第三十八話 説得
*直也から解決策を聞いた優子は、直也と寄りを戻す為には、1人暮らしをする選択肢しかないと思うのである。しかし、優子に立ちはだかる壁は大きく、厳しい両親をどう説得するか?それと、仕事の問題もある。当然アパートを借りたとして、そこから仕事に行く通勤距離や時間、それと直也と会う為には、交通の便なども考えないといけない。
沢山問題はあるが、でも優子は絶対に諦めないと心に決めていた。
直也も解決策を優子に伝えてから、落ち着かなかった。どんな結果でも絶対に優子を傷付けてはいけないと考えた直也だが、優子には1人暮らしは絶対無理だろうと思う。その時は、きちんとけじめをつけて、「さよなら」を言おうと思っていた。
直也がアパートを借りる理由には、こんな気持ちがある。恋愛関係で色んな事がありすぎたから何かを変えたかったし、家にいると自由がないし、そんな状況から解放されたかったのも事実。それに長男だからいつかは、家に戻らなければいけないのも事実である。現代とは違い、長男は家を継ぐと言うのは、昭和の時代から、暗黙の了解といわんばかりに、世間的には当たり前になっていたのである。直也の家族は、父は公務員。お役所仕事で口数が少なく昔ながらの頑固親父。母は、ちょっと名の知れた高校でハンドボールの選手で、学生時代から立て社会で揉まれただけあって、何かと口うるさい母。当然こんな両親だから、直也がアパートを借りると言った時の両親からの言葉は相当きつい言葉を餞別がわりに頂いた。そんな嫌な思いをしながらも、直也は、優子の返事を待ちながらも、アパート探しに専念するのである。
解決策を話されてから優子は、まず両親への説得を考えるのである。段取りがいい優子は、両親の説得方法を模索しながらも、会社帰りに不動産屋でアパートの空き物件を探し始めていた。優子には3歳年下の弟(晃)がいて、姉の頼みは協力してくれる仲のよい姉と弟(晃)なのである。優子は、弟(晃)にアパートの件を相談することにした。
直也と会ってから1週間が過ぎようとしたある日の夜、優子は、晃に相談を持ちかけるのである。優子が晃の部屋に行く。優子は、晃の事をアキちゃんと呼んでいた。アキちゃんちょっと、相談したいことあるのね・・・。いいかな?
姉ちゃん?何?相談って?男でも出来た?そんなわけないでしょ?アキちゃん、私ね。家出て1人暮らししようと思っているのね。それで父ちゃんと母ちゃんを説得する手伝いをアキちゃんにして欲しいのね?いいかな?
姉ちゃんの頼みなら、俺協力するのはいいけど、御礼は期待するよ!ところで、何でまた?急に1人暮らしを?何か理由あるの?失恋でもしたか?(笑)
バカ!失恋?姉ちゃんは、失恋させる事あっても失恋する事はないよ(笑)
で?本当の理由は?まあ~いいか?とにかく協力すればいいのね?
俺は何をすればいいの?アキちゃんは、とりあえず、母ちゃんに何気なく姉ちゃん1人暮したいような事を言ってたと話し、どんな言葉が返ってくるかを聞いた上で、反対ならアキちゃんが応援してほしいの。姉ちゃん成功した暁には、たっぷり御礼して貰うからね?(笑)成功報酬は高いよ!姉ちゃん!
ちゃんと1人暮し出来たら、お礼するからお願いね!アキちゃん。分かったよ。姉ちゃん。任せろ!ほんじゃ~。明日休みだから、姉ちゃんが仕事に行っている間に、母ちゃんにチラッと話してみるよ。その結果は明日夜話するからさ!
アキちゃん「お願いね」と言って、自分の部屋に戻る優子なのである。
晃は翌日、優子に頼まれた事を母に話をする。1人暮しをしたいらしいと晃が話すと、母は、こう話す。
優子は、人様より背が小さいから、父ちゃんも母ちゃんも自分達のそばにおいておきたいから、この家を出る事は、許さないと話される。晃は、姉ちゃんだっていつか、嫁に行くのだし1人暮しでもさせて、花嫁修業でもさせるといいのでは?と話すと母は、優子が嫁に?それはないでしょ?あり得ないよ!
えっ?母ちゃんは、姉ちゃんが嫁に行かないほうがいいの?
そんな訳ないだろうが?どこの世の中で、自分の子供が幸せな結婚を望まない親がいるものか?優子にだって幸せになって欲しいよ!でも晃、優子は、人様より小さいだろ?
だから苦労させたくないのだよ。現実はそんなに甘くないよ。母ちゃんがもっと大きく産んでいてさえいたら良かったけど。優子には申し訳なく思っているのよ。それが本音かな!
けどさ!母ちゃん!それって親としての考えだろ!姉ちゃんの気持ちはどうなるの?
俺はさ、姉ちゃんが母ちゃんの気持ちが分かっているから、合えて俺に1人暮しの相談してきたのだと思うよ。それに背が小さい事は、姉ちゃんが1番理解しているし、母ちゃんがその事で、苦しんで居る事は、姉ちゃん知っているよ。姉ちゃんに厳しく躾してきたのだって、人様と同じように愛情を注いできたからでしょ?それがいつかお嫁に行ったときに役に立つからと考えての事でしょ?
