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3.王都の外へ向けて

昨日は変に時間が噛み合わなくて書いてる途中で寝てしまいました……これからは出来れば毎日更新続けます。昨日の分の埋め合わせはいつか1日2話投稿する形でしたいと思います。

 城を出るのはそこまで難しくはなかった。というのも、門番の人が第一王女の名前を知っていたのと、俺自身も国王様から直々にヴィルツィア王族の証明である身分証明になるコインを貰っていた。一般人ならともかく兵士や騎士、貴族相手であれば間違いなく効果がある身分証明で、城に入る際もこれを見せれば簡単に通ることが出来るとのこと。持ってて損はないし、ありがたく頂いておいた。ちなみに、これは異邦人専用で使えるアイテムボックス機能に入った瞬間に譲渡不可アイテムになっていた。



 王都には当然ながらプレイヤーはまだ一人も居ないものの、それでも現地民であるNPC達で賑わっていた。

 とはいえ、今日は王都を歩くよりもそろそろ戦闘をしようと思う。幸いにも、王都の周りはそれ程敵は強くないようで、まだ初心者であっても倒せる程度のレベルではあるようだ。ゲームだったら普通は最初の街から徐々に敵が強くなっていくものだけど、このゲームは違うらしい。

 まあ、そりゃそうか。いくらゲームと言っても国の中で最も大きな人の営みが行われている主要都市の周囲の敵が強いなんて、流石に物騒が過ぎるし。そういう所はゲームというよりもリアル志向に近いな。

 てことは、逆に考えると王都から遠ければ遠いほど敵が強い可能性があるってことだけど……きっとそうとも言えないんだろう。



 城の門から延々と伸びる大通りを真っ直ぐ進んでいくと、王都の南側の門があるらしい。王都には上下左右の四方向にそれぞれ門が存在するが、その中でも南が一番モンスターが弱く、逆に北側が一番強いとのこと。理由は非常に明快で、南には交易都市だったり人の多い主要都市に繋がっている街道が敷設されており、それもあってか人通りも多く、安全確保のために騎士団によって定期的にモンスターや害獣の掃討が行われているようだ。

 逆に北側だが、こちらには街道は存在しておらず、そこそこ距離が離れてはいるがかなり深い大森林があるらしい。そしてその森林、厄介なことにかなり魔物が多いようで、時々あぶれてモンスターが森から飛び出してくることもあるようだ。それに、大森林はエルフが住んでいるから不用意に騎士団を派遣して警戒させるわけにもいかないとも言っていた。



 ちなみに、このゲームには当然ながら普通の人の種族、いわゆら人族以外にも色々な種族が存在している。エルフやドワーフ、獣人などが分かりやすい例だろう。ただし、プレイヤーは最初のキャラメイク時点では他種族を選ぶことが出来ず、人族で固定されている。

 しかし、ゲーム内で何処か特定の場所で種族ごとに転生クエストというのが存在しており、それを受けることでなんとプレイヤーでもその種族に転生出来るらしい。ただし、転生してしまうとマスクデータになっている隠しステータスが変化し最初はかなり身体の動かし方に苦労するだろうということだ。なお、これは攻略サイトではなくしっかりした公式情報だった。流石にテスト段階ではまだその転生クエストを受けられるまでの進めた人は居なかったようだ。



 さて、門までまだそこそこ距離があるわけだし、今のうちにステータスを確認してみることにしよう。それ思い、ステータスを呼び起こすための動作を取る。このゲームでは脳内で「ステータス」と唱えながら人差し指から中指までの三本だけを立てて中空を上から下に振り下ろすことで、他の人に見ることが出来ない状態のステータス画面を呼び起こすことが出来る。こかで唱える文を「ステータス閲覧」にすると、他の人にも見せることも出来るようになっている。



name:ソフィア(・セデルナ・ヴィルツィア)

sex:female

skill: 【剣術Lv1】【風魔法Lv1】【光魔法Lv1】【疾駆Lv1】【魔力爆発Lv1】

title:【ヴィルツィア王国第一王女】



 ……なんというか、ステータスで無慈悲な現実を突きつけられたような気がしないでもない。さりげなく名前にもかっこと王族用の姓まで付いてるし。

 とりあえず、さっき獲得した称号を確認するために目当てのものをタッチする。



name:ヴィルツィア王国第一王女

detail:ヴィルツィア王国の正当な第一王女であることの証明。この称号の持ち主はヴィルツィア王国国民からの好感度を大幅に上昇させる。



 説明欄はともかく、効果は中々いいものだった。好感度はどれだけあってもいいものだしね。流石に狂信までされると怖いけど。

 他は確認するまでもないため、再びステータス画面を閉じる。



 所狭しと並ぶ露店と車数台が横並びになってもなお余裕があるだろう程に大きな大通りを歩く。色々な料理があって鼻腔が擽られるが、あいにく今はお金の持ち合わせが初期配布の1000ゴールドしかないので我慢の時間である。



