第8章 覚醒 ②
「あれは・・・・ジャック様!?」
「ミュミュミュ!!!!!」
私は急いでフェリシアの肩から飛び降り、檻へと走る。
間違いない。
あの御姿は、私が探し求めていた主の姿そのもの。
どうして、あのとても強かったジャック様が、あのような状況下に陥ってしまっているというのか。
可哀そうなジャック様。
いち早く、あの汚らしい檻を破壊し、ここからお救いしなければ!!!!!
「ミュー様!!!! 危ない!!!!!」
「ミュッ!?」
檻に向かって走っている途中。
突如、周囲が暗くなる。
何事かと思い頭上を見上げてみると、そこにはー---こちらに向かって降りてくる、巨大な影があった。
「グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!」
「ミュミュミュッ!?!?」
私は咄嗟に糸を吐き出し、壁に貼り付け、伸縮の勢いでその場を離脱する。
そして無事に壁際に逃げおおせた後、背後を振り返ると、先ほどまで私がいたそこにはー---筋骨隆々の巨体な魔物が立っていた。
「ひぃぃぃぃぃぃっっっ!?!?!? あ、あれはぁぁぁぁ〜っ!!!」
「ド、ドロセラ様、落ち着いてください!! 戦闘が起こる可能性は予期していたことでしょう!?」
「それはそうですがぁ!! まさかオーガがいるなんて、聞いてませんですぅぅ!!!!」
「オーガ・・・・正直、私は初めて見る魔物なのですが・・・・あの魔物はどれほど強いのでしょうか?」
「知らないんですかぁ!? オーガは、この階層におけるインプと同じ存在なんですぅ!! ゴブリンの上位種の『ゴブリン・ナイト』と『鉱山族』を交配して造り出された魔物・・・・インプと違って簡単には作り出せないのか個体数はかなり少ないですが、ステータスの平均数値が殆どの個体が3000越えなんですよぉう!! 階層支配者にも届きうる力を持った化け物なんですぅ~!!!!!」
「ステータス値、3000越え!? し、神話級の魔物じゃないですか!?」
「ですです!! 過去、たった三体のあのオーガによって、私たち夢魔族の里は滅ぼされたんですよぉう!! ですから、そんな化け物に勝ち目なんてないです~~!!! 逃げるですよぉ~~!!!」
「と、とはいっても、戻っても袋小路ですよ!? それに、あそこにはジャック様が・・・・・」
「・・・・・・・・私には透明化魔法があるです。なので、大変に心苦しく、申し訳ないのですが・・・・・ここは独りで逃げさせてもらうです!!!!」
「あっ、ちょっとっっ!?!?」
ドロセラは翼をはためかせると、踵を返し、急いで先ほど来た道へと引き返す。
しかしー----。
「【アイシクルランス】」
「ぎょええ~~~~~~~~~~~~~~~っっっっ!?!?!?」
突如、上から複数本の氷の刃が降ってきて、入り口を完全に塞がれてしまった。
魔法が放たれた方向に視線を向けると、そこには、鍾乳石に逆さにぶら下がる、シアナの姿があった。
「・・・・・・やっぱり、こっちの部屋にきたか。まっ、当たり前か。そこのサキュバスが捕まってた部屋に戻るわけはないだろうしさ。読み通りで安心したよ」
シアナはそう言って大きく欠伸をすると、鍾乳石から降り、氷の柱によって塞がれた入り口の前に立つ。
そして、私とフェリシアの顔を交互に見ると、疲れたようにため息を吐いた。
「はぁ。お前らも一緒か。ここ、ムレアの部屋だから、あんまし荒らしたくなかったんだけど・・・・まぁ、そうも言ってられないか。オーガ! その蜘蛛は僕とは相性が悪いから、そいつはお前がやれ!! こっちの二人は僕が相手をする!!」
「グルルルルル・・・・・・」
その命令の声を聞いた直後。
オーガは大きな石の剣を構えると、石畳が割れるほどの力で踏み込み、物凄いスピードで私に剣を降り下ろしてきた。
「ミュッ・・・・!!!!!」
