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プロローグ


鬱蒼とした夜のラステカ王国は王都、月明かりすら届かぬ狭い路地裏を、二人の男が駆けていた。


「ルガルド! この先は行き止まりだ、一気に仕留めるぞ!」


図太い声が路地裏に響き渡る。

声の主は黒一色のローブに身を包み、右手にロングソードを持った大男。身長は裕に2メートルを超えており、顔には幾つもの傷跡があった。


「了解。低級だからって油断するなよロイド」


「ふっ、ガキは自分の心配でもしてろ」


余裕綽々といった表情でそう答えるロイド。

その言葉を聞き流し、ルガルドは目の前の獲物へと意識を向ける。


二人から逃げているのは、人間の子供ほどの背丈をした小人のような生き物だった。


 しかし、それは見た目だけであって実際は違う。

そいつらは人間や動物の死骸に取り付き生き長らえている寄生虫のような存在だ。

だが決して侮ることなどできない。


取り付いた死体の血肉を吸収して成長を続け、最終的には宿主である動物を食い殺してしまうほどにまで成長する化け物。

そう、悪魔だ。


路地を抜け、悪魔との距離がほんの数メートルに近づいたところで、ロイドが剣を正眼に構える。


「《ホーリー・クロス》ッ!!」


一線を放つと同時、眩い光が溢れ出す。

聖なる十字架を描くように振り下ろされた刃からは十字型の光が凄まじい速度で伸びていき、

悪魔に突き刺さった瞬間、真っ赤な閃光とともに爆発を起こした。


爆風によって周囲の建物が揺らぎ、砂埃が舞い上がる。


「ごほっ……ごほっくっ、おい! 殺す気か!」


少し焦げた服の端を軽く叩きながら、ルガルドが詰め寄る。


「うっせーな、ハンターならそれくらい避けれて当たり前なんだよ」


ルガルドを軽く一瞥し、少し鬱陶しそうなロイド。

だが、その顔には勝利を確信した笑みを浮かべていた。



「……やったか?」


砂塵が舞う中、ロイドの声がこだまする。


すこしして煙が晴れると、そこには全身を切り刻まれ浅黒い血を流しながらも未だ立っている悪魔の姿があった。

その姿を見たロイドの顔から笑顔が消える。


「くそっ!低級のくせに今のを耐えるのかよ!?」


「逃げる途中で数人殺してたからな……」


「ちぃっ! 面倒な相手だぜ全く!」


舌打ちをしながらロイドが再び攻撃に移る。

今度は先程よりも早い速度で

上段からの一線、その反動で体をひねりながら、横凪。


だが、悪魔はその攻撃を難なく避けると、

鋭い爪を振りかざし、ロイドに向かって襲い掛かかる。


それを間一髪で回避するが、頬には浅い傷ができ鮮血が流れ出ていた。


「うおっ!危ねぇ……おいルガルド!気をつけろよ!」


「わかってる!」


入れ違うように、ルガルドが素早く前に出る。


狙う場所は一つしかない。

悪魔にとって最も大事な場所であり急所でもある頭だ。そこさえ潰せば後は簡単に倒せる。


ルガルドが大きく跳躍しながら剣を振るう。


「うぉぉおお!!」


弧を描くように全力で剣を引き抜いた。


「ウギャアァァアア!!」


肉を切り裂く嫌な感触が腕に伝うと同時、

片腕を失った悪魔が、辺りに血を撒きながら悲鳴を上げる。


だが、それでもまだ息はあるようだ。

傷口を押さえながら、忌々しそうに二人を睨みつけている。

ルガルドは更に追撃を加えようと剣を構えなおす。


その時だった。


「ルガルド!!後ろだぁ!!!」


「ッ?!」


振り返ろうとした刹那、切り落とした筈の腕が勢いよく飛び出してきた。


そのままの勢いで悪魔の左腕が、ルガルドの背中を貫く。


「ガハッ……ぐぅ、あああ!!!」


肉を抉られるあまりの激痛に膝をつくルガルド。


悪魔はそのまま腕を引き抜くと、よろけるルガルドの頭を鷲掴みにし、 グシャリと鈍い音を立て、地面へと叩きつけた。


「ガァ……あ、あ、」


ビクビクと痙攣しながら必死に抵抗するも、力の差がありすぎてどうにもならない。

悪魔はそれを見つめ、口元を歪めると、 何度も何度も地面に叩きつける。


「放しやがれこの野郎!!!」


ロイドが、怒りに任せて剣を振り下ろす。

悪魔は一瞬反応が遅れるも、ギリギリのところでそれを避けると、 背後にあった建物の壁に張り付く。

そして、ニヤリと笑うと、壁を蹴り上げ、王都の闇えと姿を消した。


「チィッ!逃したか!」


悔しそうに吐き捨てるロイド。

だが、すぐに冷静さを取り戻すと、ルガルドの方に駆け寄った。


「おい!しっかりしろ!」


ロイドは医師でもなければ、医学に詳しいわけでもない唯のハンターだが、ルガルドの状態が良くないことは一目見てわかった。


「ぐ……ッ、クソッ、こんな時に回復魔法が使えれば……」


傷口を必死に抑えながら、絞り出すように言葉を紡ぎ出す。


「大丈夫だ! 大丈夫だぞ...すぐに後組が来るからな。もう少しだけ耐えてくれ...ルガルド......」


刻一刻と冷たくなっていく手を握りしめ、ロイドはそう呟いた。

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