「おい嬢ちゃん、待て」



 耐え忍ぶ時間もすぎ、ようやく門から出ようとしたその時、突然、肩を掴まれた。あまりにも唐突すぎて一瞬身体が震えたが、すぐに肩を掴む手を振り払いながら後ろに下がりつつ振り返ると、そこには頬に小さな古傷を渋い顔のおじさんが居た。

 流石にまだ王都にプレイヤーが来ていないことは間違いがないから現地民(NPC)であるはずだが、一体何の用なのか……もしや、ナンパ?



「お、おい待て。驚かせたのは悪い。ただ、この先は街の外になる。今は街の周りには強い魔物がほとんど居なくなったが、居ないわけじゃねえ。嬢ちゃんみたいな子が一人で出るのは危ないと忠告したかっただけなんだ」



 俺の反応が余程酷かったのか、おじさんは慌ててバツが悪そうに頭をかきながらそう言った。すわ面倒事かと思えば、ただの親切心だったようだ。確かに俺みたいな奴が一人で街を出ようとしたらそりゃそう思うか……なんというか、ちょっと申し訳なくなった。



「そうなんですね。俺の方もごめんなさい。でもちょっとびっくりしただけで、大丈夫ですよ。あと、これでも俺って異邦人なんですよ。なので、死んでも大丈夫なんですよ」

「お、俺……? いや、今のはいきなり不躾に肩をつかんだ俺が悪かった。重ね重ね、すまねえ。にしても嬢ちゃん、異邦人なのか? 確かに今日、国の方からフィナの街に大量の異邦人が召喚されたことは演説で聞かされていたが、もうこんな所まで来たのか?」



 俺がそう説明すると、おじさんは驚いたように目を瞬かせる。最初の反応は聞かなかったこととする。

 おじさんの言うフィナというのはプレイヤーにとっての一番最初の街のことで、その北にあるのがレイク。そしてそこから更に北に向かってようやくここ、王都にたどり着くというわけだ。

 そう考えると、確かに今日来たばっかで王都は最初の街から更に街を1つ隔てた王都に居るのはおかしいよな。現地民どころか、プレイヤーでもそこまでは想定していなかっただろう。運営? 奴らはマッチポンプ疑惑が出ているのでその枠には含めていない。



「俺はちょっと事情があって、この世界に来てからすぐに騎士達に王都まで連れてこられたんだ。だからまだスキルのレベルも上げられてなくて、時間も丁度良かったから今からスキルを育てながらモンスターとの戦いに慣れようと思って」

「いや、事情って言ってはいるが街に配置された騎士が持ち場を離れて王都に連れてくるって大分異常だからな? まあ、これ以上は聞かないが……それにすぐに来たと言ったか。ということは、だ。もしかして、まだモンスターとの戦闘は初めてか?」

「うん」



 嘘をつくところでもないので、素直に頷く。一応剣道の鍛錬の一環で対人戦はかなりこなして来たが、人では出来ない動きをするモンスター相手に役に立つかはまだ分からない。



「俺達はこれから南の街、レイクに行く予定があるんだが、良かったら嬢ちゃんも着いてこないか? この辺りであるならまだスキルが弱くても何とかなるだろうが、レイクに近付くと敵は強くなってくる。それに、レイクへの道の通り道を塞いでいるグレーターウルフってモンスターが風魔法を使ってきてこれまた厄介ではあるんだが、幸いにも道を陣取っているウルフは群れから外れたやつらしく単独らしい。それくらいなら嬢ちゃんでも道中に俺達で手ほどきをすれば一人で倒せるようになるだろうし、万が一があっても俺達で助けられる。それで、どうする?」



『クエスト【冒険者の願い】が発生しました。受諾しますか? 了/否 (難易度:common(コモン))』



 おじさんは少し考え込む素振りを見せた後、俺に向けてそんな意外な提案を投げかけてきた。それと同時にどうやらクエストも発生したらしい。

 難易度はcommon(コモン)なのでクエストの中では一番低いが、これって内容的にクエストって言えないような気がする。

 それにしても、王都の外壁周辺は確かに比較的モンスターは弱いとはいえ、流石に最初の街よりは強いと聞いていたのである意味願ってもない申し出だけど、それっておじさんにはなんのメリットがあるんだろう。



