第三十六話 自分の気持ちと解決策、
考え事をしながら、運転して海に来てしまった直也は、月灯りに照らされた海を見ながら、今後の事を考えるのである。いつも悩んで苦しい時は海を見ながら考えると気持ちが落ち着いて、自分を見つめ直す事が出来るのである。ここで進むべき方向性の答えを見出さないといけないと思う直也なのである。海を見ているとなぜか、素直になれる直也がいるのである。
もう一度、自分自身を見直す為には、今の正直な自分の気持ちと向き合おうと考える。直也は自分に問いかける事にしたのである。
・優子に対しての自分の気持ちは、どう?なのか?
答えは・・・ここまで自分を思ってくれる女性はいないし、優子の事は、嫌いではない。
・優子とやり直す選択肢は本当にないのか?ないとすればなぜか?
答えは・・・現時点ではない。過去に優子を傷付けた事は消えないし、それに、やり直したとしても、休みも合わないしデートも出来ない。そしたらまた同じ事の繰り返しで、上手くいく自信がない。自分の性格は自分が良く知っているだけに、時間や休みのすれ違いは、耐えられないのが事実。
*自分の事をここまで、思ってくれる女性はいない。この先の人生でも今後も現れないのではないかと思うくらい、優子の気持ちが伝わってくる。本音は、やり直せたらと思うのも事実である。自分がしてきた事を棚にあげて言えた義理ではないけど・・・・。
自分の性格からして、このままで戻ったら、絶対同じ事の繰り返しになるのは、目に見えている。けど、何かを変える選択肢など考えられるはずがない。結局、答えは、出ない。直也は、海を見ながら優子とは、素直に「戻りたい」それが素直な気持ちだ。自分が優子を裏切り傷付け、元カノ(菜々)に裏切られた事で今度は自分自身が傷いた。逆な立場になった時に大事な事に気付くこともある。逆な立場の経験をしたからこそ、今優子が、こんな自分でも戻ってきて欲しいと言ってくれる事に、素直に嬉しいと思う気持ちと、そこまで思ってくれていた人を裏切った自分が許せない直也なのである。
一言「戻る」と言えば言いだけだが、今まで優子を傷付けて来たことを思えば、あまりにも虫のいい話だ。考えれば考えるほど、優子に戻る事は出来ないと思う直也なのである。時間が経過するのは早いもので、東の空が明るくなってきたのである。
夜が明けそうな海は、自分の気持ちとは反対に穏やかな波が打ち寄せ、まるで冷静に考えろと問いかけられているような錯覚さえ覚えるほど、静かな海であった。
今日の所は、「帰ろう」仕事だし、自分に言い聞かせた直也だったが、ここで結論を出さないと、またずるずる時間だけが経過するだけだと思い、このまま考えることにした。
海を見ながら考えること8時間。時間を忘れて考え込んでいると、ポケベルが鳴った。
「あっ?まずい!」会社からだ!連絡するため、公衆電話を探した。海の近くに小さな駄菓子屋がありその前に、公衆電話があった。ポケットから10円をとり、ダイアルを回し会社に電話した。上司には、体調不良と嘘を付いて休みを貰う。
直也は、初めてずる休みをするのである。また海に戻り考え込む直也なのである。
中々答えが出ず、悩んでいた直也は、考え方を変えようと思うのである。自分の世界に入るとどうしても活路が見出せない!それなら、どうする?寄りを戻すにしても、このままお互いに別な道を選択するにしても優子が傷つかない方法を考えよう。そうすれば、自ずと答えが出るのではないかと!
1番の問題は何だ?優子は、俺と寄りを戻したい。直也も出来るなら優子と戻りたいけど、現状では、休みも合わず、デートも出来ないすれ違い、そんなの耐える事は難しい。このまま戻ればまた別れる事になる。これを解決するためにはと直也は真剣に考えた。
直也は、最善かどうか分からないが、ある決断をする事にした。当然優子には大きく関わるのである。どう転んでも優子をこれ以上傷付けることだけは避けたいと考え抜いた決断であった。時計を見ると針がお昼を指そうとしていた。
やっと決断出来た事で、ホットするとともに、お腹がすいたので、さっきの駄菓子屋まで戻って、パンを買って食べた。
直也は、優子に早めに考えた事を伝えようと思うのである。夜優子に連絡するとしても、1度帰って睡眠をとらないといけないと眠い目を擦りながら、自宅へと戻り、睡眠をとる直也なのである。よほど疲れていたのか、直也は、夜22時まで1度も起きる事無く熟睡していたのである。無意識に目覚ましをセットしていたのであろう。目覚ましのアラームで起こされたのである。23時まで後1時間あると思い、直也はシャワーだけ浴びてくるのであった。いつもになくなぜか、気持ちがすっきりしている直也なのである。23時になり、いつも通受話器をあげ、ワンコールして、電話を切る。
昨日の今日で、優子が電話くれるかは不安だったが、折り返しすぐ電話がなった。
直也は電話をとる。
<直也>
・もしもし。優子?
<優子>
・こんばんは。直ちゃん。昨日は、送ってくれてありがとう。体調大丈夫?寝不足で今日仕事大変だったでしょ?
(直也の身体を心配する優しい優子である。)
<直也>
・俺は大丈夫だよ!優子こそ、体調大丈夫か?それとご両親に遅く帰って叱られなかったか?
(会社を休んだとは言えずにいた。それと直也も優子を心配するのである)
<優子>
・私も大丈夫。両親には気付かれなかったから大丈夫だよ!ところで、直ちゃん昨日の今日なのに、もしかしてもう?解決策考えてくれたの?
(いくら何でも早すぎると思う優子なのである)
<直也>
・そうか~。ご両親には気付かれなかったのね。良かった。今日電話したのは、昨日の解決策だけどさ。考えがまとまったから、話したいけど、いいかな? 話は、電話じゃダメか?
<優子>
・え?直ちゃんもう解決策考えてくれたの?「ありがとう」電話で?ダメに決まっているでしょ?会って話す約束でしょ?
(正直、直也がこんなに早く解決策考えて連絡寄越すとは思いもよらなかったのである)
<直也>
・やっぱり。電話じゃダメか?分かったよ。会って話すよ!いつならいい?
(ならば優子の顔を見ないで話したかったのである)
<優子>
・じゃ~。1週間後の金曜の夜に、いつもの駅の待合室に19時でどう?
今度は泊まる準備して行くからいい?
(優子は反応を見たく、わざとそんな話をする)
<直也>
・来週金曜の夜、19時に駅待合室だな?OKだよ。何?泊まる準備?
そんな事はダメだ!俺がまた自宅まで送るから。
(反応を見られているとも知らず、真面目に答える直也)
<優子>
・宿泊出来ないの?残念。真面目に答えられただけに、どんな解決策?だろうと!不安さえ思う優子なのである。
<直也>
・とにかく来週会った時に話すからさ。今日は休もう。いいだろ?
<優子>
・うん。直ちゃん来週ね。おやすみなさい。またね。
<直也>
・おやすみ。またな。
*来週の金曜日に会う約束をした直也は、解決策を話、どっちに転んでも、優子の事は絶対に傷付けないようにすると心に決めるのである。
直也が考えた解決策とは、いったいどんな解決策? 本当に優子を傷付けないような解決策なのか? 果たしてこの2人の運命は?いかに?




