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第4章 蹂躙、その果てに ⑤



 「終わりだな、犬畜生」


 戦闘が始まって数十分。


 俺の【エンファイア】を警戒するあまり思うように攻撃を放てなくなったケルベロスは、周囲を囲むデュラハン・ゴブリンナイトとガルムたちからちまちまとダメージを与えられ、ついにはその膝を地面に付けてゼエゼエと肩で息をし始めていた。


 その巨体に刻まれた無数の傷からはとめどなく血液が流れ落ちており、顔には苦悶の表情が浮かんでいる。


 見るからに、満身創痍の死に体だ。


 あと何回かダメージを与えさえすれば、ケルベロスは完全に動きを停止することだろう。


 俺は再び奴の注意を引き付けるために眼前に青い火球を浮かべる。


 そんな俺を怒りの形相で睨みつけると、ケルベロスは傷だらけの体躯を三本の足で必死に支え、息を大きく吸い上げた。


 そして三つの口を開くと、頭上の虚空に向かって大きな叫び声を上げる。


 「フェ、フェンリルども、おらぬのかぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 「この俺が!! 第四階層支配者の俺がこんな目にあっているのだぞッ!!!!」

 「だ、誰かあのアンデッドを始末しろッ!!!!」


 「無駄ですよ、兄上」


 その時、ヴァイスと見知らぬ女が上階から飛び降りてきて、すとんと、軽やかにケルベロスの背後へと着地した。


 そして女は後方を振り向き驚くケルベロスの三つの顔に、ニコリと、不気味な笑みを浮かべる。


 「残念ですが、城内にいた黒狼族(フェンリル)は事前に退避するようにヴァイス近衛隊長殿が働きをかけております。村内の者たちもすでに他の間者が掌握済みです。貴方を助ける者はここには誰もおりませんよ、兄上」


 「ルーナ・・・・ッ!!!!!」

 「ヴァイス!!!!」

 「き、貴様らぁッッッッ!!!!!」


 黒い毛皮のケープを纏った女は、怒りに身体を震わすケルベロスをつまらなそうに一瞥すると、今度は俺へと視線を向けてくる。


 そしてロングスカートの端をつまみ上げ、片足を後ろの内側に引くと、頭を丁寧に下げてきた。


「お初にお目にかかります、ジャック・オー・ランタン様。私は先代ケルベロスと愛妾の人間の血を引く合いの子、半魔のルーナと申す者です。突然で失礼しますが、ヴァイス近衛隊長と同じように私も、貴方様の軍門下に加えてはくださらないでしょうか?」


「ルーナ・・・・確か、ヴァイスが言っていた、ケルベロスの妹だったか・・・・というか良いのか? 俺、今から兄貴を殺しちまうんだぞ?? そんな奴の下につけるのかお前は??」


「フフフ、お優しい方なのですね。でも、お気になさらないでください。私は、その獣を兄だとは一度も思ったことがありませんので。どうぞ、その愚かな魔物の命、お好きになさってください」


「貴様!! ルーナ!! このケルベロスの恩を忘れたのか!!!!」

「俺の慈悲で半魔のお前を今まで第四階層に住まわせてやっていたというのに!!!!」

「そ、それなのに裏切るなんて・・・・や、やはり、所詮は獣人族(ガウルフ)の忌み子ということですか・・・・」


「ええ、そうです、兄上。私は、人間でも魔物でもない紛い物。ですから一度も貴方や黒狼族(フェンリル)を仲間だとは思ったことがないし、内に宿る本性を見せたことも一度もない」


 そして彼女は黒く濁った瞳を妖しく光らせると、今までの淑女じみた様子とは打って変わり、粗暴な獣のような雰囲気をその身に宿らせた。


 「なぁ、兄上、あんたがあたしを生かして城に置いていたのって、あたしに母さんの面影があったからなんだろ?? あんた、いつも口癖のように獣人族(ガウルフ)を劣等種族呼ばわりしているが、結局のところそれは好きの裏返し・・・・つまりは母さんに恋焦がれてただけなんじゃないのか??」


