第三話 恥を知れ
「お腹が空きましたお腹が空きましたお腹が空きました!!!!」
空腹の最上は馬鹿のようにそれだけを繰り返す。
……いや、最上は馬鹿のようではなく馬鹿なのだ。
それもとびきりの。
なんせコイツは入学初日に教室の窓にロケット花火を発射した馬鹿だ。
聞いた話によると、新たな門出を花火でドカンと祝おうと思ったが、さすがに天井に打ち上げるのは危ないと判断し窓に向きを変えぶっ放したらしい。
うん、話を聞いてもコイツの頭がイカれてることしか伝わってこない…。
一応開いてる窓に向かって発射したらしいが、運悪く軌道が逸れ一枚の窓にブチ当たってしまった。
そこからは連鎖的にパリンッパリンッパリンッ!!と割れ、結果的にその教室の窓ガラスは全て粉々になった。
ホントどうしたらそうなんの…。
当然最上はしこたま先生に叱られ、ついには校長まで出てきた。
最終的に奴は一週間の自宅謹慎となった。
奴のおかげで俺たちは窓ガラスが修復されるまでの間、春の薄ら寒い風に晒されていたのだから自業自得だ。
「最上…。先生は授業の内容に関して質問がないかって聞いたんだが…」
「ああ!!そういう意味でしたか!!大丈夫です!私の空腹に比べたら取るに足らない問題です!」
「取るに、足らない…」
おっと、南野がショックを受けている。
そりゃ、そうだ。
自分の教えてる授業がそんな風に評価されたら少なからずショックを受けるだろう。
南野のように教育熱心な奴だったら尚更だ。
最上は様子のおかしい南野を見て首を傾げる。
そしてその原因に気付いたのか「あ!」と声を上げる。
「南野先生!取るに足らないって先生の授業のことではありませんよ!先生は素晴らしい教師です!」
「…本当か?無理しなくてもいいんだぞ…?」
「ホントにホントの本当です!先生の授業は大変丁寧でとてもいいと思います!」
と、なぜか上から目線で評価する最上。
だが、落ち込んでいた南野はその言葉に勇気づけられたようだ。
「そうか…そうなのか…!よかった…!先生、教師に向いてないのかと思ってもうやめようかと思ってた…!」
思いのほか、ダメージを受けていたらしい南野。
若干涙目じゃないか、責任とれよ最上。
「ん?それなら何が"取るに足らない"んだ?」
ふと気になったのか南野は疑問を口にする。
だいぶ余裕を取り戻し、さっきのことに考えを巡らせていたらしい。
「ああ、それなら本当に取るに足らないことですよ!」
最上はニコニコと無邪気な笑顔で言い放った。
「数学など私の人生には必要ない!取るに足らないもの!という意味です!」
南野は二度泣いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回メインとなった最上しおは、常識がぶっ飛んだキャラですが、作者としては割とお気に入りのキャラです。
皆さまにも気に入っていただけるといいのですが、いかがでしたか?
次回の投稿は9月18日の17時くらいの予定です。
割とギャグ多めの作品ですが、合う合わないは人それぞれです。
もし続きを読みたいと思ってくださった方は応援してくださるとありがたいです。
そして、もう一度深い感謝を。