第十九話 「揺れ動く気持ち」
*菜々を一晩看病した直也は、朝目が覚めると、菜々はベットにはいなかった。すると、台所の方で料理している音がした。
直也が起きて台所に行くと、先輩「昨日はすいませんでした」と直也を見て謝ってきた。もう大丈夫なのか?と直也が聞くと、先輩が看病してくれたから熱も下がったので、もう大丈夫と菜々は答えた。
直也は、大丈夫なら「俺帰るから」と 言うと先輩の分も朝ごはん作ったから食べていって下さいと菜々から言われた。ごめん。せっかく作ってくれたのに悪いけど、今日仕事だから、家帰って着替えて会社行くよ。直也は、変に誤解されるのが嫌だった事もあるが、優子・菜々の2人に対する気持ちがふら付きどうしていいか分からなくなってきたので、今日の所は、仕事を口実になるべく菜々のアパートから帰りたかったのである。
菜々は、昨日の返事を話してくれそうもなかったので、食事している時にでも聞こうと思っていた。でも帰りたがる直也にタイミングを逃してしまうのである。直也は菜々が、返事を聞きたがって居る事は、うすうす気付いてはいた。
この時、直也の気持ちは、揺れに揺れていた。
優子と菜々どっち?そんなの選択出来ない。
どちらかを選べば、どちらかを捨てなければならない。
そんなのは、当たり前の事である。
でも直也には、なぜか選択が出来ないでいた。
菜々の気持ちにも答えたい。冷静になって考えれば、そんな事が許されるはずがない。菜々からの告白に答えたら、優子には正直に話し別れるしかない。
菜々に断れば、今まで通り優子と付き合っていけばいいし、直也は考えれば考えるほど、どうしていいのか分からなくなってきていた。
世間一般的に見たら、直也本人が優柔不断であることは分かるし、はっきりしない男ほど、情けないものはない。どちらかを選択出来ないのは優しさではない。ただ、自分が可愛いだけで、振った方に悪く見られたくないだけ。
そんな都合のよい話はあるはずがない。
すぐに答えは出せない状況になっていた。
結局答えが見えない状況である為、直也は菜々に「仕事だから帰る」と伝えアパートを出ようとした時だった。
<菜々>
「先輩帰る前に返事聞かせてください」と言った。
(玄関先で直也は、困った表情をする)
<直也>
・返事?今でないとダメか?俺仕事に行かないと
(この場を切り抜けようと直也は、急ぐふりをする)
<菜々>
・「返事今聞きたいです」それに仕事は、今日午後からじゃないですか?
私ローテーション見たから先輩の勤務時間知っていますよ。
どうして逃げようとするのですか?昨日約束の屋上に来てくれて、私の看病までしてくれて朝まで居てくれたら、先輩の答えは出てるのではないのですか?
私の気持ちに答えてくれるのですよね?
<直也>
・逃げようとしている訳ではないよ。でも昨日屋上に行ったのは、雨も降ってきたし来てくれるまで待っているとまで言われたら、気になるのは当然だろ!ましてやあの雨で熱まで出ていたら、頬って置く事が出来る訳ないだろう。だから看病までした。あくまで会社の先輩としてな!
(自分の優柔不断さに直也は、菜々の突っ込みに少しきつめの言葉で返す)
<菜々>
・普通来てくれたら、私じゃなくても誰でも私と付き合ってくれると考えると思うけど!なんでその気もないのに来たのですか?それに朝まで看病したのですか?
その気がないなら、優しくなんかしないで欲しかった。そのまま見て見ぬふりして、帰ればよかったじゃないですか?先輩の優しさがどんなに私を傷付けているかわかります?先輩酷いですよ!
(目に沢山涙を貯めながら、強い口調で直也に問いかえる)
<直也>
・くどいな~。何度も同じ事言わせるなよ。会社の先輩として、心配になったからだ!なぜそれが悪いんだよ!ふざけるな!
(言い返す直也)
<菜々>
・先輩に聞きますけど、新入社員の教育係の先輩は、部下のアパートで朝までいて!
