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第2章 階層支配者との邂逅 ③


「ど、どうするか、この状況・・・・・」


 ウジャウジャと漆黒の海が俺たちの周囲に広がっている。


 それらは全て、蜘蛛の群れ。


 蜘蛛1匹1匹が持つ2列に並んだ8つの赤い目には、こちらに対して明確な敵意と憎悪の感情が宿っていることが窺えた。


 俺はその光景に怖気立つものを感じながら、引き攣った笑みを浮かべる。


「う、嘘でしょ!? “デス・スパイダー”がこんなに・・・・!?」


「デス・スパイダー!? フェリシアちゃん、こいつらは一体何なんだ!?」


「デ、デス・スパイダーは、ステータス自体はあまり強くなく、C級に分類される低級の魔物です。しかし、彼らが持つ毒は常人であれば即死クラスの代物で、上級の冒険者でも滅多に相手にはしない魔物なんです・・・・!!!!」


「な、なるほどなー・・・・って、ちょっと待って、ひとつ聞くが、こいつらって頭良いの? 仲間意識強かったりする?」


「はい。仰る通り、仲間意識がとても強く、群れ単位でコロニーを形成すると文献で読んだことがあります。1匹倒すとその倍の数が復讐にやってくると・・・・・・って、ま、まさか??」


「うん。俺、フェリシアちゃんと出会う前にこいつらの仲間、倒しちゃったんだよね〜・・・・アハハハハハハハ・・・・」


「嘘でしょ〜〜〜!!!!!」


 

 そんな会話している中、蜘蛛たちはジリジリと此方に近付いてくる。


 俺たちは壁側に追いやられ、前衛をスカルゴブリン、真ん中を俺、後衛をフェリシアという陣形を展開した。


「・・・・・クソッ、困ったな・・・・」


 色々と現状を打開する策を考えてはいるが、正直、無理ゲーっぽい。


 この数百匹の蜘蛛たちに太刀打ちできる術は無いし、逃げるにも四方八方囲まれては不可能だ。


 できることといえば、さっきみたいに新しいスキルに賭けてみることくらいか。


「・・・・アナウンスちゃん、今現在、習得可能な俺のスキルってある??」


《習得可能なスキルは以下の通りです》


《死霊系魔法 【リビングデッドコントロール】 消費スキルポイント70》


《合計所持スキルポイント 100》


「よし、じゃあ、それをさっそく覚えさせてくれ」


《了解いたしました》

《適性確認・・・・成功。【リビングデッドコントロール】を獲得しました》


 その時、頭の中の炎が輝きを放ち、俺の中に新たなスキルが入ってくる感覚があった。


「・・・・んで、これ、どういうスキル?」


《死霊系魔法【リビングデッドコントロール】は、首の無い死体に寄生し、その身体に宿る能力を自在に操ることができるスキルです。また、その身体で得たステータスとスキルは能力解除後も使用可能です》


