第二十一話 「真実の告白」
*菜々に返事を1ヶ月待つと言われた直也は、自分がまいた種とはいえ悩む毎日が続くのである。普通に考えたら、菜々に断りを入れるだけでいい話であるが、菜々に弱みを握られたと思う直也は、真剣に悩んでいた。それと優子に何て切り出そうかと優子とは別れたくない、
この現状では、自業自得とはいうものの優子と別れるしかないのかと思う直也である。菜々は、弱みを握られたと思っている直也の気持ちを利用して、何とか自分の彼にしようと考えていた。そこまでしてでも直也を自分だけのものにしたかったのも菜々の本心であった。1ヶ月待つと言ったのも実際は、直也の性格上そこまで今の彼女(優子)に隠せるはずがないと思ったからである。絶対に1ヶ月以内に何らかの連絡があると確信していたのである。
優子は、優子で悩んでいた。仕事で迎えにいけないといわれた時の有料道路のレシートの事がどうしても気になっていたのである。あの時は、気付かない振りをしたものの時間が経過すればするほど、余計気になる優子であった。
直也には聞くに聞けない優子と優子に何て話そうと考える直也と彼女(優子)と別れて自分の彼になると確信して待つ菜々と3人の気持ちがそれぞれに交差する。いずれにしても、直也に決断が迫られている事は紛れもない事実であった。菜々のアパートに行ってから5日が経ったある日の事、出社すると移動辞令が会社で発表された。その辞令とは、研修期間が終了した菜々が別店舗に移動の辞令であった。移動日は1週間後で移動の店舗は、菜々のアパートから近い所で、研修期間中は、1時間もかけて直也の店舗に通ってきていたから菜々としては通勤が楽になるのである。直也は辞令を見て正直ホッとしたのが現状である。それは仕事上での事で、菜々とのプライベートの事は、何も変わっていないが、とりあえずきまずい部分だけは回避出来ると思う直也である。
菜々は辞令交付を受けて1週間後の着任の為、移動店舗に行っての仕事となった。休憩室で仕事の準備をしていると、菜々が直也を見つけて、直也先輩!「お世話になりました」いい返事待ってますと言って休憩室を後にした。直也は、腹を決める事にした。
最初は、優子と会って話そうと決断する。今日仕事終わって夜電話して会う日を決めて話そうと決める直也である。仕事は普通にこなして、自宅に帰り23時を待つ直也は、色々考え始めていた。考えこむと時間が経つのは早く、23時の時間になった。
<直也>
・23時ちょうどに、受話器を上げてワンコールで電話を切る
(いつもより緊張する直也)
<優子>
・ワンコールで電話が切れた事で、直也からの電話とわかり折り返し電話する優子。
(優子はあの時の有料道路のレシートがどうしても気になり毎日熟睡が出来ない状況であった)
<直也>
・電話が鳴り、受話器をとり電話に出る「もしもし優子?」
(なるべく普段通出ようとする直也)
<優子>
・「直ちゃんこんばんは」久しぶりだね?電話あまり来ないから仕事忙しかった?
(何気なくさぐりをいれる優子である)
<直也>
・「うん」ちょっと仕事忙しくて中々電話できなくてごめん。
(悩んでいる事を電話では悟られないように話す直也)
<優子>
・「謝らなくていいよ」仕事忙しいなら仕方ないから。それに私もこの頃、あまり体調よくなくてね。
(あまり元気がないような口調で話す)
<直也>
・体調崩しているの?大丈夫?
(心配はするものの直也が原因とは、気付かないのである)
<優子>
・大丈夫。心配かけてごめんね。
(体調不良の原因は、有料道路のレシートの件で誰と行ったの?なんて聞けない優子)
(その事を聞けばすっきりする優子ではあるが、聞く勇気がない優子である)
<直也>
・あんまり酷いなら病院にいきなよ。体調悪い時に申し訳ないけど、俺明後日休み
なんだけど会える?無理ならいい別な日でもいいけど。
(優子を心配しながらも会ってちゃんと話さないといけないと思う直也)
<優子>
・明後日?「大丈夫だよ」いつもの時間でいいの?17時10分頃にホームセンターの駐車場で?
(迎えに来るのに申し訳ないと言う言葉に、おかしい?何かあると感じる優子である)
<直也>
・明後日大丈夫なら、いつもの時間に待っているから。優子体調悪そうだから休みな。
「また、明後日ね。お休み」
(直也は、優子の体を心配する)
<優子>
・直ちゃん。「明後日ね。お休みなさい」
(約束をして電話をきる優子である)
*優子は電話を切ってから布団に入っても中々眠る事が出来ない。ここしばらくは、どうしても有料道路のレシートが気になり寝不足が続いていた。直也を好きな優子は、嘘ついて、裏切るような事はしないと自分に言い聞かせる反面、もしもだれか別な女性が居たらと考えるととても苦しい心境である。
直也に直接聞けばいいけど女性の存在がいたらと思うととても怖くて聞けないのであった。チャンスがあれば、明後日会った時に聞こうと思う優子である。
直也もまた、優子と電話を切った後、どう話せばいいか悩んでいた。結論からいうと自業自得である。冷静に考えたら彼女が居て、軽はずみな気持ちで嘘を着いて菜々とデートした事がそもそもの間違い、そのデートも優子と中々会える時間がない現実と比較してしまい気持ちが揺れ動いたのが原因。結局優柔不断な直也の行動がどんどん状況を悪化させたのである。優子に対する不満は、会えない時間の少なさだけでその他は文句がつけようがない彼女である。でもこの先会える時間を埋める事は難しいであろうと考えた。弱みも握られ逃げ場がない直也は、優子との別れを選択するしかないと思うのである。お互いに色々考えながら時は過ぎ、約束の当日となった。
直也は、いつも通り、優子との待ち合わせ場所のホームセンターの駐車場に17時前には着いて、優子の仕事の帰りを待っていた。車内で優子を待つ直也は、どう切り出していいのか悩んでいた。付き合う時の告白に使うエネルギーより別れを切り出し別れるときのエネルギーはかなり使うとは分かっていたが、待つ間こんなにも緊張するのは、久しぶりだと思う直也であった。車のラジオの時報が17時を告げた。あと10分で優子は来る、緊張が増してきた。腹を決めちゃんと話そうと待つこと10分、優子が歩いてくるのが見えた。近くまで来ると左手を上げて合図してきた。直也は、助手席を指差し優子は、ドアを開けた。
<優子>
・直ちゃん「お待たせ」と言いながら、笑顔で助手席に乗り、シートベルトをする
<直也>
・お疲れ様。優子体調は大丈夫か?
