第五話 一本の電話
*連絡先を交換してからは、直也も優子も1度も電話をする事は無かった。
優子と2ヶ月ぶりに再会し、連絡先を交換してから間もなく1ヵ月半が過ぎようとした10月の中旬のある夜。直也が仕事から帰ってきて、食事を済ませると約束した時間にワンコールの電話が鳴る。直也は優子からの電話と気付いて、すぐ優子に電話をかけた。
*その1本の電話から、新たな展開の予感。
<直也>
・受話器を上げダイヤルを回し2回呼出コールすると。
<優子>
・「もしもし直也くん」?「こんばんは。優子です」と電話にでる。
直也は、優子の声を聞いて、何かあったのだと直感する。
<直也>
・お久しぶり。変わりない?元気?
<優子>
・ ・・・。何とか元気だよ。(5秒くらい間が空く)
直也くんは?
<直也>
・俺も何とか元気だよ。優子さん何かあったの?
<優子>
・ちょっと相談があるんだ。いいかな?
<直也>
・いいよ。彼との事?
<優子>
・うん。1ヶ月半前直也君と会った時に彼との状況話したでしょ?覚えてる?
<直也>
・うん。覚えているよ。指輪貰ったんだよね?
<優子>
・あれから全然進展がなくて悩んでいるんだ。
<直也>
・え?あれから進展ないの?確か5月にあった時は、秋くらいには?って言ってたのを覚えているけど?何で進展しないの?
<優子>
・ん~~。指輪貰って、プロボーズされたから、いつ私の両親に挨拶に行きたいからの言葉も彼から相談される事もなく。彼の両親への挨拶もいつ連れて行くという事もないしね。何か分からなくなってきた。彼が何を考えているのかが?
<直也>
・そうなんだね。全然進展ないんだ~。彼に聞いてみたら?
<優子>
・指輪貰ってから、挨拶はいつ頃?って2回は聞いたよ。
<直也>
・彼その時何って言ってたの?
<優子>
・仕事の予定調整して都合の良い日、近いうちに優子に話すから、両親と相談して欲しいと言われたんだ。
<直也>
・ん?ちょっと?それって違うんじゃない?普通はさ、優子さんのご両親の都合聞いて彼が合わせるのが普通だと俺は思うけど?
<優子>
・だよね?おかしいよね?何で彼の都合に、私の両親合わせないといけないの?
<直也>
・彼にその事言ったほうが良いのではないですか?
<優子>
ん~。最後聞いてから、1ヶ月は過ぎているから、きっと仕事の調整がつかないのは、言い訳だし。何で彼の都合に、両親合わせないといけないなんて言ったら、絶対怒られる。それに職人気質だから、難しいんだ。1回言ったら曲げないし。
<直也>
・いくら忙しくても、1ヶ月は空きすぎだよね?怒られるって?
一般常識的に、お嫁に貰う側が挨拶に行く場合、相手のご両親に合わせる事が、礼儀だと俺は思うけどね。1回言ったら曲げない?難しい彼なのね?
<優子>
・そうなの。難しい人なんだ。そこで、直也君にお願いがあるんだけど・・・。いいかな?彼に私が挨拶の事で悩んでいる事を話しては貰えない?
<直也>
・え?俺が?優子さんの変わりに聞いてもお節介なだけで、逆に優子さんの立場が悪くなるのでは?俺が彼なら、何で自分から聞いてこないと怒ると思うけど・・・。
<優子>
・それでもいいの。直也君には迷惑かける事は、充分承知しているけど、私自身どうしていいのか?分からなくなってきたから。直也君頼まれてくれないかな~?
<直也>
・少しだけ時間ください。今日と同じ時間に明日電話で返事でもいいですか?
<優子>
・いいよ。明日返事待っているから。
<直也>
・優子さん今度は、晴美との事少し話しても良いですか?
<優子>
・いいよ。どうしたの?
<直也>
・俺ね。来週晴美に、別れを告げようと思います。
<優子>
・え?え?何で?晴美と別れるの?
<直也>
・しばらく、晴美と距離おいてたじゃないですか?ちょうど半月前の事なんですが、晴美から、「仕事忙しいのは分かるけど、全然会ってくれないから面白くない」と怒った口調で電話来てさ~。最初は無視しようと思ったけど、思うようにいくまで、何度も電話来るから。仕方なく会う約束して、ドライブに海まで行ったんだ。
その時も約束の時間には、遅刻してくるし、話す事と言えば、俺が会ってくれない事が、面白くないと海につくまでずーつと言われていたんだ。
俺もさすがに、晴美との事は限界に来ていて、距離をおいた訳だから、海について、車を駐車場において、2人で誰もいない砂浜を歩いて、ちょっと立ち止まり自分の気持ちを晴美に伝えたんだ。
<優子>
・晴美に何て言ったの?
<直也>
・ストレートに晴美に別れようと伝えた。そしたら、理由は何?と聞かれて、もう。
晴美と付合うの疲れた。だから別れようって。そしたら、晴美は、「直也とは絶対別れない」って言って大声で泣き始めてさ。いくら泣いても俺の気持ち変わらないからと言ったけど。いくら話しても別れないと一点張りだったから、先に車戻っているから、すぐ来いよと晴美に伝えて、歩き始めたら、晴美が「直也と別れるくらいならこの海で死ぐから」と言われ、俺は勝手にしろと言って1人で車に戻ったんだ。
<優子>
・晴美がそんな事を言ったんだ?
<直也>
・そしたら、車で待つこと5分。晴美が全然戻って来なくて、心配になって、砂浜に行くと晴美の姿はなくてさ。まさかと?海の方を見ると晴美が服を着たまま、沖の方へ。その時海水は、晴美の胸の高さまできていた。びっくりして、必死に晴美を助けに泳いで砂浜まで連れ戻したんだ。
<優子>
・え~?晴美そんな事したの?直也君の事、本気で好きなんだよ?
<直也>
・俺の中では、もう終っていて、晴美の今回の行動で余計に俺の気持ちが固まったんだ。別れるなら死ぐとかあり得ないし・・・。
<優子>
・晴美別れる事納得したの?
<直也>
・その時は、2人とも海に入ってずぶ濡れだったから、晴美には、今日の事は、もう一度、ちゃんと会って話そうと約束したんだ。その約束が来週なんだ。俺の気持ちは変わらないから、別れるけどね。ただ、優子さんにお願いが1つあります。俺との事で晴美から連絡いっても、2人で相談して解決しなとだけ、伝えて欲しいんだ。
<優子>
・分かった。晴美から連絡きたらそう伝えるね。
<直也>
・お願いします。
優子さん時間も遅いから、明日また電話します。おやすみなさい。
<優子>
・明日連絡待っているね。おやすみなさい。
*優子の悩みを相談されて、直也はそれを引き受けるのか?
直也も晴美との別れを優子に伝え、今後この2人の道は開けていくのだろうか?