ぶつかる寸前で何とか横に飛び、回避したものの、剣によって叩き割られた石片が私の横腹に突き刺さる。
傷口は浅いが、ポタポタと、少量ながらも紫色の血が地面に流れ落ちてしまっていた。
「ミュー様!?」
「おいおい、君さぁ、他人の心配より自分の心配しなよ?・・・・って、前も君にこの言葉言ってなかったっけ? ムレアが」
「くっ!!!! こんなところで死んでたまるかです!!!! 【アイシクルランス】!!!!!」
どうやら背後でも戦闘が始まったようだが・・・・後ろを気にしていられる余裕はない。
何故ならこのオーガという魔物は、とても強いからだ。
それは先ほどの攻防だけでも、はっきりと理解した。
恐らく一瞬でも隙を作ったら、私の身体は両断されてしまうに違いないだろう。
気を引き締めなければ、次の瞬間、私は死んでいる。
「・・・・・・・・・・・・」
オーガは地面に刺さった剣を引き抜くと、静かにこちらを向き、再び構えを取る。
その身から放たれる気配は、他者を簡単に肉塊に変えられるだろう圧倒的な暴力の匂い。
恐らく、だが・・・・・ジャック様の配下であるデュラハン・ゴブリンナイトと同等、もしくは近しい力を、この魔物は持っていると見て良いのかもしれない。
オーガが向ける殺意に、肌をピリピリと突き刺すプレッシャーに、私の足はガクガクと震える。
(怖い・・・・とても、怖い。だけど、ジャック様を助けるのを邪魔するのなら・・・・・あの方の命を救うことを諦めるくらいなら、この魔物に殺されても、私は構わない!!!!!)
圧倒的な力を持つ我が母、タナトスに恐れず、不敵な笑みさえ携えていたジャック様を思い出す。
あの姿を思い出すだけで、私の中の恐怖の感情は簡単に薄れていった。
「ミャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!」
咆哮を上げる。
そして、私は、オーガの間合いに飛び込んだ。
「グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!!!!!」
無謀な獲物のその行動に、歓喜の叫び声を上げながら襲い掛かってくるオーガ。
そして、次の瞬間。
私目掛けて、剣が横一線に振られた。
私はその剣閃に合わせて、高く跳躍し、その攻撃をまたしてもギリギリで回避する。
「ミュ・・・・ッ!!」
いや・・・・回避、できていなかった。
左足が三本、根本から綺麗さっぱり無くなっていた。
眼下を見ると、私の足だったものと鮮血が、空中に舞っているのが見える。
そしてその光景の向こう側で、オーガはニタリと笑みを浮かべていた。
オーガはきっと今、こう考えているに違いない。
得意の俊敏性が無くなれば、私は、地面を這いつくばるしかない羽をむしり取られたただの虫。
あとは適当に剣を振っていれば倒せる簡単な仕事。
私を殺すことなど造作もない、と。
奴はこれで、私が即座に戦意喪失すると思っているのだろう。
その証拠に、すぐさま攻撃の動作をオーガは取っていなかった。
ただ、ニヤニヤと、無防備に落下していく私を見つめている。
まったく・・・・・その油断が命取りだというのに。
私がこれしきのことで、足が無くなっただけで、止まると思っているのか。
私のジャック様への忠義をこの程度だと思っているのなら、それは大間違いだ。
私は、アッシェ。
偉大なる第三階層支配者、『死神』タナトスの炎の跡に残った、灰。ただの燃えカス。
今までの自分は、そう、自分はただの灰だと思い込んできた。
だが、これからは違う。
私は、ジャック様に寄りそう存在でありたい。
炎と灰は表裏一体の存在。
炎が通った後には必ず灰が残る。
だから私は、ジャック様の行く道を支える灰になるんだ。
あのお方の覇道を、青い炎を絶やさない、焚火となる。
いずれジャック様の一の配下となるこの私の覚悟を見誤るなよ!! 三下が!!!!!
「ミャァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!!」
お尻を上げ、私はオーガの目に目掛けて糸を発射する。
案の定、油断していたオーガは私のその行動に対処しきれず、簡単に奴の瞼は糸によって塞がれてしまっていた。
「グ、グルゥア!?」
動揺し、尻もちをついて倒れこむオーガ。
その隙を見計らい、私は足を引きずりながら、急いでオーガの背後にある檻へと向かった。
鉄格子がはめられたその箱型の檻は、格子同士の間隔が思ったよりも広く、私の体格であれば簡単に隙間を通ることができた。
(ジャック様・・・・)
目の前に転がる丸い身体のアンデッド。
ようやく会えた主の姿に感動しつつも、今はそんなに時間がないため、私は急いでジャック様に糸を巻き付け、ぐるぐるにする。
そして、落ちないように私の背中とジャック様の身体を糸で絡めて彼を背負うと、私は急いで檻から脱出した。
「グガッグガーッ!!!」
オーガはまだ、私の放った目つぶしがとれないようだ。
これを好機とみて、私は急いで逃げ道を探す。
だがー----。
「逃がすとでも思ってるの??」
目の前に立ちはだかるのは第五階層支配者、インキュバス、シアナ。
彼の背後に視線を向けると、フェリシアとドロセラが意識なく倒れている姿があった。
やはり、二人はこの階層支配者に勝てなかったか。
私は間の悪さに奥歯を噛みしめながらも、冷静に状況を観察する。
(私だったら、幻惑魔法が効かない。だから、シアナとは優位に戦いを進められるはず。けど・・・・彼を倒す間にオーガが復活したらその瞬間、私の敗北が確定するのは間違いない。そんな一瞬で、この階層支配者を私が倒すことは可能? いいえ、無理に決まっている・・・・だったらここは・・・・・)
私はキョロキョロと辺りを見回す。
入り口は【アイシクルランス】で塞がれているため、通ることは難しい。
だったら、他に、逃げ道はないのか? どこかに、この状況から脱する活路はー----。
「正直に言うと、僕は今SPが枯渇していてね。さっきの入り口を塞ぐための【アイシクルランス】と、二人と戦った時に使った幻惑魔法で、大部分の魔力を使い切ってしまった。だから今、とてもピンチに陥っている」
突然何を言い出すんだ、この魔物は。
油断を誘っている、もしくはオーガの盲目状態が解除されるまでの時間稼ぎ、だろうか。
どちらにしろ自分の魔力切れをわざわざ口にする必要なんてないし、敵に弱みを見せたところでまったくメリットなんてものは何もない。
十中八九、罠とみて間違いないだろう。
私はシアナの発言を無視し、臨戦態勢を取りつつ、思考を加速させた。
(落ち着け・・・・絶対に活路はあるはず・・・・すべての状況を整理するんだ。まず頭上・・・・は、暗くて果てまでは見通せないけど、鍾乳石がたくさん連なっているのは見える。オーガが上から落ちてきたことを鑑みるに、上に幾分かの空間はありそうね・・・・でも、空の光は見えないから、逃げ道としては良くないかも。次に、このフロア全体・・・・)
この部屋は、全体的にあまり広くはない。
インプたちが塒としていた部屋や、フェリシアが捕まっていた部屋のほうがよっぽど広い。
そして、この部屋に私たちが来た道以外に横穴はなく、出入り口は塞がれたひとつだけ。
他に、鼠一匹通れる穴なども見当たらない。
(くそっ!! ここまできて何もできないなんて!! せめてジャック様だけでも、逃がさなきゃならないのに、いったいどうしたらー----)
その時。
ふいに、サーッという音がどこからか聞こえているのに、私は気づいた。
その音は床下・・・・もとい、私の足元から聞こえてくる。
私はハッとし、思わず自分の足元を見つめた。
「グルルルル・・・・・」
「はい、時間切れ。オーガ、眼の糸とっちゃったよー。これで君の負けは確実ー----」
「ミュミュミュユー!!!!!!!」
私は天井に向けて、全SPを放出する勢いで【ストーン・バレッド】を放つ。
そして、鍾乳石の雨を、私の周囲に振り下ろさせた。
「なッー---!?」
私のその行動に、シアナは翼を使って飛び、慌てて後退する。
オーガも、鍾乳石から自身の身を庇おうと、その場にしゃがみ込んで身を守っていた。
(お母さまの行動を真似るようで気分はあまり良くないけれど・・・・でも、今取れる最善策は、これしかない)
降ってきた鍾乳石は石畳を貫き、地面に穴を穿つ。
そして私が立っていた周囲は鍾乳石によってひび割れると、簡単に崩れ落ち、奈落の底へと落ちていった。
