第三十一話 「暴かれた本心と報告」
*直也は、元カレと移っていた写真を切り札に、菜々から本心を聞きだそうとする。
引き出しから、写真を取った直也は、自分の席に戻り、座って菜々に問いかえる。
<直也>
・菜々顔上げろよ!もう我慢するなよ!元カレの事忘れられないのだろ?
その証拠だ「これみろよ」と1番下になっていた写真だけ取り出して、菜々の前に差し出す。こんな大事に写真を隠す訳だから、誰でも分かるよ!菜々の気持ちがね!
<菜々>
・直也の証拠に反応した菜々は、肘をつき頭を抱えて泣いていたのだが、頭をあげた。
写真を両手で持ち、数秒菜々の表情が固まったのだ!すると写真を握り締めたまま、また頭を抱えて泣き始める。
<直也>
・その菜々の姿をみただけで、菜々の今の気持ちを理解するのである。
「菜々お前が、どうしたいのかは、お前が決めていい」
俺とこのまま付き合うのであれば、元カレとの事は断ち切って欲しい!元カレに戻りたいなら、自分の気持ちに正直にけじめつける為に、行動するべきではないのか?
<菜々>
・泣きながら、頭を上げた菜々は、私の心の中までづけづけ入ってきて、「先輩のバカ・バカ」もう私の事は、ほっといて!自分で考えて、整理するから!整理したら、私の方から連絡するから!それまで会いにきたりしないで!
<直也>
・分かった。菜々が整理ついたら、連絡寄越せ!部屋の鍵、下駄箱の上においてあるから後で確認しろよ!「じゃ。俺帰る」と言って席を立ち菜々の部屋を出る。
菜々は見送りもせず、頭を抱えたまま。帰るという言葉に、ただ頷くだけだった。
*菜々は、直也に全部見抜かれていたと思うのである。自分の気持ちを必死に隠そうとしたが、最後は自分の本心の感情に負けた菜々である。この時点では、元カレを忘れる事が出来ていないのも事実!人を好きになる事が、こんなに苦しい事なのかと、素直な気持ちにどうしていいのか分からない菜々である。時間をかけて整理するとは言ったもののどう整理していいか分からない菜々である。
*直也は、菜々の気持ちを引き出す事に成功したが、あそこでなぜ、別れると言えず、
整理したら連絡寄越せなどと言ったのか、失敗したと思うのである。
とにかく菜々が整理するまで待つことにする。整理すると言っても、気持ちが元カレにあるのだから、結論はすぐ出るであろうと安易に考える直也である。
付き合う時より、別れる時の方が精神的に大変と良く聞くが、何度こういう場面を経験しても、いいものではないと感じる直也である。菜々とのゴタゴタで疲れはあるが、今日の結果を優子に話す約束をしたので、嫌な事は早く済ませようと夜連絡する事に決める。こういう時は時間が経過するのが早く優子に電話する23時になる。
電話機の前に立った直也は、受話器を上げ、ワンコールで受話器を置く。するとすぐ電話が鳴り受話器をあげる。
<直也>
・もしもし。
<優子>
・こんばんは。直ちゃん?優子です。この前の結果報告でしょ?
優子は、直也には言わないが、毎日直也からの電話を待っていたのである。
<直也>
・「うん」約束した結果報告だよ。今日彼女に会って話してきた。それでさ・・・。
<優子>
・ちょっと待った!直ちゃん結果報告は、電話じゃなく会って話すと約束したじゃない?
だからいつがいい?直ちゃんが都合の良い日?
<直也>
・電話での報告じゃダメか?いいだろ優子?すぐ終るから、会って話すまでではないだろ!
<優子>
・嫌だ!会って話し聞く!電話じゃ嫌!直ちゃん約束したよね!
ここで折れたら、直也とは終る可能性もあると感じる優子は、とにかく、会う事で直也と繋がっていたいと思うのである。
<直也>
・確かに約束したな!わかった!平日では、優子が大変だろうから、俺10日後の土曜日は、早番で17時に仕事終るから、会社近くの駅までこれるか?18時まではいけると思う駅待合室でどう?もう逃げずに優子と向き合おうと考える直也。
<優子>
・10日後の土曜日の18時に駅の待合室で待っていればいいのね?
私先に行って待っているから!優子は電話口で、約束が出来たと内心喜び、受話器を持つ反対の右手でガッツボーズを思わずするのである。
<直也>
・その約束で。明日は仕事だから、もう休むわ!夜遅くすまなかったな。
お休み。と言って電話を切るのである。
菜々との事で精神的に疲れた直也は、床について休むのである。
<優子>
・直ちゃん「おやすみなさい」仕事頑張ってね!またね!
