第三十二話 「固い意志」
*優子がお手洗いから戻り、助手席に座ると直也が、彼女から聞いた事を説明するね。
直也は、優子の方をみないで、真直ぐ前をみて、両手は軽くハンドルを握り話し始める。この前、彼女に会って、きちんと話は、聞いてきた。
まず、俺と付き合う寸前まで彼が居たことは事実だった。それと、あいつの部屋で偶然にも元カレの写真を大事に隠し持っていたのを俺が見つけた。優子に、俺が戻りたければ戻っていいと言った事も認めたよ。話の流れで、彼女が元カレを今でも好きな事は、少なくてもわかった。きっと俺は、寂しさから誰でもいいからそばに居てほしいと利用されたのだろうな!俺が今まで気付かないなんて!笑えるよな!
つまりそこに好きな感情はないと言うことさ!あいつ泣き崩れて何1つ自分の気持ちを話そうとしない、でも否定もしない。それに俺と別れるとも言わない!
結局最後は、あいつが整理するまで待つから、整理出来たら、連絡寄越せと言って帰ってきた。優子へのこれが全てだよ!
<優子>
・彼女否定もしないと言う事は、認めたという事だね?私と話したときは、食って掛かってきたのに、直ちゃんの前だと随分おとなしい彼女を振る舞うわけだ!
直ちゃんは、その話を聞いてどう思ったの?優子は真直ぐ前を見て話す直也に、こう話す「ちゃんと私の方を見て話してよ」と優子は直也の方に身体を傾ける。
<直也>
・「ごめん」と一言。直也も握っていたハンドルから手を離して身体を優子の方に傾ける。
今の率直な気持ちは、彼女の元カレの写真と否定もしない彼女の姿を見て、優子の言う通り、遊ばれていたのかなと感じたし、少なくても未練があるとしか思えなかった。
そう話すと優子から一度目線をそらし、右手で頭をかきながら下を向く。
<優子>
・私が言った通りでしょ?直ちゃんは遊ばれていたの!「わかった」?
ねえ~もういいでしょ?私が言いたいことわかるでしょ?
そう直也に話すと、優子は、右手で直也の左肩に手を添えて、「もういいでしょ」
ねえ~直ちゃん。彼女の気持ちがないと分かったでしょ? ねえ~ってば!言いながら、直也の肩を何度も何度も揺する優子!
<直也>
・ゆっくり優子の右手に直也の右手をそっと添えて、「優子わかったから」手を下ろしてくれと言いながら、ゆっくり優子の右手に自分の右手を添えながら、下に降ろす。
<優子>
・分かってくれたのね?直ちゃん本当に!本当?じゃあ~。もう一度、私に戻って来てくれるのね?優子は、ここを逃せば直也の気持ちは、離れると感じ、今しかない絶対今しかないと何度も心の中で言い聞かせ、直也に積極的にアプローチをする。
<直也>
・おいおい優子!違う!違う!俺が分かったのはそう言う事じゃない。彼女の気持ちが、俺にはないという事がわかった事だけで、優子の事は、今は考えられない・・・。
直也には、優子の気持ちは充分伝わっていた、だがこっちがダメならこっちなど、そう簡単には切り替える事は出来ない。いずれ優子を傷つけた過去の事実は変わらず、戻る選択肢はないと心の中で思う直也なのである。
<優子>
・私の事今は、考えられないのね?じゃ~いつになったら考えてくれるの?ねえ~?直ちゃん答えて!私いつまでも待つよ!私絶対直ちゃんを諦めないと決めたから。
彼女の気持ち分かったのに何で諦めきれないの?ねえ~?なんで?
実は、優子には聞くまでもなくその気持ちは分かっていた、誰かを本気に好きになったときに、どんな状況でも、周囲から何言われても人を好きになる事に理由などないと言う事は、誰よりも優子は知っていたのである。
<直也>
・報告したばかりだし、それにまだ別れたわけじゃないから、何も考えられない!
それくらい分かってくれよ!優子の気持ちは、凄くありがたいけど、期待させると悪いからはっきり言うけど、どんな結果になっても優子に戻る事はないよ!