「く、首の無い死体だと〜〜!? そんなもん、ここにある訳が・・・・・」


 ふいに、俺は後方にいるフェリシアに顔を向ける。


 彼女の足元には、冒険者の死体が2体、転がっていた。


 その内の1人、プレートメイルを着込んでいる戦士のような格好をしている男には、首から先が何もついていない。


 その死体を発見した瞬間、俺は目の奥の炎を輝かせる。


「ある、じゃねえか!!!!」


 俺は急いでフェリシアの元に向かう。


「おい!! そいつの死体、使わせてもらうぞ!!」


「・・・・・え?」


 困惑する少女を無視し、俺は戦士職の男の死体の前でスキルを発動させる。


「スキル【リビングデッドコントロール】発動!!!!!」


 その瞬間、俺のケツから無数の根っこのような触手が生え、その触手が戦士の男の首に突き刺さった。


 そして、触手は俺と男の首を縫合するかのように縫い付けると、俺の身体と彼の身体は完全にひとつとなった。



《報告 【リビングデッドコントロール】の効果により、【戦士 アレックス・ロストルディア レベル27】の能力を引き継ぎました》


《基礎ステータス値がアップしました》

《HP52→460》

《SP60→82》

《攻撃力14→567》

《防御力18→348》

《俊敏性30→322》

《魔法攻撃力45→150》

《魔法防御力30→142》


《新たなスキルを獲得しました》


《剣技 中位 スラッシュ》

《剣技 中位 アーマーブレイク》

《剣技 下位 ホーリーソード》


「なるほど、な」


 むくりと、死体だったはずの体が起き上がる。


 その光景に、フェリシアは地面に尻を付け、怯えた表情でガクガクと震え出した。


「い、いったい何を・・・・何をなさっているのですか!? ジャック様ッ!?」


 仲間だった男の頭に付いているカボチャ頭。


 彼女はそんな俺の姿に悲鳴を上げた。


「・・・・っと、悪いが話は後だ」


 フェリシアに襲い掛かろうとしている蜘蛛に対して、俺はその場に落ちていた剣を拾い、一閃、刃を全力で振った。


 すると、蜘蛛は塵となって消え、跡形もなく消失していく。


「おぉ、すげぇなこりゃ」


 その身に宿る溢れんばかりの力に、俺は思わず驚愕の声を溢してしまう。


 そしてすぐさま、周囲を囲む敵に向けて、俺は先程習得したスキルを発動させてみた。


「くらえっ!! 【スラッシュ】!!」


 横なぎに一閃、剣閃を放つと、約半数ほどの蜘蛛どもが一気に灰塵となっていった。


 後に残るのは、驚き戸惑う蜘蛛たちだけで、前衛をしていた蜘蛛ほど交戦的な奴はいない様子。


 俺は肩に剣を置いて、フゥッと大きく息を吐いた。


「・・・・まるで剣と身体が一体化したようだぜ。まぁ、この剣はアレックスの剣だからな。手によく馴染むんだろう」


 ブンッと、華麗に剣を空中に投げ、回転するそれを再度キャッチする。


 今まで剣など扱ったことなどないのに、まるで長年剣に生きてきた者かのように、使い方が瞬時に手に取って理解できた。


 これも、【リビングデッドコントロール】という能力のおかげなんだろうか。


「な、何で、彼の得意技である【スラッシュ】を使えるの・・・・!? それに、その剣の手遊びは、生前、アレックスがよくやっていたもので・・・・!!」


 息を荒くし、恐怖に慄くフェリシアを肩越しに一瞥した後、俺は再び蜘蛛の群れへと視線を向ける。


 戦意喪失といっても、まだ蜘蛛たちはこの場に留まっている。


 敵となるならば、このまま排除した方が良いだろう。


 俺はスカルゴブリンにフェリシアを守るよう指示し、蜘蛛の群れへと歩みを進める。


 しかしーーーーその時。


「ーーーーーウフフフフ。イレギュラーな存在ね、貴方」


 蜘蛛の群れを割くようにして、暗闇から1匹の巨大な蜘蛛が現れる。


 その蜘蛛はデス・スパイダーたちとは比較にならない大きさをしており、例えるなら大型バスと同じような体躯をしていた。


 俺はその姿に思わずゴクリと、唾を飲み込んでしまう。


「初めまして、カボチャのアンデッドさん。私はこの第三階層の支配者、タナトス、と言う者。ここにいる同胞たちの母親ですわ」


「タ、タナトス? 第三階層の支配者? フェリシア、どう言う意味だ?」


 振り返り、聞いてみるが、彼女は恐慌するばかりで何も答えなかった。


 俺は舌打ちを打ち、タナトスと名乗った巨大蜘蛛に顔を向け直す。


 そして、【アナライズ】を発動させた。


 【ステータス】 

  名前 タナトス

  Level 187

  種族 キング・デス・スパイダー 

  年齢 4824歳

  クラス 捕食者

  HP 5634

  SP 4894

  攻撃力 4983

  防御力 4565

  俊敏性 3854

  魔法攻撃力 4322

  魔法防御力 4284

  成長性  S


 【習得魔法スキル】

 ○闇属性上位魔法 ダークオーラ

 ○土属性上位魔法 アーススパイク

 ○毒属性上位魔法 ポイズンミスト

 ○重力属性中位魔法 アイアンクエイク


 【習得戦技スキル】

 ○鞭技 中位戦技 ロープクラッシュ

 ○毒属性牙技 中位戦技 ポイズンファング


 【耐性】

 ○闇属性耐性

 ○土属性耐性

 ○毒属性完全無効化

 ○精神支配完全無効化

 ○即死魔法完全無効化


 【加護】

 ○死神の加護 (あらゆるデバフ効果を反射する)

 ○土神の加護 (土属性魔法の常時無詠唱化)

 ○重力神の加護 (重力属性魔法の常時無詠唱化)


(ステータス見るまでもなく何となく分かってはいたが・・・・あ〜こりゃ、やべぇなぁ・・・・今の俺じゃ逆立ちしたって勝ってこねえわ」


 俺は内心恐々としながら、表情には出さず、勝気な笑みを浮かべる。


「よぉ、クソデカ蜘蛛、ここいるこいつらはお前の指示で俺を襲ったと見て良いんだな??」


「ええ。貴方は私の可愛い同胞を火の魔法で焼き殺したのですからね。その復讐に来てもおかしくはないでしょう?」


「ケッ、テメェのその同胞の方が先に俺に手を出してきやがったんだがな・・・・・って、まぁ、そんな話をしても意味はねえか」


 ハァッ、と、大きくため息を吐く。


「タナトスさんよぉ、俺らを逃してくれる、って言うわけにはいかないよな??」


「無理ね。特に貴方はこの場で私が仕留めなければならない。この迷宮において貴方はね、産まれてはならないイレギュラーな存在なの。普通、知恵のある魔物というのはあの御方の配下にしか許されない存在なのよ。分かる? 分かったのならその場で自殺してくれないかしら」


「あ? 分かんねえよ。俺はこの迷宮で死んで、生まれ変わっただけだ。許されるとか知ったこっちゃねえ。俺は誰にも指図されずに自由気ままに生きてやるんだよ。邪魔すんな」


「そう・・・・じゃあ、魔王軍、ベヒーモス様の配下が1人、タナトスが貴方を直々に始末するとしましょう」 


 そう、タナトスがこちらに向かって突進しようとし始めた、その時。


「グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」


 大量のゴブリンの群れが、タナトス目掛けて洞窟の奥から駆けてくる姿が目に入ってきた。



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