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第3章 死滅の兵団 ①



「クッソ、あの巨大蜘蛛め!! 地面割るだなんて聞いてねーぞ!!」


 瓦礫を退け、ケホケホと咳をしながら俺は頭上を見上げる。


 すると、15メートル程の距離にある天井に、巨大な穴がポッカリと開いていた。


 どうやら俺は、元居た場所のひとつ下の階層に落ちてきたみたいだ。


 あのタナトスとかいうキモデカ蜘蛛と、ゴブリン・ロードとかいう血色の悪い爺さんが、あそこを第三階層と言っていたから・・・・・その言葉から考えるなら、ここは第四階層といったところだろうか。


 よっこらしょういちと歳臭い掛け声を発しながら膝に手を当て立ち上がり、俺は辺りを見渡す。


 周囲は薄暗く、フェリシアの【ホーリライト】の灯った杖も無いため、視界は全くと言っても良いほど不明瞭だった。


 俺はとりあえず、一緒にいたフェリシアとスカルゴブリンを探すべく、声を張り上げ、瓦礫の山を降っていく。


 「フェリシアちゃーん、スカルゴブリーン」


 ピ○チューウッ!!!! と、映画の某サ○シ並に呼んでみるが、反応はまるで返ってこない。


 落ちる寸前まで隣を走っていたから近くにいるんだとは思うんだが・・・・おかしいな、人の気配を全く感じないぞ。


 キョロキョロと頭を動かしながら、歩みを進めていく。


「うーん、スカルゴブリンとの繋がりは無くなってはないし、少なくともあいつは大丈夫だとは思うんだが・・・・・・ん?」


 その時、パキリと、背後から何者かが瓦礫を踏む音が聞こえてきた。


 俺は2人がいたのだと安堵の表情を浮かべ、音がした後方へと視線を向ける。


 しかしーーーーー。


「キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」


 そこにいたのは、俺へと飛びかかってくる漆黒の影、デス・スパイダーの姿だった。


 デス・スパイダーは俺の身体・・・・もといアレックスの腕に噛み付くと、即座に体内に毒液を流し込んできた。


 その瞬間、腕の肉がドロリと溶け落ちていき、傷口から全身に広がるようにして肌の色が紫色に変色していく。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ何じゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」


《警告 【ポイズンファング】の効果により、『猛毒』状態に陥りました。即座に【リビングデッドコントロール】の能力を解除し、本体からアレックス・ロストルディアの肉体をパージすることを推奨致します》


「わ、分かった!! 【リビングデッドコントロール】解除ーーーー!!!!」



 その時、首と身体を接合していた根っこが外れ、俺は再びカボチャ頭の身に戻る。


 そして、俺は急いでアレックスの身体から距離を取った。


「シュルルルルル・・・・・」


 デス・スパイダーは倒れ伏すアレックスの死体を骨になるまで溶かすと、再びこちらに敵意のこもった目を向けてくる。


 俺は先程自身に起こった腕が溶けるという惨状を思い出し、戦慄した。


 そして、最後まで毒を注入されたーーーー骨だけとなったアレックスの死体に、背筋を凍らせた。


 その光景に汗をダラダラと流し、俺は引き攣った笑みを浮かべ、口を開く。


「や、やべー・・・・確かにこいつの毒はフェリシアちゃんの言ってた通り、即死レベルのもんだわ」


 もし、【リビングデッドコントロール】を使わずに、カボチャ頭の身体だけだったら。


 死体の腕ではなく、本体を噛まれていたら俺はーーーー間違いなくこの世からおさらばしていたことだろう。


 ゴクリと唾を飲み込んだ後、俺は火炎魔法【エンファイア】をいつでも発動させることができるよう準備をしておく。


 最初出会した時と同じなら【エンファイア】でこの蜘蛛は一撃で殺すことが可能だからだ。


 この距離ならば、最初と同じように相手が近づいた後に魔法を放てば、外すことはないはず。


 でも、もし、万が一、下手打って外したのならば、俺は液状化したカボチャとなってしまうのは避けられない。


 ミスをしたら、その瞬間、自身の命は潰える。


 それはあの蜘蛛も分かっているのか、奴はただこちらに敵意の目を向けてくるだけで、むやみやたらに攻撃を仕掛けてはこなかった。


 俺とデス・スパイダーは互いに睨み合い、西部劇のように互いに膠着する。


 辺りに、静寂した空気が広がっていく。


 「キシャァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!」


 最初に動いたのはデス・スパイダーだった。


 奴は俺に向かって猛スピードで突進してくると、毒の牙を突き刺そうと距離を詰めてくる。


 俺は口から炎を吐き出し、目の前に火球を発動させ、奴が0距離まで近付いてくるまで炎の玉を空中に浮かせておいた。


 確実に仕留めるために、至近距離で【エンファイア】を放つと、そういった算段をつけたからだ。


 素早い俊敏性を持つ奴といえども、顔面に炎をお見舞いしてやれば回避不可能なはずだ。


 (よしよし、もっと近付いてこい!!)


 馬鹿の一つ覚えのように、猪突猛進にこちらに真っ直ぐ向かってくる毒蜘蛛。


 距離にして10メートル。


「シャァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!」


 距離にして7メートル。


(まだだ、まだ確実とはいえない)


 毒液を垂らしながら、8つの赤い瞳を光らせ、こちらに突進してくる漆黒の蜘蛛。


 大の虫嫌いのため、その光景にはどうしても怖気立つものを感じてしまう。


(まだだ、まだ耐えろーーーー!!!!!」


 距離にして5メートル。


 もうそろそろ良いかもしれない。


 俺はライフルのスナイパースコープを確認するかのように、片目を閉じ、炎の照準を定める。


 しかしーーーーーーー。


「ウルシャァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!!!!」


 デス・スパイダーは急に横へ飛ぶと、尻を上げ、俺の目に糸を放ってきた。


(しまった、こいつ、糸も吐くんだったかーーーー!!!!)


 最初に食らったことがあるだろうに、完全に失念していた。


 気をつけるべき攻撃手段は毒の牙であると、勝手に思い込んでいた。


「何やってんだ、俺はーーーーー!!!!!」


 自分のアホさ加減に声を張り上げた俺は、糸で塞がれた微かな視界を頼りに、急いで蜘蛛に視線を向ける。


 しかし、数秒の判断ミスが仇となった。


 俺のすぐ真横に、デス・スパイダーは迫っていた。


 俺は【エンファイア】を放とうと、蜘蛛に火球を向ける。


 しかし、俺が魔法を射出するよりも早く、毒蜘蛛の牙が迫っていた。


(あ・・・・終わった・・・・・)


 確実な死を予感した、その時。


「ミャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」


 真っ白なデス・スパイダーが俺に牙を向けようとしていたデス・スパイダーに対して、体当たりをかましていた。


「は?」


 訳もわからず、困惑の声をあげる。


 突如現れた真っ白な蜘蛛は、俺を守るようにして前に立ちはだかると、漆黒の蜘蛛に向けて猫のような唸り声を上げていた。

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