「ミュミュミュー・・・・」
ジャック様を身体の背中から前面に移動させ、落とさないようにしっかりと、残った足と絡めた糸で抱きしめる。
そして、私たちは崩落した穴の底へと落下する。
底には、勢いよく流れる激しい川が広がっていた。
おおきなうねりをともなったその奔流は、私たちを飲み込むと、瞬く間にここよりさらに地下へと押し流していく。
私は、ただ必死にジャック様を抱きしめた。
私は死んでも構わない。
でも、この御方だけは生きていてほしいと強く思いながら、私は愛しき人を強く抱きしめた。
目の前に、糸が、垂れていた。
その光り輝く白い糸は天井から垂れており、まるでこの世のものとは思えないほど美しく、不思議な気配が漂っていた。
「なん・・・・だ、これ」
俺にはそれが、救いの糸に見えてしまった。
芥川龍之介の蜘蛛の糸のような、地獄に降りてきた救いの糸。
大事な人を失い、この狭い部屋の中で過去に怯える日々を送っていた俺にはとってそれは、とても眩しく、直視できない光が伴っている。
だが、この糸は俺が目をそらすことを認めない。
糸は、自分を手に取れと、そして戦えと、鮮明に俺に訴えてくる。
ひきこもって三年もしたからだろうか。
とうとう俺は、頭がおかしくなってしまったのか。
だって、ただの蜘蛛の糸が、意志を伝えてくるわけがない。
それに、蜘蛛の糸が普通、こんなに光り輝くわけがー-----。
『秋月、お前のせいで桜野さんは死んだんだ!!』
『そうよ!! 秋月 透、あんたは死ぬべきよ!! 生きている価値なんてない!!』
『何でまだ生きてんだよ!! さっさと死ねよ!!』
過去に浴びせられた暴言の幻聴が、耳の奥底から聞こえてくる。
また、これだ。
ゲームや本などの娯楽に意識を集中させてないと、毎回こうして過去の幻影が俺に牙を向いて襲い掛かってくる。
さっさと死ねと、クラスメイトたちが俺を責め立て、心を砕いてくる。
耳を塞いでも、その声は鳴りやまない。
目を塞いでも、瞼の裏には過去の情景が映し出される。
この部屋に逃げても、結局、俺に安寧の場所などどこにもなかったのだ。
俺は、あいつらから、桜野さんを助けられなかった罪からは、一生逃げることができない。
「やめてくれ・・・・もう、やめてくれ!!!!!」
迫りくる過去の影から逃げるように、縋るように、俺は目の前の糸を握る。
助けてくれと、この地獄から救い出してくれと、必死の思いでその糸を握った。
すると、次の瞬間ー----。
俺は、『俺』を思い出した。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そうか。
そういうことか。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・なるほど、な」
ベッドに座り込んで、ふぅと、大きく息を吐く。
なるほど、これは全てあいつの仕業だったわけか。
ムレアの使った【チャーム・ファンタズム】。
あの、ぼんやりとした意識の最後に見た黒い靄がかった掌。
アレがこういった効果のある魔法だったとは、まったくもって思いもしなかったぜ。
相手の持つトラウマ、最も忌むべき記憶を掘り起こさせて、廃人になるまでその悪夢を見せ続ける、か。
まぁ、何とも悪趣味でエグい魔法だな。
振り返ってみれば、この光景を見せられたのは36回目くらいか??
確かに、こんだけ見せられたら心砕けて廃人になってもおかしくねえな。
案の定、俺は今までのことを忘れてしまうくらい精神が擦り切れてしまっていたわけだし。
まったく、この俺に見事にクリーンヒットした最悪の魔法だったぜ。
敵ながらあっぱれと、認めざる終えない。
「さて・・・・この糸はもしかして、気配から察するに・・・・白蜘蛛ちゃんの力か? おい、どうなんだ? 脳内アナウンスちゃん?」
《報告 現実のジャック様の体内にデス・スパイダー レベル27 の血液が混入したため、一時的に貴方様は幻惑魔法の耐性を会得しました。その糸は、デス・スパイダーの血液によって顕現した力をこの幻惑世界の中で具現化したものと見て良いでしょう》
「ほーん? 白蜘蛛ちゃんの血液を俺が摂取したから、か。・・・・って、何それどういう状況?? 現実の白蜘蛛ちゃん、どしたの? 血が出てるって何かやばそうだな・・・・。てか、何で第五階層に白蜘蛛ちゃんいるんだ? あの子とは第四階層で別れたと思ってたんだが・・・・」
まぁ、その辺りは現実に戻って早く確認すれば良い話か。
ん? 待てよ・・・・・でも、どうすりゃ、俺はこの世界から帰れるんだ??