 「ふ、ふざけるな!!!!」

 「この俺様が!!!!」

 「下等な人間に恋情を抱くことなど断じて有り得ない!!!!」


 「ククッ、その焦り具合、もしかして図星か?? まったく、親父殿と同じ異種族好きの変態魔物だったとは笑わせてくれるぜ。このあたしを散々殴り飛ばしていたのもそういった趣味の延長線上のことなのかね??」


 「その妄言を吐く口共々、叩き潰してくれるッッ!!!!」

 「死ね!! 愚かなる半魔の妹よッ!!」

 「あ、あの世で悔いると良いですッ!!」


 ルーナを嚙み砕こうと、口を大きく開けて、ケルベロスは突進する。


 しかしー-----。


「さようなら、兄上殿」


「ー---【スラッシュ】」


 

 当然、俺はその無防備な背中を無視するわけがなく。


 斬撃スキルの【スラッシュ】を使って、ルーナに嚙み付こうとしていた首を背後から真っ二つに叩き切った。


「「ぎぃああああああああああああああああああああああッッッッッッッ!!!!!!!!」」


 残った左右二つの顔が苦痛に悲鳴を上げた後、ケルベロスは地面に倒れてのたうち回る。


「へぇ・・・・やっぱ首が複数あると、ひとつ切断してもまだ生きているもんなんだな」


 空中に跳躍するデュラハン・ゴブリンナイトの腕の中から、俺は倒れたケルベロスを見下ろす。


「よし。んじゃ、残りの首もちゃっちゃと切断してしまうか」


「ちょ、待っ」

「や、やめー---」


 そうして俺は再び、【スラッシュ】を使い、上段からケルベロスの首に向けて斬撃を放っていった。







 ケルベロスという魔物は、単為生殖で次代の子を成すことができる能力を持っている。


 そして生まれてくる全ての個体が総じて雄であるのが、他の種にない特殊な性質だった。


 父から息子が生まれ、その息子からまた雄の子供が生まれる。

 

 つまり、我ら一門にとって母親というものはどの個体にも存在しない。


 けれど、我だけは違った。


 我には、種族の違う母親がいた。


 『ベロスちゃん、おはよう』


 ケルベロスという総称しかない我に名を付けてくれたのが彼女ー--父の愛唱の獣人族(ガウルフ)の女だった。


 女はよく、子犬だった我を膝の上に乗せて、子守唄を歌ってくれていた。


 それは獣人族(ガウルフ)の故郷、ベストラ共和国のものだと言っていたが、外の世界に出たことがない迷宮の魔物である我にとって、いったいそこがどんな場所なのかは全くもって分からなかった。


 『お義母様、我も外の世界に行ってみたいです』


 まだ、人格が三つに分裂していなかった幼い頃。


 そう、お義母様に問うたことがある。


 けれど、我のその言葉に母は悲しそうな顔をして、何も言わず、ただ俯くだけだった。


 ー---そしてその数か月後、妹が産まれたことをきっかけに、母は我と接することが極端に減っていった。


 その時、妹の世話で忙しいから自分の相手ができないのだと、我はそう思っていた。


 けれど、妹が5歳になり会話ができるようになった頃、たまたま母が妹に話しかけていた言葉を聞いてしまった我は、母の内に秘めた感情を知ってしまった。


『ー------ルーナ、良い? 貴方はいつか必ず獣人族(ガウルフ)の国に帰りなさい。そして私の代わりに故郷の両親に・・・・私の夫と子供に、愛しているって伝えて頂戴。いいわね?? 私はもう二度とこの迷宮から出れないと思うから・・・・お願いね』


