、貴女のこと好きなんですよ」
すぐには何を言われているのか理解できなかった。
心も体も硬直してしまって。
汗だけが肌を静かに這って落ちてゆく。
「それは、あの、気に入っていただけている――ということでしょうか」
すると彼は言う。
「はい! そんな感じですね!」
その表情は明るかった。
突き抜けるように晴れた空のような。
そんな笑みだった。
「え……ちょ、う、嘘……ですよね……」
「嘘じゃないですよ~」
「ほ、本気なのですか……?」
「はい! もちろん! あ、言うのが遅くなったのですけど、他の人はもう一旦止めました」
無垢な笑みを向けられても、何が何だか分からない。
まだ脳が追いつけていない。
だから言葉を積み重ねられても理解がまったくもって追いつかないのだ。
まるで馬鹿になったかのよう。
告げられた言葉を一つずつ着実に理解してゆく、そんな簡単なことさえ今は満足にできない。
「え……そん、な、どうして……?」
「凄く驚いていますね~」
「は、はい、驚きです。だって、だってですよ? そんなことって……私なんてこんな普通の女でしかないのに……」
一応思っていることを言ってみるのだけれど。
「そういうところが好きです!」
ルクセーは迷いなく返してきた。
「……え、ええええ!?」
駆け抜ける衝撃。
まるで稲妻に打たれたかのように。
見える世界が変わってゆく。