幻惑魔法の耐性が一時的に付いたと言っても、見たところ記憶が元に戻っただけだぞ??
うーんと、頭を悩ませてると、再び脳内にアナウンスの声が流れてくる。
《報告 デス・スパイダー レベル27 の眷属化の条件が満たされました。固有パッシブスキル『眷顧隷属』を使用して眷属化を行いますか?》
「ん? その報告、確かさっきもしてたよな?? てか眷属化って何ぞ?? 初めて聞いたぞその単語」
《眷属化とは、ジャック様のクラス、【魔の調律者】だけが行える固有パッシブスキル『眷顧隷属』で使用可能な能力です。ジャック様に対してある魔物や人間が一定の忠誠値を獲得した場合、対象の個体の血液と引き換えに貴方様の力を一部分け与えることによって、その魔物を上位種族に進化させることができます。そしてその魔物は【アンデッドドール】で作り出した魔物同様、貴方様の完全なる支配下に置かれることとなります》
「んー・・・・ん? ええと、確かパシッブスキルっていうのは【アナライズ】じゃ見えないスキルなんだっけか?」
《その通りです。【ハイアナライズ】を使用すると見られるようになる、常時発動型の特殊スキルのことです》
「う、うーむ・・・・じゃあ今度は、完全なる支配下というのはどういうこと?」
《アンデッドを支配下に置いた時、そのアンデッドが生きているか死んでいるか、生死の状態が分かりますよね? それと同じで、貴方様の精神と深くその魔物が繋がることになります。忠誠値が高い魔物ほどその効果は上がり、最終的にはその魔物がどこにいるか、何を見聞きしているか、そういったことも徐々にわかるようになっていきます》
「・・・・・・・・・な、なるほど? 何かよう分からないけど、完全な俺の手下になるわけね? ふむ」
《それで、如何いたしますか? デス・スパイダー レベル27 を眷属化致しますか?》
「・・・・・・そう、だな。白蜘蛛ちゃんはこの世界で初めて出会った唯一の、損得勘定無しで俺を助けてくれた恩人だ。眷属化して、俺はあの子とさらに友好を深めておきたい」
《了解致しました。では、眷属化するにあたり、デス・スパイダー レベル27に付与するスキルをお選びください。尚、付与したスキルは今後、レベルアップや【リビングデッド・ドール】で会得しても一切使用することはできなくなりますので、ご了承ください》
「・・・・・・・・マジ、か。スキルをひとつ完全に失うことになるってことか。こりゃ、よく考えねーといけねーな・・・・うーむ。とりあえず、俺が今まで習得したスキル、見せてくれないか? アナウンスちゃん」
《了解いたしました。こちらでございます》
目の前にメッセージウィンドゥが開かれる。
【習得魔法スキル】
○死霊属性超位魔法 アンデッドドール
○死霊属性超位魔法 リビングデッドドール
◯情報属性下位魔法 アナライズ
○炎熱属性下位魔法 エンファイア
○炎熱属性上位魔法 ヘル・エンファイア
○炎熱属性上位魔法 シャドウ・エンファイア
○疾風属性下位魔法 レイス
○疾風属性上位魔法 ウィドー・デス・レイシア
○闇属性上位魔法 ダーク・スパイク
○攻撃力増加・補助属性中位魔法 チャージ・イクイップ
【習得戦技スキル】
○剣技 中位 スラッシュ
○剣技 中位 アーマーブレイク
○剣技 下位 ホーリーソード
○剣技 上位 地烈斬
○疾風属性 爪技 上位戦技 ウィンドブレイク
○疾風属性 牙技 上位戦技 ウィンドドファング
○鞭技 中位戦技 ロープクラッシュ
【耐性】
○スロウ無効化
○毒属性攻撃無効化
○炎熱属性魔法無効化
○疾風属性魔法無効化
○斬撃耐性
○疾風耐性
【加護】
○風神の加護 (疾風属性魔法の常時無詠唱化)
○火神の加護 (炎熱属性魔法の常時無詠唱化)
○魔犬の祝福(耐性を無視して疾風属性ダメージを与えることができ、尚且つ常時疾風属性ダメージ量を1.5倍増加させる)
○疾風の加護 (疾風属性無効化の敵にも疾風属性ダメージを与えることができる)
