第三十三話 「目を疑う事実と裏切り」
菜々の心にある程度の整理がついたら結果を連絡すると言われてから、月日ばかりが経過し、1ヶ月が過ぎ、2ヶ月が過ぎ、3ヶ月が過ぎた。
「いったい整理にどれくらい時間がかかるんだ?」
俺はやきもきする気持ちをひたすら抑えながら、菜々からの連絡を待っていた。
現代とは違い、携帯もなく、当然メールもない。直接の連絡手段は電話くらいしかなかった。
菜々から3ヶ月も連絡がないまま、4ヶ月目に入りそうな時に、会社のFAXに職員全員の全体会議を1泊で執り行うとの通達がきた。
直也はその案内を見て、菜々も当然会議に参加するから、その時にチャンスがあれば、結果を聞こうと考えていた。
その会議で直也は、とんでもない事実を目の当たりにするともしらずに――――。
その頃、優子は10日に1回くらいのペースでまめに直也に電話していた。
もちろん、菜々からの連絡がない事はその都度、報告していた。
「彼女から連絡があった?」
「いや……まだなくて……」
「そうなんだ……(彼女と自然消滅でもしてくれたらいいのに)」
だが、俺は1泊で会議があることを話し、そこで整理できたかどうかを確認してくると優子に宣言した。
さすがにもう3ヶ月だから結果はでているはずだ。
それにこのままずるずると優子との関係を続けるわけにはいかないし、菜々ともちゃんとけじめをつけないといけない。
そんな事を思いながら、会議の当日を迎えることになった。
会議は、全体会議でもあり、社員60名と本社幹部10名の計70名参加であった。
直也は会議会場に入ると、全体を見渡し菜々を探した。
すると前の方に、菜々がいたのを確認した。
全体会議は10時開始で、昼食を挟んで17時までの長い会議だった。
当然、会議中は、菜々と接触することは出来ず、直也は会議後の懇親会の席でチャンスを見つけて話そうと考えていた。
しかし、直也は、その懇親会でとんでもない菜々の態度に、目を疑う。
懇親会が始まり20分が過ぎた頃、周囲はお酒も結構入り盛り上がってきていた。直也は、そろそろ菜々を探して何気なく接触して、聞き出そうと菜々を探していた。
だが――――。
直也の目に飛び込んできたのは、目を疑う光景だった。その光景とは、菜々が酔った男性職員とベタベタしていたのが目に入ってきた。誰から見ても職員同士には見えず、完全に男女の関係にしか見えないくらいベタベタしていた。直也は菜々の脇にいる男性が、誰か!後姿だけでは、分からないため、近くまで行って確認しようと少し酔ったせいか、足がもたつきながらも、菜々の近くに歩き始めた時、同期入社の男性社員(森)に呼び止められた。
<森>
・おっ?直也!お疲れ!一緒に飲むぞ!座れよ!と浴衣の袖を引っ張られる。
<直也>
・お疲れ!森!飲む前にちょっと待ってくれよ!あっちに用事あるからさ!菜々達の方を指差す!
<森>
・あ~?あいつらのとこいくん? やめとき直也! あいつら付きおうとるから!
お前行ってもお邪魔や!
<直也>
・何?あいつら付きおうとる?ほんとかよ?いつから付きおうとる?それにあの男性職員だれだよ?
<森>
・あいつら!付きおうとるよ!有名や!お前しらなかった?あの男性職員菜々の店舗 の野村主任やで!主任結婚しとるのにあいつら付きおうとる!世の中一般に言う「不倫」やな!まあ俺が知ったことではないけどな!ようやる!
しかし恥じらいも人の目も関係なく、よくベタベタできるもんや!
俺には関係ないけどな(笑)ところで直也は、あいつらに何か用事あるのか?
<直也>
・何?付きおうとる?野村が相手や?直也は、ちょっと声を荒げて森に話す!
「不倫」あの野郎なんて汚い!「許さない」あいつら絶対「許さない」
<森>
・おい!おい!直也が何でそこまで怒てるわけ?確かに「不倫」は悪いけど、お前が許さないとは?直也には関係ないよな!酔ったか直也(笑)
<直也>
・森の前で感情だしておかしく思われたら、面倒になるのでこの場は上手く切り抜けようと話を上手くあわせてその場を切り抜けた。直也は「トイレ」と森に話してその場から、立ち去る。とんでもない事実を目の当たりにして、トイレで顔を洗って、トイレの壁を握りこぶしで何度も何度も叩きやりきれない気持ちと菜々を許せない怒りで狂いそうになっていた。あんな現状を見せ付けられて、もうここでけりをつけるしかないと決意するのである。野村がいても何も問題ない!ここまできたら、なるようにしかならん!と考え!2人のいる宴会場に乗り込む直也!