 そう言って泣き崩れる母は、その後、父であるケルベロスや他の魔物たちへの憎しみを赤裸々に語っていた。


 我はその言葉を聞いた途端、母への信愛を裏切られたと怒り狂いそうになったが・・・・同時に、自分は彼女から愛を向けられていない存在であると、理解した。


 母から愛情を向けられるルーナが、羨ましくて憎くてしょうがなかった。


 そして魔物である自分が人間の愛情を欲して止まないという事実が、ケルベロスという誇り高い種族に産まれた自身にとって、たまらないほど屈辱的なことだった。


 だから、我は自身の心をかき乱す義母上ー---もとい人間という種族を劣等種と蔑み、忌み嫌うようになっていった。


 『人間など、全て滅んでしまえば良い』


 5000年前の人魔大戦で魔王が人間たちに殺されてしまったから、我らはこの薄暗い迷宮に閉じこもって暮らさなければならなくなったのだ。


 そう。全て、全て、人間たちのせいだ。


 だからこの迷宮で最も人間を嫌う階層支配者、タナトス様に、いつか共に外の世界の人間どもに恐怖を知らしめてやろうと約束したりもした。


 それもこれも、義母上が短命で亡くなってしまい、彼女への復讐を果たせなかった行き場のない怒りのためだ。


 我はいつか必ず、この怒りを義母上の故郷にいる彼女の家族に与えてやる。


 貴方が何よりも大切だったものを全て嚙み殺してやる。


 憎しみこそが、この暗闇で生きる我の唯一の救い。


 義母上、貴方が我に名前など付けなければ、我はこんな妄執に囚われることなど、無かったんだー----。


 


 



「ー----まさか、我の最後に見るものが、貴様の顔だとはな」


 切り飛ばされ、空中を舞う三つの視界の中。


 我の瞳に映るのは、黒い髪に黒い瞳の、義母上と瓜二つの少女の顔。


 もう一度、会いたかった女性のその顔を目に焼き付けながら、我の意識はそこで消えていった。








「・・・・・・ようやっと、殺せたか。流石にHP5000越えは骨が折れたぜ」


 俺はデュラハン・ゴブリンナイトの腕から飛び降りて、全ての首が切断されたケルベロスの死体を眺める。


 ケルベロスの周囲には首と肩から流れ落ちる緑色の血が水溜りを作っており、辺りには鉄錆のような血の匂いが充満していた。


 その様子から見て、確実にケルベロスは死に絶えていると見て良いだろう。


 俺はふぅと大きくため息を吐きつつ、死体の向こう側にいるヴァイスとルーナへと視線を向ける。


「お疲れ様です。ジャック様」


 ヴァイスはそう言うと、何故か俺に向かって腹を出してきた。


 俺はその様子を、ただ乾いた笑みを浮かべながら静かに見つめる。


 「・・・・・前々から気になっていたんだけど・・・・・何で君らフェンリルは俺に対していちいち腹出すんだい??」


 「はっ!! これは黒狼族が最上級の相手へ敬意を表すときの挨拶でございます!!」


 えぇ・・・・その腹出し挨拶、何となくバカにされてる感否めないんだけど・・・・まぁ、犬も慣れた飼い主にはよくお腹見せるしね、あれと同じかね。


 「ジャック様。ケルベロス討伐おめでとうございます」


 ルーナの方は胸に手を当てて普通にお辞儀してきてちょっと安心。


 人間の姿をしたこの子まで横になって腹出してきたらちょっとドン引きしていたかも分からんね。


「あっ! というかお前、あの時挑発してケルベロスの気を引き付けてくれたんだろ?? あれのおかげで簡単に【スラッシュ】を奴の首に当てることができたよ。ありがとうな」


「いえ。私は兄上の最期に今までの鬱憤をぶつけたかっただけでございます。全てはジャック様のお力で成したことです」


 そう言って柔和な笑みを浮かべる犬耳獣娘。


 何というか彼女は、一言で表すならばどこか陰のあるダウナー系美人だ。


 闇夜のような瞳は吸い込まれそうなくらい綺麗だし、艶のある長い黒髪と尻尾は思わず撫でたくなるほどな上質の毛並みだし、身体はボンキュッボンだし・・・・俺がケモナーだったらノックアウト間違いなしだったろうな。


「・・・・・・・・・・・いや、しかし、でかいな・・・・」


 いや、まぁうん、生前は無類の巨乳好きだったからね俺・・・・ケモナーじゃなくてももうすでにノックアウトされている感は否めないね、うむ・・・・。


「ミューッ!!!! ミューッ!!!!」


「痛い痛い、頭齧らないで白蜘蛛ちゃん!! 何、急にどうしたの・・・・・・って、虫ぃぃぃっ!!!!!! ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 俺がボーッと乳・・・・いや、ルーナを眺めていたら、何故か白蜘蛛ちゃんが俺の頭に齧りついてきた。


 フシューフシューと荒い息を吐きながら、毛むくじゃらの複数本の足でがっちりとホールドされた俺は、成す術もなく、その場でグルグルと走り回ざる負えなかった。


 だって、巨大な蜘蛛が顔面に張り付いてきてんだよ??