会社の先輩なら何してもいいんですか?おかしくないですか?
(涙を流しながら、菜々は反発する)
<直也>
・何!何!?ふざけるな!何、言ってんだ!俺が何したって言うんだよ!
(段々直也も冷静さがかけてくる)
<菜々>
・先輩!ごまかす訳!雨で濡れた私を着替えさせたでしょ?私知っているよ!
着替えさせて、私の裸みたでしょ?会社の先輩なら何してもいいわけ?
私の彼氏なら何も言わないけど、していい事と悪いことありますよね!
(涙は止まらず、直也に食い下がる)
<直也>
・おい!おい!菜々いい加減にしろよ!雨で濡れたから、着替えさせたのは事実だ。
風邪ひかせないようにと必死だったから、裸は多分みてない!会社の先輩だろうが、彼氏だろうが、昨日の状況の場合仕方ないだろ!俺を脅す気か?
(菜々の言い方に面白くない直也)
<菜々>
・多分見てない?着替えさせるのに見てない!笑わせないでよ!もう少し上手なうそつけないのですか?私の裸みたくせに!この事は、先輩の出方次第で私も考えますから。それと変な事言わないで下さいよ。脅すだなんて!
(菜々の口調が更に強くなる)
<直也>
・お前の裸!見たよ。着替えさせるのに目に入ったのは事実だ。それは認める悪かった。これ以上抵抗しても余計拗れると思い、直也は認めた。認めて謝ったのだから、もういいだろ。
(少し冷静になって話そうと思う直也)
<菜々>
・先輩!裸みたんじゃないですか!正直に認めてくれたので、この事は、菜々の心の中にしまっておいて誰にも話しません。当然、会社にもいいません。だから先輩、2人にだけの秘密にしましょうね。今日の夜、菜々のアパートに来てくれますよね?
これない理由ないですよね?夕飯美味しい料理作って、待ってますから。
(菜々は、これで直也は、私の彼になるしかないと確信する)
<直也>
・直也は、心の中でまずい事になったと思うのである。自分のした事がこんな風になるとは思っても居なかった直也は、とりあえず菜々から言われるままに頷くしかなかった。弱みを握られたのと一緒の直也は、菜々のアパートを後にする。
(自分の優柔不断さが招いた事に、頭が痛い直也である)
*直也は、もうどうしていいのか分からなくなってきた。全ては、優子との約束の日に嘘をつき、菜々とのドライブがきっかけで、今回のような事になった。悪いのは全部自分で、軽はずみな嘘から始まり、まさかこんな事になるなんて考えてもいなかった。
菜々には、優子の存在はまだばれていない、とりあえず様子を見ることにする。菜々に断れば、きっと会社にも昨日の事を話すだろうし、話されたら俺は首になる。すこし時間が経てば、菜々もきっと落ち着いて気持ちもかわるだろうと直也はそう思うことにした。もう一つ気になるのは、優子の事である。優子にも菜々の存在はばれていないから、様子を見ることにした。だがこの時、優子が菜々そのものの存在は分からなかったが、約束の日仕事の直也が、有料道路の領収書を優子が発見していたことに、直也は、まだ気付いていなかったのである。
菜々は、昨日の雨が幸運を齎してくれたような感じにさえ思うのである。まさか、直也が来てくれるとは思ってもいなかったし、まして雨に濡れてアパートまで送ってくれて、看病までしてくれた。これを運命といわずなんていうのだろうと思う菜々である。本当は、昨日来てくれなかったら諦めようと思っていただけに、余計に気持ちが強くなった。直也に彼女が居るかは分からない状況だが、菜々は、昨日の雨で濡れた服を着替えさせてくれた事で、裸をみられそれをネタにしてまでも、直也を彼にしたかったのである。
直也は、今夜菜々のアパートに行かないといけない状況。どうする直也?
誰を選ぶのか?今後の展開はいかに!
また、優子の今後の運命はいかに!菜々の運命はいかに!