晃!あんた!分かったような口きいてさ!でも、親というのは、自分の事より子供の事をちゃんと考てるのさ。晃、優子は、何で1人暮ししたいの?理由わかる?
姉ちゃんの理由?ん~?聞いたけど、理由は教えてくれなかったよ!姉ちゃんきっと、自立したい歳なのよ!それにさ、俺に嫁さんが来たら、姉ちゃん小姑になるわけだしさ!
そうなってからだと、かっこ悪いから、その前に1人暮ししたいと考えたんじゃないの?
晃に?嫁さん?まあ~その方が、限りなく無いに等しいんじゃないの!晃に嫁さんが来たら、母ちゃん腰ぬかすかも(笑)
ひどい言い方だな~。母ちゃん(笑)それより、俺の嫁さんになってくれる人がいたら、母ちゃんのようなスーパー姑だと苦労しそうだわ(笑)
スーパー姑?まずそんなパートナー連れ来てみなさいよ!晃!そんで、優子は、本当に
家出て、1人暮らし本気なのかい?
つうか?母ちゃん頼むわ、姉ちゃんの1人暮し応援してあげてほしい?姉ちゃんの性格わかるよな?だから、父ちゃんも説得して欲しいのよ!
ね?母ちゃん頼むよ!
晃!優子に頼まれたのか?とそう言いながらも、いつかは優子なら1人暮ししたいと言ってくるのではないかと、母は覚悟していたのである。優子は、自分の意志を貫く性格なのは、誰よりも知っていた母なのである。ついにその時が来たのかと感じるのである。
背が小さいからこそ、人一倍愛情を注ぎ、厳しく優子を育ててきたからこそ、優子なら大丈夫と母は心の中で思うのである。
晃!優子に言っておきな!父ちゃんには、母ちゃんが上手く話しておくからと!
父ちゃんからOKでたら、母ちゃんが優子に伝えるからと話しておきな!
おっ?母ちゃん!いつもに無く、話分かるじゃ!父ちゃんの説得頼むよ!何かいつもより、かなり頼もしい母ちゃんや!さすが母ちゃんや!
こら晃?母ちゃんを煽てるじゃないよ!とにかく母ちゃんに任せておきな!
そう言うと買い物に行くと出掛ける母なのである。
晃は、夕方優子が、仕事から帰ると母ちゃんに話した事を説明するため優子の部屋へと行く。部屋のドアをノックする晃。「姉ちゃん、入るぞ」と言ってドアを開ける。
今日母ちゃんに、1人暮しの件を話したぞ。そんで、結論から言うと母ちゃんが父ちゃんを説得してくれるって。とりあえず、第1喚問突破だよ!
母ちゃんが説得してくれるって?アキちゃん!「ありがとう」姉ちゃん凄く嬉しいよ!
きっと反対されると思っていたからさ!どんな手を使って、説得してくれたの?
姉ちゃん!俺を甘く見てたな(笑)方法は、企業秘密だから、教えないよ(笑)
それより、母ちゃんが父ちゃんを説得できるかが心配だよ!父ちゃんの方が一筋縄では、いかないかもしれんね。後は、母ちゃんに任せて、報告を待つしかないと思うよ。
分かった。母ちゃんからの報告を待つとするよ。アキちゃんまた何かあったら応援して頂戴。お願いね。
「うん」分かった。また俺で出来る事あったら、応援するからさ。遠慮なく言ってくれ。
俺部屋に、戻るから!ほんじゃ。またな!そう話して、晃は優子の部屋を出て自分の部屋に戻る。
優子は、晃の力を借りて母ちゃんに伺いを立て、まさか母ちゃんが父ちゃんを説得してくれる展開になるとは、思ってもいなかった。むしろ、母ちゃんに、反対される事を覚悟していたのである。それだけに、1人暮しを母ちゃんが応援してくれる真意はどこにあるのか、多少不安はあったが、父ちゃんを説得してくれる事だけ今は考えようと思う優子なのである。
晃が母ちゃんに1人暮しの話をしてから、5日が過ぎようとしていた。この5日間は、食事で食卓を囲んでも、父ちゃんも母ちゃんも1人暮しの件は、話題にも出ず、何も無かったかのように普段の生活をしているのである。
そんな6日目の夕方、優子が仕事から帰り、部屋に入るとテーブルの上にメモ書きが置いてあった。それは父からのメモ書きだった。そこに書いてあったのは、手紙には、
こう書いてあった。「明日の夕方父ちゃんの散歩に付き合え」父よりと書いてあった。
優子は、父からの手紙を見て、え?散歩?急に?今までそんな誘いなど1度もなかったのに、ちょっとドキドキしながら、翌日の夕方になるのである。
さて、優子の父の散歩に誘ったことに、何か意味はあるのだろうか?もし意味があるのであれば、1人暮しの事だろうと優子は思うのである。
父からどんな話が出てくるのだろうか???きっと叱られるのだろう??そんな事を思いながら、父からの誘いを部屋で待つ優子なのである。