 そりゃあ、虫嫌いだったらパニックになって走り回るしかないでしょ、トホホホ・・・・・。


「・・・・・・・・・・・・」


 そんな俺の様子を見かねてか、デュラハン・ゴブリンナイトが混乱する俺の顔面から白蜘蛛ちゃんをぺりぺりと剝がしてくれた。


 剝がされ抱えられた白蜘蛛ちゃんは未だ怒っている様子で、フシューと息を荒げている。


 正直、この子が怒っている原因が全くもって分からない。


 何か白蜘蛛ちゃんが怒るようなことしたかな? 俺?


「ジャック様」


 そんな混乱する俺のもとに、ケルベロスの死体を迂回しながらヴァイスが近づいてきた。


「それでは、無事ケルベロスを倒せたことですし、行動を早急に起こしましょう」


 その言葉に俺はコクリと頷く。


「まずは手筈通りに他の黒狼族(フェンリル)たちにケルベロスの死亡と新たなる階層支配者としてジャック様がこの階層を支配されることを宣言致しましょう。今から私とヤオがこの階層に住まう全ての黒狼族(フェンリル)を城の前に連れてきますので、ジャック様は城の上層にあるバルコニーで民たちが集まるのをお待ちください」


「了解した。俺がケルベロスを殺した事実を目にすれば、フェンリルたちも力量差を理解して、俺に歯向かう気力をそぐことができるだろうからな。けれど、もし、それでも牙をむいてくる奴がいたら・・・・以前も話したがその時は分かっているよな、ヴァイス??」


「はい。その時は容赦なく断罪してくださって結構です。では、行ってまいります」


「へぇ・・・・??」


 その発言に、何故かルーナは面白いものを見るような目をすれ違いざまのヴァイスへと向けていた。


 しかしその表情も一瞬のことで、すぐさま俺へと視線を戻すと、彼女は再び柔和な笑みを浮かべる。


「ジャック様。私はいかが致しましょう?」


「ルーナは俺の目が届く範囲で一緒にいてくれ」


「まぁ、新たなる階層支配者となるジャック様から直々にご同伴のご指名、それも一緒に過ごせるなんて恐悦至極です」


「悪いが・・・・俺はまだお前を信用しきれていない。だから、目にいる範囲にいてもらわなきゃ困るんだよ」


「そうですね。その判断は、当然のことかと思います」


 ヤオとヴァイスは俺の力に恐怖してこちらの軍門に下った。


 けれど、この女からはそういった俺への恐怖心というものは微塵も見えてはこない。


 むしろ、こちらに対して好感を抱いているような気配さえ感じられていた。


 俺はその様子に、不気味な何かを感じ取っていた。


「・・・・魔物というのは元来、強き者に惹かれる性質を持っています。私もジャック様の御力に惹かれた魔物の一匹ゆえ、貴方様の配下になりたかったのでございます。これは噓偽りのない私の本音です。ですが・・・・ジャック様にはこう言った方が安心感が得られますかね?? 負け馬のケルベロスから降りて、勝ち馬の新たなる階層支配者に乗った、と」


 そう言ってフフフと黒髪の美少女は笑った。


 俺もつられて同じようにクククと笑う。


 数度会話しただけで、こいつは瞬時に俺の性格を把握し、俺が好む返答を使ってみせた。


 どうやら相当頭が回るみたいだ、この女は。


 益々警戒度は跳ね上がる・・・・・が、同時に今の会話だけでもこちらに敵意が無いことは理解できた。


 俺を騙すつもりなら最初からこちらの好む言葉だけを発していればいいものを、あえて『強き者に惹かれた』という本音を混ぜて会話してきたことからみて、まず争う意思はないとみて良いだろう。