「それはとてもありがたいですけど、でもそれっておじさんに得はないですよね?」

「そんなこともないぞ。俺にはさ、娘が一人居るんだ。歳の頃も外見上じゃ多分君と同じくらいだろう。いくら異邦人は死ぬことがないとはいえ、それでも嬢ちゃんを放ったままにしておくのは俺の方も気が気じゃねえ。それに、娘は実家で鍛治の手伝いをしているんだが、そのせいかあんまり友達が居ねえ。だから、嬢ちゃんにはたまにうちに来て娘と会って欲しいんだ。そういうのじゃ、駄目か? あ、あと俺のことはおじさんじゃなくてガレムと呼んでくれ」



 おじさんは意外……でもないか。どうやら既婚者であったらしい。にしても俺と同年代ってことは大体10代後半ってことかな。でも、?おじさんって30代に見えるんだけど、それだとおじさんが10代の頃に子持ちになったことになるような……。

 日本だったら割と問題になりそうなことだけど、ファンタジーの世界ならこういうことも有り得るってことか。

 てか、おじさん呼びしたの地味に気にしてたのかな。まあ、名前さえ分かったらおじさん呼びする必要性もないしね。



 とはいえ、理由については納得がいった。確かに子供と同じくらいの子がソロでモンスターと戦うと分かってて放置するのは気になるか。



「分かりました。ご相反に預からせてもらおうと思います。あ、あと俺はソフィアと呼んでください」

「そうか! それならよろしくな! ソフィア嬢ちゃん。それなら少しだけ待ってくれ。今、俺のパーティメンバーを待って……ぐぇっ!?」



 了承を告げると同時にクエストも自動的に受諾され、ガレムさんは表情を綻ばせる。

 続けながらにガレムさんは丁度ここに居た理由を話し始めたところで、何者かがガレムさんの頭を拳で殴りつけたことでかなりの鈍い音が鳴った。思いのほかかなりすごい音であったのも相まって、俺がギョッとししてしまったのも無理はないはずだ。



「何してんのよ、ガレム! 既婚者のくせにこんなに可愛い女の子にナンパ引っ掛けるなんて、恥を知りなさい!」



 額に青筋を浮かべて据わった目で怒声を放つ女性が言ったことは、奇しくも最初に声を掛けられた時の俺と同じ思考であった。この様子では、もしかしたら、今まで本当にナンパをしていたこともあったのかもしれない。

 ただ、今回に限って少なくともガレムさんは悪いわけではない。未だに痛みに悶えてしゃがみこむガレムさんに代わって俺が女性に説明すると、ようやく怒りを抑えたようだ。あと、ついでに互いに自己紹介もしておいた。女性の名前はリアナというらしい。



「全く……ガラムはこの子に感謝しなさい。大体、みだりに声を掛けないようにっていつも言ってるじゃないの。まず、ソフィアちゃんは今こんな格好ではあるけど本当はお忍びで、何処かのやんごとなき身分の御方だったらどうするのよ。下手したら首が飛んでたわよ?ガレムの失態で自分の首が飛ぶなんてことになったら私、絶対許さないわよ」

「感謝しなさいってお前、先に殴ってきたのお前だろうが……」



 こんな格好で、と言われて改めて見ると、初期の服装のままであった。別段古いとかはないが、いかにも平民が着ているような質素な服。思わず苦笑いが漏れてしまった。

 ただねリアナさん。ちょっと前ならともかく今の俺は本当にやんごとない身分なんですよ……。

 なんてことを口に出してもめんどくさいことになるのは分かりきっているので、何も言うつもりはないが。



「あ、おーい! ガラムさん! リアナさん! こんにちは!」



 ガラムさんとリアナさんがやいのやいの言い合っていると、杖を抱えてローブを身に纏う青年が笑顔いっぱいに手を振っており、その傍にもう一人、恐らく青年と同じくらいの年齢の、特に表情をピクリとも動かさずに真面目な表情で何も言わない青年が少し離れた場所に立っていた。



 しかし手を振っていた青年はすぐ近くに俺が立っていることに気付き一瞬キョトンとした顔になるも、すぐに顔を青くしたり紅くなったりした後、かなりの勢いで俺の前まで来て跪いたかと思うと、



「貴女のことが一目惚れしてしまいました! 付き合ってください!」



 そんなことを言い放った。瞬間、空気が絶対零度かと思うくらい凍る。

 直後、再び唸りを上げて拳が落ちたのは言うまでもないだろう。

この主人公、もしかしてゲームではなく異世界に転生しているのでは……?

というか、冒険どこ……??

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