表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪降る夜に  作者: 作楽 律
3/10

雪降る夜に3

 職場である屋敷に帰れてほっとしたが、大目玉をくらった。罰もこなしてから、指の痛みをこらえながら、自分の部屋に戻った。

すでに夜遅い。みなはとっくに就寝している。

 今まで明日の分のじゃがいもを洗っていたのだ。それが荷物を失くしたことへの罰だった。凍えた手で、じゃがいもを洗ってから、こんな罰でよかったなとユイは思った。もっと大変な罰が下るのだと思っていた。

 遅い時間まで迷子になっていたことが幸いしてはいた。嘘をつかない子供だと周囲に知られていたのもよかったのだ。

 ただ、魔導師の話をしたときだけ、ユイは納得のいかない顔をした。

「氷の魔導師」の領域にまで入ったユイを、汚いものでも見るような顔をしたのだ。足の怪我もきれいな包帯になっている。あのローブの切れ端は捨てられた。

「よりによって、あんなところで迷子なんかになってこの子は。こっちの街にまで災難が来るような事があったら、お前のせいだよ。あの氷の魔導師は冷酷非道で邪悪な魔導師だ。足を治してくれたなんて、何かの前兆かもしれない」

 侍女頭はそう言って、じゃがいもの洗いだけを命じたのだ。たぶんおびえていたのだ。

「氷の魔導師」

 なんて似つかわしい名前なんだろう。

 ユイは何回か通称を呼んでみた。隠しておいた銀のペンダントに触れる。今はユイの体温であたたかい。

「魔導師様は、優しいよ」

 それはユイだけが知っている。

 翌日から毎日、ユイは屋敷の外での仕事を任されるようになった。徐々に暖かくなる季節とはいえ、まだ雪のちらつくことも多い。極寒の国なのだから当たり前だ。それでも、自分を外に追いやりたいらしい。それは子供の自分が考えても分かるような理由なのだ。

「ユイ、それが終わったら庭の掃除を」

 風が吹き荒れる庭を掃きながら、ユイは何度か心中でつぶやいた。

『魔導師様はそんなことしないのに』

 あんなに静かで優しい人は、他にはいない。それに、焼き菓子が食べたいって言ってたし、きっと一人きりでさみしいんだ。

 四日間、ユイはその仕打ちに耐えたが、五日目に寝込んだ。熱が出たのだ。

 そのときも、侍女たちはおざなりな扱いをした。今までよりもずっと、ユイをかまわなくなっていた。

 失敗から一週間後に、ユイは屋敷を抜け出した。

 夜中に焼き菓子を作って、持って行くことにしたのだ。ユイは幸い、何でもできる子供なのだ。そう躾けられて育っている。

 庭や林で集めた木の実をすりつぶして焼き菓子にした。

 よろこんでくれるといいな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