*直也は、怒りを抑える事が出来ず、宴会場でベタベタする2人のそばに行く。整理をつけたら連絡寄越す約束をしていたのに、会社上司の野村と付き合っている?
しかも「不倫」?直也の怒りは絶頂に達していた。2人の近くに行きこう話す。
菜々「随分ラブラブのようだな」どういう事か説明してもらおうか?菜々は、直也の表情に驚き、野村の影に隠れる。野村は直也に気付き「お前が直也か?」話は菜々から聞いている!お前何しにきたのや?
俺が話しあるのは、菜々だから、あんた(野村)には関係ないだろ!関係ない?あるね!
直也!いい機会だ!はっきりさせようじゃないか?菜々が誰を選ぶかをこの場で決めてもらおうじゃないか?ふざけんなよ!あんた菜々の上司だろ?しかも妻子いてさ、不倫だろ?何がはっきりさせようだと!笑わせんなよ!こんな事許されるとでも思っているのか?俺が妻子いて菜々と付き合おうがどうだろうとお前(直也)には関係ないだろ!
とやかく言われる筋合いない!
お前(野村)には用ないから、菜々と話しさせろよ?
菜々は直也が野村と怒り口調でやり合う姿を見て、野村の陰に隠れて怯えていた。野村は、必死に菜々をかばい、直也を近づけようとしない!
お前(野村)ふざけんなよ!上司だろうが何だろうが、俺は許さん!と直也が野村の胸倉を掴んで手を出そうとした瞬間!
「やめてお願い、お願いだからやめて」と野村の陰に隠れていた菜々が2人の仲裁に入る。主任私、直也先輩と話してきますから、ここではこれ以上やめて下さい。
話ちゃんとしますから、場所変えてください。そんなら、外行くか!「うん」菜々は2つ返事で頷く。「俺も立ち合うと」野村は言うが、菜々が主任は、ここに居て下さい。
しかし菜々を1人でやるのは心配だ!「大丈夫、いいからここに居て」と話し、直也と2人で宴会場を後にする。
2人は人気の少ない正面玄関のロビーのほうに行き、ロビーのソファーにかける。菜々はずっと下を向いたままである。おい菜々説明してもらおうか?どういう事か?
黙っていても何もわかんないだろ!お前さあいつ野村といつから付き合っているのか?
整理ついたら連絡寄越すとお前言っただろ!それがこの状況?説明しろよ!
菜々は下を向いていたのが、顔を上げて、鋭い目線で直也を睨みつけて、口を開く!
開き直ったように、「先輩、なにむきなっているのですか」?
野村主任は、私の彼ですよ。付き合って3ヶ月になる!それが何か?整理ついたら連絡する?あ~?確かにそんな約束した気がしますね?先輩もしかして、約束本気に?
先輩のそんなバカ真面目なところが私凄く重かったです。私、先輩とはとっくに終っていると思いましたよ。
お前さ!俺をバカにするのもいい加減にしろよ!俺がどんな気持ちで連絡来るのを待っていたと思う!それに、妻子持ちの会社の上司と不倫?お前こそバカじゃねえ?
そんなの長く続わけないだろ?遊ばれているのがなぜわかんない!
先輩言いたい事はそれだけ?私は何言われても、野村主任が好きだから、不倫だろうが何だろうが、先輩には関係ない!それに、遊ばれている?そのまんま、その言葉先輩にお返ししますよ!今更ですが、先輩とは遊びですよ!先輩もう?いいですか?
私はもう話す事はないので、今後一切関わらないで下さい。迷惑です!と話し直也の前から立ち去った。
直也は、その後宴会場に戻ったが、野村と菜々の姿はなく、森と飲みなおしをするのである。森にも菜々との事は話せず、怒りが収まらない直也は、朝方まで酒を飲み続けるのである。
直也は、予想もしない状況に動揺は隠しきれないのである。裏切られるという事は、こういう事なのかと、自分が優子にした事を菜々にされて、優子の気持ちが痛いほど分かるのである。誰かを傷つければ、いつか必ず自分に戻ってくるという事を目の当たりにするのである。この事が天罰であるならそれは、自分がしてきた事の報いだから仕方がないと思いつつ、こんなに簡単に裏切られて、恋愛どころか、人を信じることすら出来なくなりそうな精神状態になりつつあった。
こうして直也は、菜々に裏切られて、第1ステージのお話は、終了です。
1度裏切られても直也への一途な気持ちをかえない優子の想いは?果たして届くのか?
直也が優子の気持ちに答える事はあるのか?どんな展開になるかは、第2ステージへと続くのである。




