第三十四話 待ち伏せ
第2ステージは、直也は菜々に裏切られ2人の恋愛は消滅。そして正直に現実を話し 優子との事もけじめをつけようと考える直也。優子は、直也の話を聞いて、どんなリアクションをとるのだろうか?
*直也は、菜々に裏切られその現実を目の当たりにしたことで、精神的にショックを受けたと同時に、自分が今まで優子にしてきた事の天罰が下ったのだと思う。
自分が被害者という表現が正しいかは分からないが、自分が当事者になり、同じ経験をしないと、本当の相手の心の痛みは分からないのだと現実を改めて感じる直也なのである。自分が裏切った時は、当然自分の事だけしか見えていない。自分の気持ちだけを優先し優子の気持ちなど考えもしていなかった。自分が今逆の立場で裏切られたことにより、自分が裏切った時の優子の気持ちが今更だけど、要約分かった気がする。
今この現実は、直也(自分)への当然の報いだと現実を受け入れていくしかないと思いながら、優子への報告と同時に、きちんと謝罪して優子との事もけじめをつけようと心に決める直也なのである。
現実を目の当たりにしてから、1週間が過ぎようとしていた。直也は、仕事をこなしながらも菜々との別れのショックは簡単には消えずにいた。自宅に帰っても宴会場で2人ベタベタしていたあの時の嫌な光景が目に焼きついて、やりきれない思いで、中々寝付けない日々が続いていたのである。
そんな時、いつもの23時に、ワンコールで電話が切れた。直也は、優子からだと確信する。だが、自分の精神状態から、優子と話をする状況ではなかった。自分も同じような裏切りをしておきながら、言えた義理ではないが、1週間やそこらでは、とても時間が足りなく気持ちの整理を付けるなんて事は難しく、優子と話せる状況ではないため、あえて居留守を使い折り返しの電話もしなかった。誰からみても、それは直也の勝手である。自分の身勝手さにも嫌気がさすのである。頭では分かっていても気持ちが動かない。
全て自分が悪い癖にことごとく、自分が嫌になる直也なのである。そんな事を思いながらも、電話は、翌日も翌々日も23時にワンコールで電話が切れた。優子からである事は分かっていたが、3日も連続で出なければ、諦めてくれるだろうと直也は考えていた。
3日続いた電話もその翌日からピタッと1週間は電話が鳴ることはなかった。直也は、裏切られたショックから立ち直る事は出来ないまま時は過ぎ、会議から半月が過ぎた土曜日の夕方に優子がある行動をとるのである。
優子は、電話をかけても出てくれず、もう会いに行くしかないと考えていた。優子は、行動力があるだけではなく、無駄な事は極力しないように計画的に行動する。色んな事をいろんな角度から考えて事前準備を怠らないのが優子である。
優子のとった行動とは、直也に直接会って話すという事である。もちろんどんな結果でも諦めない気持ちは少しもぶれてはいないのである。
優子の立場で考えてみたら、賛否は色々だと思う。
人それぞれの考えがあり、1度裏切った男に未練タラタラで、追いかけるより、私だったら、そんな男綺麗さっぱり忘れて新しい出逢いを探して、彼以上の人を見つけて幸せになると考える人。
優子のように、裏切られた現実を目の当たりにしても、自分の気持ちと向き合い相手の彼女に会いに行き、どんな人なのか、自分の目で確かめ対決し、相手の気持ちを確かめる勇気と行動力。自分が傷つく事を恐れず結果がどうであれ、自分の気持ちに正直に納得する答えを求めて動く人。
世の人は、どう考えるだろうか?自分が第3者なら、仮に相談されたとして、所詮他人事だから、面白可笑しく自分の思いつきで同情したふりをして答える人、真剣には相談には乗るけれど、所詮他人事だからと考える人。巻き込まれると面倒だから、とりあえず話しだけ聞く人。いろんなタイプがいるはずである。
では、もし自分が当事者だったら?どう考える?人を好きになるのに理由はないよな?
誰に何と言われても、自分の気持ちに正直に生きる。その道が正しいのか?間違っているのか?そんなのは、誰にも分からないのだと思う。自分が選んだ道ならば、結果はどうであれ、それが正しい道なのではないだろうか?そう考えることはおかしいだろうか?人それぞれ性格は違う。今回のこの恋愛の裏切りに当てはめてみると、優子のとった行動にも賛否は沢山あるだろう。しかしながら、大事なのは、自分の正直な気持ちではないのか?他の人の意見に考えがぶれるようでは、そこに本当の愛はないと考える。答えは自分で見つけていくしかないのではないだろうか?
優子のような裏切りにあった事のある人なら?どんな選択肢をしたのだろう?
未だこのような経験をしたことがない人なら、どんな選択肢をするのだろう?