<優子>
・心配してくれてありがとう。大丈夫だよ。
<直也>
・とりあえず、優子の家の近くの公園に移動するけどいいか?
(覚悟を決めて車を移動させる)
<優子>
・「うん」と頷いた。
(いつもの直也とはちょっと違うと感じた)
<直也>
・公園まで着くと直也は車のエンジンを切った。1分位無言の後、口を開き優子に話はじめる。
今日は話があってきた。優子と会う事は、今日で最後にしょうと思う。「俺と別れてくれ」すまない。本当にすまない。
(一方的に優子に別れを告げる)
<優子>
・え?何?どうしたの?直ちゃん!冗談でしょ?
(あまりにも突然なことに驚く優子)
<直也>
・冗談じゃないよと言いながら首を横にふる
(優子と目を合わせる事が出来ない直也である)
<優子>
・どうして?別れなきゃいけないの?理由は?私何か悪いことした?
(急に別れを告げられ動揺する優子)
<直也>
・優子は何も悪いことしてない。悪いのは全部俺だ。すまない。
(理由を言わずただ謝る直也)
<優子>
・直ちゃんが悪いの?何?いったいなんで?謝るだけじゃ納得できない!
(直也が本気と分かり悲しくなる優子)
<直也>
・理由いわないと納得出来ないよな。正直に話すよ。実は好きな人が出来たんだ。
だから別れて欲しい。すまない。
(腹を決め菜々の存在を話す)
<優子>
・え?好きな人?いつから?直ちゃん私を裏切った!酷い!この前の有料道路の領収書って、私迎えに来る約束した日、別な女性とデートした?私が何も知らないと思っているでしょ?仕事の人が何でと思ったし!
(優子のもやもやもぶつけた)
<直也>
・有料道路の領収書?そうか~。すまない。優子なら俺よりもっといい人が出来るよ。だからすまない。別れてくれ。
(とにかく謝ることしか出来ない直也)
<優子>
・直ちゃん!私絶対別れない!私の他に直ちゃんのいいところ理解出来る女性は絶対いない。私に言ってくれた言葉も全部嘘だったの?私小さいから?直ちゃんだけは、他の人とは違うと思っていたのに!直ちゃんはいいよね!私と別れてももう別な女性いるから!俺よりいい人?勝手な事言わないでよ!自分が悪いくせに!
(優子はボロボロと泣きながら直也に問いかける)
<直也>
・優子に言った事は嘘じゃない!小さいからも関係ない!でも好きな人が出来たのだから仕方ないじゃないか!
(優子に分かって欲しいと思う直也)
<優子>
・私が納得する理由がない限り、絶対別れない!それに私は直ちゃんいがいの人とは絶対付き合わない!
(涙が止まらない優子)
<直也>
・納得する理由?
(菜々と軽はずみとは言え心変わりした理由を話すしかないと感じた直也)
<優子>
・納得する理由があるなら話してよ!
(目を真っ赤にして、涙が止まらない優子)
<直也>
・優子とはデートする時間がすくな過ぎる。これが本当の理由だ。晴美とも1週間に2日はデート出来た。優子とは1ヶ月で4日会えても、1日1時間だけ。もうこれが俺には限界だった。だからと言って裏切っていい事にはならないのは分かってはいた。
すまない優子。
(菜々の事は詳しくは言えない直也だが、心変わりは、会える時間の短さが原因なのは事実だ)
<優子>
・時間の短さ?直ちゃん私これから、改善するから、考え直してよ!お願い!直ちゃん!
(必死に直也を説得する優子)
<直也>
・もう遅いよ!すまない!優子。もうバスが行く時間だから、自宅近くのバス停まで送るよ。
(エンジンをかけ自宅近くまで移動する)
*優子は移動する車の中でもボロボロ泣きながら、直也に何度も何度も「直ちゃん本当に別れなきゃいけないの」と泣きながら聞いてくる。直也は何度も何度も「優子すまない」と繰り返し話す。バス停に着く寸前、優子は直也にこう話す「直ちゃん、私ずっと待っているから」と同じ事を何回も泣きながら話す。やがてバス停に着くと、直也は「いままでありがとう。優子元気で」と言って優子を車から降ろした。優子はまだ泣きながらハンカチを片手に家へと向う後姿は物凄く寂しい背中に見える直也である。何かを選択するという事は、何かを捨て犠牲にするという事を改めて感じる直也である。今思うと優子とは会う時間の問題だけ、もっと優子と改善策を話しておけばこうはならなかったと思う直也だが、もう後戻りは出来ない直也である。優子は、急な別れにショックは大きかった。でも直也を諦められない優子は、新たな行動をとる事になる。
さてさて――――
このゴタゴタした展開いったいどうなる?