【パシッブスキル】
○眷顧隷属 忠誠値が80以上の個体を支配下に置き、種族を上位種に進化させる。
○終焉の炎 使用する火炎属性魔法に常時即死効果を付与する。
○魔道の叡智 使用する全ての魔法スキルを名称詠唱のみで発動することができる。
「お、おぉ・・・・思ったより、俺、スキル持ってたんだなぁ」
しかし、この中から白蜘蛛ちゃんに何をあげよう。
まず間違いなく失うことができないのは、アナライズ、アンデッドドール、リビングデッドドール、あとはメインウェポンのエンファイア、スラッシュ辺りかなぁ。
あと、パシッブスキルも無理だな。
この辺りは俺が生きていく上で死活問題になりそうなスキルばかりだ。
と、考えれば残りのスキル。
あの子は確か毒属性と土属性のスキルしか持ってなかったから、それ以外でいくとすると・・・・・。
「エンファイア以外の炎属性魔法、疾風属性魔法、闇属性魔法、のどれか、かなぁ・・・・・」
《報告 威力が高い魔法ほど、眷属化する魔物の能力が上がりやすいです。今あげられたスキルの中でいうと、闇属性上位魔法 ダーク・スパイク が最も威力の高い魔法となります》
ダーク・スパイク、か。
確かケルベロスから奪った魔法だったな。
インプの群れと戦ったときに使おうとしたら、SP切れて使えなかったんだよなぁ。
その効果も、今となってはまるで分からない。
もしかしたら、とんでもない力を秘めた魔法なのかもしれないが・・・・・白蜘蛛ちゃんには何度も命を救われたからな。
もしかしたら今も、俺を助けるために奔走してくれてるかもしれない。
なら・・・・その恩に報いるためにも、このスキルをあげることに、躊躇はない。
「よし。じゃあ、白蜘蛛ちゃんにこの魔法、ダーク・スパイクをあげてくれ」
《了解致しました。適正確認・・・・成功。では、付与する属性スキルを元にデス・スパイダー レベル27の進化先を検索致します。検索中・・・・・・・・2件、ヒットしました。この二つからお選びください》
○アラクネ
○キング・デス・スパイダー
「アラクネに決まってんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!! キング・デス・スパイダーってタナトスと同じ種族じゃねえか!!!! 嫌だよあんな馬鹿でかい蜘蛛になんの!!!! 人間的な見た目の方が絶対良い!!」
《了解致しました。デス・スパイダー レベル27 をアラクネに進化させます。 尚、種族変更に伴いレベルは1に戻りますのでご了承ください》
「そっか。でも、まぁ、白蜘蛛ちゃんが人間みたいな見た目になる方がずっと良いよ。だって嫌だもん、恩人が毛むくじゃらのグロい蜘蛛で直視できないの。それで何度俺があの子に罪悪感を覚えたことか・・・」
《報告 眷属化したことにより、クラス《魔の調律者》のレベル上限が解放されました。レベル15→30》
「おぉ、眷属化したら何故か困ってた問題がひとつ片付いた」
《以前、間が悪くお話できませんでしたが、ジャック様のクラス《魔の調律者》は眷属を増やすことでレベル上限が解放されていきます。それと、特有のスキルで多くの敵を倒すと、稀に新しいクラスが解放されていくことがあります。魔法スキルを多く使えば《ウィザード》、剣技スキルを多く使えば、《剣士》、といった具合で新たなクラスを獲得することができます」
「へー、そうだったのか。まぁ、俺はアンデッドにばかり魔物狩らせてたからなぁ。自分でまともに倒したの、そういえばハイゴブリンとケルベロスとインプくらいしかいねえな・・・・」
自分のニート具合が嫌になるほど分かる。
いや、今現在、まさにニートだったころの俺の姿をしているのだけれど・・・・・。
「・・・・・・・・なぁ、ところで、アナウンスちゃん」
《なんでしょう?》
「あのさ、俺、いつになったらこの幻惑魔法とやらから現実に帰還できるの?」
《・・・・・・・・・・・・・・・・・》
辺りに沈黙が舞い降りた。