常に強い意志を持つ人でも色々考え壁にぶつかるだろう。
自分が可愛いからこそ、結果を恐れず立ち向かう勇気が必要なのではないかと思う。
自ら壁を乗り越え時に見える光景は、自分にしか分からない。優子はどんな光景を思い浮かべているのだろうか?後悔の無い選択肢などあるのだろうか?だからこそ、自分の気持ちに向き合い傷つく事を恐れず自分の気持ちに正直に進む。これが誰が何と言うおうと正しい選択肢だと思う。
優子の直也に対する気持ちは、1度別れた時より、彼女(菜々)と直接会った事により、余計気持ちは、強くなっていたのである。優子は、なぜ直也が夜電話をかけて寄越さないのか気になって仕方がなかった。絶対彼女と何かあったと?思いつつ、それが元さやに戻った?と悪い方にも考える。でも元さやに戻ったのなら、私と早くけりをつけたいと彼(直也)ならそう思い電話にはでるはずだし、結局いくら考えても優子は、不安しかなかった。悩んでいても何も解決はしないので直接会って結果を聞く行動にでる。優子は直也の働く店舗の近くで待ち伏せする事にしたのである。
会議から半月が過ぎた土曜日の夕方、直也が働く店舗の近くまで行って待ち伏せすることにした。その日に直也が出勤かどうかは、優子にも分からず、もう賭けでしかなかった。
店舗近くまで行くが、遠くからでは直也が仕事かどうかは分からない。時計の針は、16時半をさしていた。
優子は考えた。そうだ、社員駐車場を探そうと考える。店舗の近くに必ずあるはずだから、そこに直也の車があれば、仕事している事が分かるのである。ただ闇雲に探してもそもそも場所を特定する事などいくら時間があっても足りない。どうすればいい?どうすれば?店舗に行って聞くわけにもいかないし、「どうしよう」と考える。
とりあえず、店舗の従業員専用の出入り口を探そう!そうすれば、間もなく17時だから、だれか従業員が出てくれば、その後をつければ、駐車場にたどり着くはずと考える。
しかし、必ずしも車通勤とは限らないが、でもそんな事言っても時間がないから、従業員の出入り口を探した。店舗の裏に回ると、肉眼で確認が出来た。その時の時間は、17時5分前だった。優子は、出入口が肉眼で確認できる所に、電話ボックスを見つけ、その中で、出入口を監視する事にした。17時10分を時計がさした時に、出入口から、女性が出てきた。優子はすぐに電話ボックスを出て、女性の後を追った。駅の方向とは逆の方向に歩く女性。確信はなかったが、とにかく駐車場に行って欲しいと願いながら、後をつけること5分、駐車場らしき場所に入っていった。優子は入口の看板に社員駐車場と確認した。その女性がエンジンをかけ駐車場を後にした。優子はすぐに直也の車を確認するため、駐車場内を探す。すると15台駐車していた車の1番置くに直也の車が止まっていたのである。仕事していると確信する優子である。
ここで、ずっと待っているのには、場所が悪すぎるし、街頭も何もないこの場所で待つのには、さすがにリスクがありすぎると考えた優子は、バックの中からB5くらいの1枚の紙とペンをとり、あることを書き始める。その内容とは、短文で、「駅のいつもの場所で来てくれるまでずっと待つ」優子より、こう書くと、2つ折りにして運転席のワイパーに挟み込んで、駐車場を後にして、駅へと向かった。
駅に向いながら、直也が手紙を見てくれる事を願う優子なのである。
そんな事を考えながら、駅には、18時頃着いて、駅待合室で直也がくるのを待つ優子なのである。直也は、その日、出張で帰社予定は20時だった。直也は、社用車で出張から帰ったのは、20時30分だった。直也は、書類整理をした後、21時過ぎに、会社を出て、駐車場にむかった。駐車場で車のエンジンをかけライトをつけて出発しようとした時にワイパーに何か挟まっていることに気付き車をおりて、その紙を車のライトに照らして見る。ん?優子?駅で待つ?突然何で?直也は、驚く。思いもよらない優子の手紙に動揺する直也だが、今更優子に何を話せばいいのか分からないし、優子には悪いが、俺はいかないと手紙をポケットにいれ家に帰ることにして、車を走らせた。
20分くらい走ると赤信号で停車。時計を見ると間もなく22時。そういえば、終電もうないなとふと思うが、勝手に来て勝手に待っているのだから、俺関係ないよな?
ん?でも?俺が優子からの電話を無視したからか?そんな事を考えていると、青に変わったのもボーットして見落として、後続車からクラクションをならされる始末。
とりあえず、車を自宅方向に走らせたものの、気にはなるし、いつかはけじめつけないといけないし、逃げてはダメだと考え途中でUターンして、駅へとむかった。
直也は、運転しながら多分優子は、待っているよなと思いながら、突然だから、何の準備もしていないが、きちんとけじめをつけようと思いながら、駅へと急いだ。
駅について、車を駐車場に入れた。時計を見ると、22時50分をさしていた。直也は、駅の待合室へと急いだ。待合室に着くと、窓際から外をみる1人の女性がいた。優子だった。後姿はどこか寂しそうに思う直也なのである。近くに行き、声をかける直也。
「優子?どうした?急に?」
優子は振りむいた。あっ?直ちゃん来てくれたのね?ありがとう「直ちゃん勝手な事してごめんなさい」
駅の放送で、最終が行ったので、23時に駅を閉めるアナウスがされた。
とりあえず、駅が閉まるようだから、外に出て、俺の車で話そうか?
優子は、「うん」と頷いて、2人で駅を出て、車へとむかう2人である。
車に迎いながら、直也は、優子がなぜ会いに来たのかは、聞かなくても分かっていた。
けじめをつけようと考えながら、歩く直也なのである。
車についた2人は、優子を助手席に乗せ直也は、口を開き、優子が今日会いにきた理由は、この前の件だよな?と問いかける。「うん」と頷く優子である。
さて、直也はけじめをつけることが出来るのか?優子は、直也を諦めることが出来るのか?この2人いったいどうなる?




