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第3章 死滅の兵団 ②



「ミィアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!!」



 咆哮を上げ、突如俺と漆黒の蜘蛛の間に割って入ってきた白き蜘蛛。


 その白い蜘蛛ーーーーデス・スパイダーは、まるで俺を守るかのように黒いデス・スパイダーの前に立ち塞がると、敵意を剥き出しにして両腕を上げ、威嚇のポーズをした。


 その状況に理解が追いつかず、俺は混乱する。


(な、なんだこいつ・・・・ま、まさか、俺を助けたってのか??)


 この世界に来てから俺はまだ一度も、自分に対して友好的な感情を見せる魔物を見たことがない。


 何故なら、デス・スパイダーもハイゴブリンも、問答無用でこちらに攻撃を仕掛けてきたからだ。


 そのことから俺は一つ、仮説を立てていた。


 それは、この世界の魔物は他種族に対しては仲間意識を持っていないのでは? ということ。


 何たって、蜘蛛の主である『タナトス』とゴブリンの王様っぽそうな『ゴブリン・ロード』が物凄い険悪な雰囲気で言い争っていたからな。


 あの光景から察するに、奴らは犬猿の仲と見て良いだろう。


 だから俺にとっては同種であるカボチャ頭の魔物以外、もしかしたら全員敵と見ても良いのかもしれない。


 ・・・・・でも、まぁ、ハイゴブリンに関しては俺が先制攻撃をかましたのだから、こちらに敵意を持つのは当然とは当然の道理なんだがね、うん・・・・。


 と、とにかく。


 その仮説通りでいくならば、デス・スパイダーが仲間割れを起こすのはどうにもおかしい状況なのだ。


 フェリシアも、デス・スパイダーは頭が良く、1匹殺されれば群単位で復讐するくらい仲間意識が強い、って言っていたし、こいつらは基本同種族同士は仲が良いのだろう。


 それなのに・・・・・何故、同種族であるデス・スパイダーたちは目の前で睨み合っているというのか。


 何故、この白いデス・スパイダーは同種でも無い俺を助けたというのか。


 今までの情報だけでは、全く持ってこの状況を推察することができなかった。



「シャアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!」



 そう考察していた、その時。


 睨み合う蜘蛛同士の膠着状態は解かれ、状況が動いた。


 最初に動いたのは、俺を襲ってきた黒い蜘蛛だった。


 漆黒のデス・スパイダーは尻を上げ、白い蜘蛛に向かって糸を連射して飛ばす。


 しかし、白い蜘蛛はその糸をサイドステップで真横に飛ぶことで、軽やかに回避することに成功。


 そして白い蜘蛛はすぐさま魔法を発動し、地面から小さな石礫を浮かべ、それを黒い蜘蛛に向かって弾丸のように射出した。



「ギィァァァァァァァァァァァァッッッッッッッ!!!!!!」



 見事、黒い蜘蛛の横っ腹に石礫は命中。


 黒い蜘蛛は緑色の体液を吐き、苦悶の表情を浮かべる。


 けれど、戦闘不能に至らせるほどのダメージでは無い。


 黒い蜘蛛は憎悪で瞳を紅く光らせると、白い蜘蛛に飛び掛かった。


 白い蜘蛛はというと、先程の一連の動きで疲れ果ててしまったのか、息を荒くしよろめいていた。


 それを好機と見出し、黒い蜘蛛は不気味に口角をあげる。


「シャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 そして背中に飛び乗った黒い蜘蛛は、咆哮を上げ、8本の脚で敵の動きを封じる。