優子も受話器を置く。部屋に戻った優子は、直也の電話口の反応から、きっと直ちゃんは、電話で済ませたかったのだろうけど、次に繋げるためには、会う約束が出来てホッとしたのである。
*結果報告を約束した2人は、お互いに仕事をこなしつつ、優子は、どんな結果報告を受けようとも自分の気持ちに狂いはない。
直也は、もう開き直るしかないと考え、優子に正直に結果を報告しようと思うのである。それぞれの気持ちを頂きながら、10日後の約束の当日となるのである。
約束当日優子の仕事は、午前中だけで、仕事を終えてから電車で約束の場所近くで映画を見て時間を潰すのである。直也は、残業もなく予定通り17時には勤務は終了して、着替えて駅に向う。優子も映画は、16時半には終わり、ゆっくり歩きながら、駅の待合室に向うのである。17時過ぎには、待合室に着く優子。
直也も駅近くの駐車場に車を入れて、歩いて待合室に向う。時計みると、まだ17時半前だった。少し待ってもいいかと思いながら、待合室のドアを空ける。すると驚く事に、優子がすでに待っていた。優子を見つけた直也は、近くまで行き声をかける。
<直也>
・優子約束の時間まで30分も早いぞって言いながら、優子の隣の席に座る。
予め自販機で購入していた缶コーヒーを優子に差し出す。
<優子>
・あ?お疲れ様。直ちゃんこそ早いね~?コーヒー?ありがとう。せっかくだから、いただくね。コーヒーを飲みはじめる。
<直也>
・俺も飲むか~と言ってから、コーヒーを飲み始める。優子?ここで報告していいのか?
いいのなら、飲みながら聞いてくれよ。
横に座った直也は優子を横目に話はじめようとする。
<優子>
・ごめん。直ちゃん。ここでないほうがいいな。場所変えて欲しいよ。いいかな?
優子も直也を横目に見ながらそう話す。
<直也>
・場所変えて話すよ。コーヒー飲んだら移動しようか?
何か優子少し痩せたか?ちょっとそんな感じするけど・・・・。
<優子>
・痩せた?私が?誰のせいだと思っているの?コーヒー飲んだから移動しよう?
<直也>
・あ?痩せたのは俺のせいか?ごめん。コーヒー缶俺捨ててくるからと手を出して、優子から空き缶を手渡される。
<優子>
・そう!痩せた原因は直ちゃん!責任とってよ。ちょっとマジ顔な優子。
コーヒー缶ありがとう。
<直也>
・笑える状況ではないが笑ってごまかすしかない直也。優子のバックも俺が持つからと
手を出す直也!歩きながら、おれの車に行こうか?
<優子>
・笑ってごまかすところは、全然かわってないと感じる。車に移動と言われ
軽く頷いて直也の後ろをついていく優子である。
直也の後ろを歩く優子は、背中を見てこの人を失いたくないと思うのである。
<直也>
・車についた直也は、助手席のドアを空けて、優子のりなよと言う。でも優子は乗ろうとしない。すると直也は、大丈夫彼女の物は、何もないから。乗りな。
<優子>
・「うん」頷いて助手席に乗る。優子は、私の気持ちに気付いてくれた事が凄く嬉しく思 う。
<直也>
・運転席に乗って、エンジンをかけると前を見ながら、優子ここで報告していいか?
そんなに時間かからないから。約束どおり会って話す約束は守ったのだからいいでしょ?
<優子>
・直ちゃん!わがまま1つだけ聞いてよ。ここで聞くから、話終ったら、自宅の近くまで送って欲しいのね、ダメかな?
報告の内容は別として、少しでも直也と一緒にいたい優子なのである。
<直也>
・なんだ!そんな事か?いいよ。話終ったら、送るから安心して頂戴。
<優子>
・ありがとう。直ちゃん!それと、話聞く前に、ちょっとだけお手洗いに行ってきていいかな?さっき駅で寄って来ればよかったんだけど。ごめん。直ちゃん。
<直也>
・お手洗い?まったく!車に乗る前にすませてくればいいのに(笑い)
お漏らしされると困るからいっておいで。俺ついていこうか?
<優子>
・子供じゃないのだから、1人でいけます!ったく!子供扱いしないで頂戴!
直也の笑顔に、笑顔で答える優子がいた。行ってくるとドアを空けて駅に小走りで向う優子である。その後ろ姿を見て可愛いと感じる直也である。
*直也は、優子の性格や考えていることなど総合的に、菜々よりははるかに歯車が合う。
それを今更気付いても後戻りなど出来るはずがない。本音は戻りたいしかし裏切った俺がそんな虫のいい話はない。やはり最善なのは、全部けりをつけて、誰とも付き合わない選択がベストだと考える。とにかく今日は、優子に報告をするその為に着たんだから。優子が戻って来て、助手席に乗った。直ちゃんお待たせ!結果報告お願いしますと言われ、直也は口を開き説明がはじまった。




