雪降る夜に3
職場である屋敷に帰れてほっとしたが、大目玉をくらった。罰もこなしてから、指の痛みをこらえながら、自分の部屋に戻った。
すでに夜遅い。みなはとっくに就寝している。
今まで明日の分のじゃがいもを洗っていたのだ。それが荷物を失くしたことへの罰だった。凍えた手で、じゃがいもを洗ってから、こんな罰でよかったなとユイは思った。もっと大変な罰が下るのだと思っていた。
遅い時間まで迷子になっていたことが幸いしてはいた。嘘をつかない子供だと周囲に知られていたのもよかったのだ。
ただ、魔導師の話をしたときだけ、ユイは納得のいかない顔をした。
「氷の魔導師」の領域にまで入ったユイを、汚いものでも見るような顔をしたのだ。足の怪我もきれいな包帯になっている。あのローブの切れ端は捨てられた。
「よりによって、あんなところで迷子なんかになってこの子は。こっちの街にまで災難が来るような事があったら、お前のせいだよ。あの氷の魔導師は冷酷非道で邪悪な魔導師だ。足を治してくれたなんて、何かの前兆かもしれない」
侍女頭はそう言って、じゃがいもの洗いだけを命じたのだ。たぶんおびえていたのだ。
「氷の魔導師」
なんて似つかわしい名前なんだろう。
ユイは何回か通称を呼んでみた。隠しておいた銀のペンダントに触れる。今はユイの体温であたたかい。
「魔導師様は、優しいよ」
それはユイだけが知っている。
翌日から毎日、ユイは屋敷の外での仕事を任されるようになった。徐々に暖かくなる季節とはいえ、まだ雪のちらつくことも多い。極寒の国なのだから当たり前だ。それでも、自分を外に追いやりたいらしい。それは子供の自分が考えても分かるような理由なのだ。
「ユイ、それが終わったら庭の掃除を」
風が吹き荒れる庭を掃きながら、ユイは何度か心中でつぶやいた。
『魔導師様はそんなことしないのに』
あんなに静かで優しい人は、他にはいない。それに、焼き菓子が食べたいって言ってたし、きっと一人きりでさみしいんだ。
四日間、ユイはその仕打ちに耐えたが、五日目に寝込んだ。熱が出たのだ。
そのときも、侍女たちはおざなりな扱いをした。今までよりもずっと、ユイをかまわなくなっていた。
失敗から一週間後に、ユイは屋敷を抜け出した。
夜中に焼き菓子を作って、持って行くことにしたのだ。ユイは幸い、何でもできる子供なのだ。そう躾けられて育っている。
庭や林で集めた木の実をすりつぶして焼き菓子にした。
よろこんでくれるといいな。