 そして毒液を垂らす牙を剥き出しにし、その牙を白い蜘蛛に突き刺そうと振り下ろした。


 あと数秒も経たずに、毒の牙を刺され、白い蜘蛛は息絶えることだろう。


「・・・・・・・・・」


 これは単なる、仲間割れだ。


 俺にとっては蜘蛛どもは敵であり、奴らが仲違いしてくれるのは好都合な事象だ。


 だから現状、奴らが戦っているこの隙に逃げてしまうのが、最も得策といえる選択である。


 ーーーーーだが。


 力で押さえ付けられ、『あぁ、やっぱりこうなるのか』といった諦めの表情を浮かべるその蜘蛛の姿に、俺の身体は自然と動いていた。


 その蜘蛛が浮かべている表情は、生前、こことは別の世界で助け損なったーーーーどこかの少女の顔と酷似していたからだ。


 その顔を確認した途端、俺の意思は固まる。


 あいつを、今度こそ、助けると。


「ーー【エンファイア】」


 下にいる白い蜘蛛に当たらないように、黒い蜘蛛にだけ照準を絞って火球を放つ。


 すると黒いデス・スパイダーは断末魔を上げ、火炎飲まれていき一瞬で灰となって消えていった。


 その光景に目をパチクリと見開き、口をポカンと開け、驚愕の顔を浮かべる白い蜘蛛。


 俺はフゥッと息を吐き、そんな白い蜘蛛に一瞥視線を送る。


 そして蜘蛛を迂回するように避け、瓦礫の山を降っていった。


 勿論、いつでも攻撃を仕掛けられても対処できるよう、警戒しながらだ。


 そもそも白い蜘蛛が俺を善意で助けたとは限らないし、タナトスの配下であるデス・スパイダーたちがこちらに対して良い感情を持っているとは思えない。


 何たって俺は奴らのボスに大々的に『殺すべき存在』認定された訳だからな。


 タナトスをボスとしたデス・スパイダー社会では、俺は指名手配犯として名を馳せていることだろう。


 だから、この白い蜘蛛も俺の敵と見て間違いないーーーーそう思ったんだが・・・・。


「ミィーッミィーッ」


 何故か白い蜘蛛は背後にぴったりとついてきていた。


 そして俺に対してずっと何やら鳴き声を放っていた。


 その鳴き声は、先程の威嚇の咆哮とは違い、猫が飼い主に擦り寄り甘えた声を出すのに近いもの。


 その声にこちらに対しての敵意は一切見えてはこなかった。


「なんなんだ、お前・・・・?」


「ミュッ! ミューミュミューミュッ!」


「いや、何言ってるか分かんねえよ、人語喋ってくれ」


「ミュゥゥ・・・・」



 がっくりと肩を落とし、落ち込むデス・スパイダー。


 何を言ってるかは分からないが、どうやらこちらの言葉は伝わっているようだ。


 俺はため息を吐きながら、薄暗い第4階層の洞窟の中を跳ねて進んでいく。


「なぁ、一応確認しておくけど、お前、俺の敵じゃねーんだな?」


「ミュッ!!」


 隣にやってきて、ブンブンと頭を縦に振り、同意を示す白い蜘蛛。


「そうか・・・・まぁ、なんだ、助けてくれてありがとうな。お前がいなきゃ、俺は今頃ドロドロのカボチャスープになってあいつに喰われていた」


「ミュミューミュッ!」


 いえいえと首を横に振る白い蜘蛛。


 言語は理解できないが、こちらの言葉に対しては意思疎通がちゃんとできているみたいだ。


 大の虫嫌いのため、極力虫の姿を視界に収めたくは無いのだが・・・・言語が分からない以上、白い蜘蛛の身振りで返答を判断せざる終えないな。


 仮にも命の恩人だし、嫌悪感丸出しにして無碍にはしたく無い。


 俺は長い手足に毛が生えているその姿に怖気立つものを感じながらもぐっと堪え、平静を装いつつ、蜘蛛に対して口を開く。



「んで、お前、俺についてきてどうすんだ?」


「ミュッ! ミューミュミューミュミューミュ!」


「んー、さっぱり分からんが・・・・このまま俺と行動を共にするつもりか?」


「ミュッ!」


「そっか・・・・ついてくるのか」


これがまだゴブリンとかだったのなら生理的嫌悪は持たないんだが・・・・蜘蛛はちょっと、なぁ。


 正直、さっきのデス・スパイダーに囲まれた時なんて、卒倒しそうだったしな。


 タナトスと対峙した時には、威勢よくしていなければ自分を保ててはいなかったレベルだ。


 俺ははっきり言って、虫というものがこの世の誰を差し置いても、一番大嫌いな存在なのだ。



「・・・・けど、はぁ・・・・しゃあねえよなぁ」


 俺は炎のため息を吐きつつ、前を進む。


 命の恩人である、白い蜘蛛と共に。







 そうして数分ほど暗闇の中を進んでいると、俺が落ちてきた場所に似ているフロアに辿り着いた。


 瓦礫の山と、15メートル程の天井に空いた、ぽっかりとした大きな穴。


 間違いなく、タナトスの魔法によって崩落した、第3階層の瓦礫の山と見て良いだろう。


 俺は周囲をキョロキョロと見回し、フェリシアとスカルゴブリンを探す。


 しかし、その瓦礫の山にあったのは2人の姿ではなくーーーータナトスの石の杭の魔法を真っ二つに割った、あの屈強なゴブリンナイトの死体だった。


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