異世界に行ったら、勉強しなくていいと思ったのに
はじめて短編を書いてみました。
皆様も1度は勉強を放棄したいと思ったことは無いですか?
勉強が嫌いだ、という私の思いをぶつけてみました。
でも最後には私の中で、ちゃんと勉強はしなきゃ、という気持ちが戻ってきたみたいです。
あ、やばい。死んだかも。
交差点で車が俺に勢い良く突っ込んできて、全身を強く打ってしまった。
薄れゆく意識の中、俺が思ったこと。それは…
「なんだよ。こんな事になるなら昨日の夜、定期テストの勉強なんかせずに徹夜でゲームしとけば良かった…」
♢♢♢
「おぎゃあ、おぎゃあ…」
ああ、何処かで赤ん坊が泣いている。
あれ、俺、死んだんじゃなかったっけ…?
何故だか、思考は上手くまとまらないし、目も見えない。
どこだ、ここ?
「おお、元気な男の子だ!!」
「旦那様に似て、凛々しい顔立ちをなさっている!」
…もしかして、これ、異世界転生ってやつ?
確か、転生した奴って大体最強になるんだろ?
魔法と剣さえ極めれば、勉強しなくても良くなるんじゃね???
異世界転生サイコー!!
そんな俺の考えは、すぐに裏切られる事になった。
「えーこの国は、初代国王タイラーが、前王政の腐敗に対し革命を起こした事で…聞いていますかな、ルーク様?」
「あ、聞いてませんでした」
「全く、しっかりしてくださいませ。辺境伯の息子たるもの、このような怠惰な姿ではいけませぬ。そもそも、貴族とは…」
始まったよ。うちの家庭教師は、俺が勉強しなかったら毎度、こういう貴族の使命みたいなのを俺に説く。
別にキョーミ無いし、聞いてもすぐ忘れるし…
俺はクーバニ辺境伯の嫡男、ルークとして再び、生を受けた。
普通、転生したら、スキルとか色々特典があると思うだろ?
そんなもの、俺は1つも持っていなかった。
ユニークスキルなんて持ってないし、魔力量も一般的。剣の腕もイマイチ。
まさに、平凡。
おまけに魔法を使うには、魔法陣を暗記しなきゃ行けないし、勉強は、数字の数え方から違うから、一からやり直し。
さらにさらに、礼儀作法や、貴族としての平民への接し方など、前世でもやったことの無いような事も覚えなければならない。
嘘だろーー!誰か、嘘だと言ってくれ!!!
俺は今日も先生と闘いながら、なんとか勉強をサボる方法を模索していた。
だが、そんな俺の浅知恵はすぐに限界が来るもので。
「ルーク、そろそろお前を本気で叱ったほうが良さそうだな」
強面の典型例のような父が、険しい顔をして、俺の部屋にやってきた。
やばい、これはダメなやつだ。
「いい加減にしろ。この家には、お前しか跡取りはいないんだぞ!にも関わらず、全ての腕前は普通かそれ以下。特に抜きに出た才能を持っているわけでもない。せめて、努力する事を身につけろ!!!」
ビリビリと屋敷中が振動するような大声だ。
まじでこれを誰か目の前で体験したら、100パーセント泣きそうになると思う。
俺も涙目になりながら、「だって、勉強なんて楽しく無いんだもん」と反論する。
「馬鹿か、勉強は貴族の義務だ。それが出来ないとは、この家に生まれたからには言わせない」
父に反発した次の日から、より一層厳しいスケジュールに変更されてしまった。
いやもう、死にそう…
♢♢♢
あれから20年。
ギリギリの成績で貴族学園を卒業した俺は、今日、父から辺境伯の爵位を譲り受ける。
「精進するんだぞ」
そう言って父は、母と共に隣国へ旅行へと出掛けてしまった。
お陰で領地の事なんて何にも分からないまま、領主生活1日目を迎える。
「ではまず、仕事について私と一緒に学んでいきましょうね」
朝1番、領地をおさめる責任者の言葉に眩暈がした。
やっと学生では無くなり、勉強とおさらばできると思ったのに。これから改めて、勉強していかなくてはならないらしい。
習うは一生という諺があるが、それは異世界でも同じらしい。