 いや、それすらも本音かどうかはまだ判断しきれないか・・・・でもまぁ、とりあえずは、表面上は害意のない存在とだけ捉えておこう。


 警戒は緩めず、な。


「そうか。じゃあ、俺も負け馬にならないように強さを維持しなきゃならないな」


 そう言って、俺はケルベロスの死体へと近付く。


 何はともあれ、こいつもヴァイスたちと同じで、俺に力があるからこちらの陣営についただけのこと。


 その力に陰りが見えたら、味方どころか敵になる可能性が高い。


 そうならないためにも、俺はさらに力を得ていかなければならない。


 「【リビングデッドドール】、発動ー-----」

 

 「な、こ、これは・・・・・!?」


 ルーナの驚愕の声が耳に入ってくる。


 それと同時に俺とケルベロスの真ん中の首が根っこで繋がり、その瞬間、体の中に大量の何かが入ってくる感触があった。


《報告 【リビングデッドコントロール】の効果により、【ケルベロス23世 レベル78】の能力を引き継ぎました》


《基礎ステータス値がアップしました》


《HP1234→3578》

《SP292→767》

《攻撃力1623→2568》

《防御力602→2543》

《俊敏性882→3892》

《魔法攻撃力282→884》

《魔法防御力194→923》


《新たなスキルを獲得しました》


《炎熱属性上位魔法 ヘル・エンファイア》

《炎熱属性上位魔法 シャドウ・エンファイア》

《疾風属性上位魔法 ウィドー・デス・レイシア》

《闇属性中位魔法 ダーク・スパイク》

《攻撃力増加・補助属性中位魔法 チャージ・イクイップ》

《疾風属性 爪技 上位戦技 ウィンドブレイク》

《疾風属性 牙技 上位戦技 ウィンドドファング》

《鞭技 中位戦技 ロープクラッシュ》



《新たな耐性を獲得しました》


《スロウ無効化》

《毒属性攻撃無効化》

《炎熱属性魔法無効化》

《疾風属性魔法無効化》


《新たな加護を獲得しました》


《風神の加護 (疾風属性魔法の常時無詠唱化)》

《火神の加護 (炎熱属性魔法の常時無詠唱化)》

《魔犬の祝福(耐性を無視して疾風属性ダメージを与えることができ、尚且つ常時疾風属性ダメージ量を1.5倍増加させる)》 



 こうして俺は、階層支配者の能力を初めて、この身に宿すことに成功したのだった。







 


「ほう? ケルベロスが殺されたか」



 上位遠隔透視魔法【ビジョン】を使用し、鏡面に映った大きな死体を見つめる一人の影。


 その影は、カボチャのアンデッドの一挙手一投足を、興味深そうな顔で眺めていた。


「うん?? こやつめ、ケルベロスの身を喰らっておるのか?? いや、違う? 乗っ取っている?? ふむふむ・・・・察するに、スキルを使って能力を奪っているのは間違いなさそうか。フッ、面白い奴だな。我が主、シャーロット様は『与える者』だったがこの者は正反対、『奪う者』だな」


 ガッハッハッと盛大に笑い、男は、さて、と、顎に手を当て思案する。


「大方、ベヒーモスが取り逃がした転移者の成れの果てだろうが・・・・我輩はあやつの行う調律者狩りにはほとほと呆れ果てているいるからな。故に、こやつをベヒーモスに渡すほどの義理もない。ならば、この者がどこまで来れるか静観するのも悪くはなかろう」


 クックックッと楽しそうに男が含み笑いをこぼすと、背後に立っていたメイドの女性が彼に声を掛けた。


「ルーヴェルト様。そろそろ、輸血のお時間でございます」


「おぉ、そうか。ならば行くとするか」


 そして男はソファから立ち上がると、再び鏡面に映るカボチャ頭に視線を向けた。


「いやしかし、久方ぶりに面白いものが見られたな。もし奴が他の階層支配者を退け、無事に我輩が君臨するこの第六階層まで来ることができたのなら・・・・その時は我が娘、メルヴェドーサの婿としての資質を見極めてやらねばなるまいて。メルヴェもこんな面白そうな奴だったらきっと歓迎するに違いない!! アンデッドのカボチャ頭なのだけが傷だがな!! ガッハッハッッハッハッハ!!!!!!」


 そうして男は大きく笑い声を上げながら、部屋を後にした。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうもはじめまして。 作品拝見しました。 とても面白かったです。 (≧▽≦)
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