だから待ってもらっても無駄だよ!直也の本音は、戻れるものなら戻りたいと思うのも事実だが、心の中で、「優子本当にありがとう。俺は戻る事は出来ない」これいじょう優子を苦しめる訳にはいかない。すまないと何度も何度も心の中で謝った。
直也は、戻ったとしても自分の性格では、同じ事の繰り返しになる可能性がある。すっかり自分に自信を無くしていたのである。自分の一言で戻る事は簡単!しかし、優子をまた傷付けてしまうくらいなら、戻らない方がいいと思うのである。
<優子>
・直ちゃんがいくら私を突き放しても、私の気持ちはかわらないから。直ちゃんも私の気持ち分かってよ?直ちゃんが戻る事はないと断言するなら、私もはっきり言うね!直ちゃんが、彼女とどんな結果になろうとも私は、諦めないしずっと待つから。
この時、優子の心の中は、彼女(菜々)と直接話した事で、直也への気持ちは強い意志で固まっていた。それと直也の事だけを考えてずっと苦しんできた分、直也が優しい性格なのは、誰よりも知っていると自信があった。だから確信はなかったが、直也の本心から出ている言葉には思えない優子なのである。もしかしたら、自分が好きな相手だからこそ、信じたい「戻ってきてくれる」と思いたいだけなのかも知れないけど、それでも優子は直也が戻ってきてくれる事を信じて、自分の気持ちを変えることはない。
<直也>
・とにかく約束守って優子に会って、彼女との事を報告したから、もういいだろ!これから、家の近くまで送るからと言って、シートベルトをする。
直也はこのまま話を続けても、平行線のままだと想い、早くこの場を切り抜けたいといつもの悪い癖がでる。
<優子>
・え~?直ちゃん!もう?私を送るの?話途中でしょ?逃げないでちゃんと私と向き合ってよ!全然私納得してないけど?
優子は、とにかく直也との繋がりを経てば、戻る可能性さえないかもしれないと感じていただけに、何とかして、直也との繋がりを作ろうと努力する。
<直也>
・逃げてないでしょ?優子との約束を果たしたのだから、もういいじゃない!
これいじょう俺にどうしろと?
直也は、優子のやさしい気持ちが痛いほど嬉しかった。それだけに、長くいればいるほど、優子の熱意に負けてしまいそうになるから、優子を早く送っていきたかったのである。
<優子>
・直ちゃんが、私に戻ると言ってくれるだけでいいの!私が望むのはそれだけ!直ちゃんが私だけのそばに居てくれたらそれでいい!
優子は、とにかく自分の気持ちをどんどんぶつける。
<直也>
・だからさ!今は、彼女が整理つけて結果を待つことが先だから!
直也は苦しさのあまり、優先順位を話し、優子が引いてくれることを願う。
<優子>
・だよね?整理つけての結果が先ね!現状は、まだ直ちゃんには彼女が居ることになっているし、今私と付き合えば、二股かける事になるしね?同じ事繰り返せないよね?
優子は、直也の性格を知っているだけに、そう言う言い方をした上で、こう話す。
「直ちゃん彼女との結果分かってはっきりしたら、もう一度私と会って」そうしてくれるなら、私今日は帰ってもいいよ!優子は、どんな形でも次回の約束をしたいと思うのである。
<直也>
・今の優子に何言ってもダメだと思う直也は、時間が経てばいくら優子でも俺の事を諦めてくれるだろうと考え、優子にこう話す「とにかく今は彼女(菜々)の整理の結果が先だから、結果分かったらもう一度会うから」それとその結果がいつでるのかは分からないから、いつまでとは約束出来ないけどいいか?
積極的にアプローチしてくる優子に、直也は、どんどん押されてくるので、ほとんど根負けでそう話した。
<優子>
・直ちゃんわかった!結果が出たら会ってくれるのね。待つのは慣れたから、いいよ!
私は、直ちゃんからの連絡待つからね。約束だよ!
優子は、次回の約束を取り付ける事に成功した事に心の中でガッツポーズをするのである。
<直也>
・約束するよ。優子遅くなると大変だから、そろそろ送るよ!いいか?
結局約束をする事になる直也である。
<優子>
・「うん」ごめんね。送ってもらう事、悪いけどお願いします。軽く直也に頭を下げる。
*直也は、優子の家の近くまで送り届けた。車の中での会話は、さっきまでとは違い普通の会話だった。車を下りるとき「直ちゃん送ってくれてありがとう。またね」と軽く左手で手を振って、下りて家のほうへと歩いていった。優子の表情はいつもになく柔らかく、自信に満ち溢れているように見える直也であった。
直也は、彼女(菜々)の気持ちの整理の連絡待ち、優子は、直也からの連絡待ち、全てのキーマンは、彼女(菜々)が握っていた。彼女(菜々)からの連絡が全然こないまま月日だけが経過していく。まだこの時、直也は、予想もしていない展開になるとは、まだわかっていないのである。




