第五十九話 再び来る「負の急降下」
*2人が望んでいた「祝福されて」の結婚は、2週間にわたり、双方の両親に挨拶に行き、
結婚を許してもらい、順調過ぎる位順調だった。直也の両親に挨拶を終えた2人は、アパートに戻り、今まで通りの生活を送りながら、優子の両親に挨拶に行く日が決ったら連絡寄越すからと直也の父から言われたので、連絡を待つ2人なのである。
ところが・・・・。直也の両親に挨拶してから、1ヶ月が過ぎ、2ヶ月が過ぎ、連絡が来ない。ある日、優子は直也にこう話しかける。
<優子>
・直ちゃん。挨拶に行ってから、もう2ヶ月になるよね?実家から連絡はまだ入らないの?
私達、結婚許してもらえたよね?
<直也>
・そうだな?もう2ヶ月だな!何で連絡こないのかな?忙しいのかな?
ちょっと変だよな?遅いよな?
<優子>
・何か問題でもあったのかな?直ちゃん電話してみたら?
体調でも悪かったら大変だし!
<直也>
・連絡してみるか?2人で暮てるのは内緒だから、ちょっと静にしてな!
受話器を持ち実家に電話する。呼び出し音が3回鳴ると、電話に出たのは・・・。
「もしもし」あっ?母さん?直也だよ。
<母さん>
・直也。何か用かい?
<直也>
・「何か用かい」?じゃないよ!挨拶に行ってからもう2ヶ月経つけど、いったい何かあったの?連絡全然来ないしさ!体調でも悪い?
<母さん>
・体調は、父さんも母さんも悪くないし、いたって健康だよ!優子さんの両親への挨拶の件な!ちょっと色々あって!まだ、予定立ってないのだよ。そろそろ直也には、電話しないといけないとは思ってはいたのだがね?
<直也>
・何?色々って?仕事でも忙しい?何なの?母さん!はっきり理由言ってくれないと、
優子にだって、説明しないといけないし、ご両親だって待っているのだと思うよ?
母さん何?理由?
<母さん>
・直也。父さんと色々相談したけど、優子さんとの結婚をもう少し考えてみたらどうだろう?
<直也>
・はあ?母さん!何?今更?って?父さんも同じ考えなの?この前、OKだしたよね?
それが何で?連絡来ないから、連絡したら、もう少し?考えろ?
ちゃんと考えたから、優子を連れて行っただろ!言われてる事が理解できない!
<母さん>
・父さんも同じ考えなのよ!父さんと母さんも直也の事を考えたから、中々連絡できずにいたのね。
<直也>
・父さんも同じ考え?なら!何で、この前言わないのだよ!反対の理由は?何?
母さんじゃ話にならない!ちょっと父さんに代わってくれよ?
<母さん>
・そんなにカリカリしないでさ、少しは冷静になりなさい。直也は気が短いのだから!
父さんまだ、帰ってきてないから、今度の週末実家に帰ってきて父さんに直接理由聞きなさい!父さんには、電話来たこと母さんが話しておくから!
<直也>
・分ったよ!週末帰ると、父さんに伝えておいて、じゃ~!受話器を置いて電話を切る!
*優子は、話の内容を脇で聞いていて、不安になるのである。
トントン拍子でここまで来ただけに、心の底で少しだけ懐いていた負の部分が、蘇ってくる。ここまでが、あまりにもスムーズに来ていたのかもしれない。
優子は、ある程度の事は、予測はしていたのである。平常心を保ちながら、直也に話しかけるのである。
<優子>
・直ちゃん?お母さん何て??反対の理由とか?聞いたようだけど、結婚反対って言われたの?
<直也>
・「すまん」「すまん」ついカリカリきてさ!あんまり気にしないで!優子は、何も心配する事はないから、俺に任せておきな!週末ちゃんと話してくるからさ!
<優子>
・でも・・・。ねぇ~?ご両親に結婚反対されたのでしょ?ねぇ~?はっきり言ってよ!
直ちゃん!直ちゃんってば!
<直也>
・優子は心配しないでいいから!俺と親の問題だから!優子はいいから、週末帰って親と話した結果をちゃんと報告するから!
<優子>
・私達結婚するのよね?それなのに何で?俺と親の問題なわけ?何で?私は、いいわけ?
そんなのあまりにも悲しすぎるよ。
<直也>
・「ごめん」ちょっと言い過ぎた。謝るよ。とにかく、週末帰ってちゃんと親と話してくるからさ!そしたら、報告するから!大丈夫だ!心配するな!
*直也は、優子の気持ちが痛いほど理解していた。両親の反対の理由は、背の小さい事なのだろうか?それが理由なら、なぜ紹介した時に、別な言い方があったはずだと思うのである。あくまでも反対の理由は、直也の憶測に過ぎなく、とにかく両親に週末に帰ってはっきり理由を聞こうと思う直也なのである。
<優子>
・直ちゃん!「ごめんね」きっと私が原因だよね?1つお願いだけど、絶対両親とは、喧嘩はしないで、冷静に話しをしてきてね!約束して頂戴!
<直也>
・ちゃんと冷静に話してくるから安心して!約束する!それとな!俺は、優子としか結婚しないから、どんな事があっても、俺を信じると約束してくれ!いいな?
<優子>
・直ちゃんが、約束してくれたから、私も約束する。どんな事があっても、直ちゃんを信じるから。
*優子のこの時の気持ちは、トントン拍子に来ていた分、直也のお母さんの電話の内容を聞き、どうしても自分のコンプレックスの事が再び頭を過るのである。冷静に考えれば考えるほど、結婚の反対理由は私。もし私が、直也の母の立場で、優子を紹介されたら、
きっと、息子の将来を考えたら、反対するだろうな?と直也の前では、絶対見せる事が出来ない心の奥底の悲痛な思いを隠すのが精一杯なのである。優子は、直也には絶対言えない、最悪のシナリオまでこの時点で考えていたのである。
そのシナリオとは、結婚を反対される理由が、私が原因でも、直也は、きっと両親を敵に回しても私を選択してくれるはず。そんな直也が好きだからこそ、あまりにも拗れるようであれば、その時は、自ら身を引こうとまで考えていたのである。
それが、愛する人への幸せの選択肢なのであれば・・・・。
<直也>
・優子「ごめんな」両親何を考えているのか?さっぱり?とにかく週末帰ってちゃんと話してくるからさ!
<優子>
・ご両親には、ご両親の考えがあるのでしょ?だから気にしないでいいからね?
くどいけど、冷静に話してきてよ!直ちゃん!
<直也>
・「うん」わかった。
*こうして、直也は週末に実家に帰る事になるのである。両親から優子との結婚の件を何と言われるのか?不安が無いと言ったら嘘になるが、どんな状況になっても、何を言われても、優子との結婚の意志は固い。両親からどんな話をされるのか?そんな事を思いながら、週末になるのであった。
2人の結婚の行方は?果たして・・・・。




