第十二話 迷い
一夜をともにした直也と優子は、駐車場に着いた時、優子からあることを伝えられた。
帰る前に、話しておきたい事があるの・・・。優子がそう話すと車の中でいいかな?と言われて、直也は車の鍵を空けて優子を乗せて、車のエンジンをかけた。
直也は、優子から今朝の事を話されると思いドキドキしていた。一線を越えた話なら、優子と付き合えないと回答したのに、飲んだ勢いとはいえ、最低な事をしたと思う直也である。本当に覚えていないからこそ、心臓の鼓動が聞こえるくらい緊張していた。
エンジンをかけ車が暖まった頃、優子が直也に伝えたいことあると言われて、直也の緊張は、マックスに来ていた。一線を越えた話なら覚えてないは通用するはずはないし、どうしていいか頭が真っ白になっていた。
<優子>
・直也君伝えたいことだけど・・・?何だと思う?
(直也の顔を見ながら優しい口調で話す)
<直也>
・何だろうね?わかんないよ。
(なるべく朝起きた状況は触れないようにしようと思う)
<優子>
・本題に入る前に、直也君は責任感強い?と自分で思う?
(優子は真面目な表情で質問してくる)
<直也>
・自分で言うのは何ですが、責任感はあると思います。
(本題に入る前の責任感?えっ?やっぱり昨夜一線を越えてしまっての男としての責任か?と心臓がドキドキする)
<優子>
・責任感はあるのね。良かった。伝えたい事はね。昨日の告白の返事は、後日貰えるとして、直也君が好きな人への責任感って何か教えて?
(優子がなぜそんな事を聞くのか直也は不思議に思う)
<直也>
・好きな人への責任?そうだね~。俺が思う責任は、自分が好きな人いがい全員を敵に回しても、命をかけても守り抜く勇気と強さが責任と思う。
それが俺の信念。
<優子>
・それ聞いて安心したよ。私が好きになった直也君は、私の目に狂いはなかったと自信持てたよ。私が伝えたい事は、付き合ってもらえるかは分からないけど、直也君の責任の考え方が私には凄く必要なの。それを伝えたかったの。私が言っている意味分からないよね?
<直也>
・正直意味が全然分からないね。で?何が言いたいの?
(一線の話でなくて良かったとホットする)
<優子>
・好きな人への責任感って直也君がどう考えるか、質問する前に回答を予想したのね。もしその回答、私が思っていた予想と当っていたらそんな人を彼に出来たら、ずっと守ってくれるだろうなと思って。その予想が的中したの。
予想が的中した事を伝えたかったの。私背が小さいからこそ、私を本気で守ってくれる人じゃないとダメなの。
<直也>
・予想的中したから良かったけど、想定外だったら、伝えたい事がなかった事になるね?
<優子>
・それはそうだけど。でも直也君ならそう言ってくれると思ったから。私は、とても満足感でいっぱいだよ。それに告白の返事がどんな結果になっても、私が直也君を好きになった事はずっと綺麗な思い出になるとおもうから。
*直也は、昨夜の事を聞かれず安心はしたものの、優子が自分を必要としているのは理解出来たし、気持ちも充分伝わった。でも直也の気持ちが大きく優子の方に傾いたと言う事はなかった。元彼と別れてそんなに簡単に吹っ切れているとは、直也は思えず、きっと一時的な気持ちの変化だとおもうのである。前に聞いた事がある、別れた人を忘れるために、誰かを好きになると。もしかしたら優子もそうなのではないかと思う直也である。
<直也>
・優子さんの伝えたい事はわかりました。俺もきちんと考えて答えを出そうとおもいます。今の現時点では期待はしないで下さいね。
<優子>
・直也君。返事は電話でなくて、会って返事して欲しいのが私の望みだけど、いいかな?
<直也>
・いいよ。直接優子さんに会って返事するよ。そろそろ帰ろうか?自宅まで送るから。
<優子>
・うん。優子は頷いた。
*直也は優子を車で自宅まで送った。優子との別れ際に、楽しかったありがとうと一言言った。優子もまた、楽しかったよと言って軽く手を振って優子は自宅の方へ歩いて帰っていった。直也は、優子の後姿が寂びそうに見えた。
*時間は過ぎて、直也は忙しい初売も終わり、1月も下旬にかかろうとしていた。
そろそろ優子への返事をしなきゃと思いながら仕事の忙しさを理由に時間が過ぎて行く一方であった。直也は、まだ結論は出していなかった。いつも悩むと海を見ながら考える直也は、明日の休みに海を見ながら考えようと思う。
なぜ、直也は悩みがある時海を見て考えるかと言うと、海は、晴れているときは、波も静かで穏やかであり、雨の時は波も高く荒れている。自分達人間とは違い、嘘を付かずありのままの姿を見せてくれる。そんな海を見ながら考えると自然に素直な自分と向き合う事ができるのである。
翌日直也は、悩むといつも行く海へと向かった。いつもの直也なら、優子に答えは変わらないと思うと1度は伝えたなら、考える事はなかったはずなのだが、どうも直也の心の中には、何か引っかかる物があって、海まで来て考えたかったのである。
海について、砂浜を歩き波打ち際までいった。今日の海は穏やかで、自分と向き合うのにとてもいい。砂の上に腰を下ろした直也は、考え始めた。
海を見ながら、優子さんへの俺の気持ちを自分に聞いた。
*優子さんの事をどう思う?
(とても可愛い女性で素敵だと思う。)
*優子さんを好きか嫌いか?
(嫌いではない)
*じゃ~好きなんじゃないか?
(そうかもしれない)
*お前が引っかかって居ることは何だ?
(元彼との別れた期間が短いのに俺と付き合いたいと思う事)
*自分に置き換えて考えてみるか?お前が元カノ晴美と別れてすぐ別な女性を好きになったら、その女性と付き合いたいと思わないのか?
(俺なら好きになったら付き合いたいと思う)
*好きになるのに期間や理由あると思うか?
(関係ないな、好きになるのは自由だな)
*優子の背の小さい事を気にしているか?
(いや俺は気にならん)
*優子の事気になっているか?
(気にはなっている)
*直也がここの海で自問自答すると自ずと答えが出て来る。自然のありのままの海が直也を成長させてくれている。結局答えは出た。自分が逆の立場に立った時に、見えてくるものもある。いつも優子の口癖である背の小さいと話す言葉には、とても深い意味があったと思う。
俺との身長差も50cmはあるし、もし歩いていたら、きっとお父さんと子供?と思われるだろう。でもそれが世の中の現実であろう。直也は優子の気持ちを分かるとは簡単には言ってはいけないと思う。人は皆相手の立場に立って見るとはよく口では言うが、出来ている人などかなり少ないに違いない。直也は、優子のような背の小さい立場に立つ事は出来ないが、優子がどんな思いで告白したかを考えると今は素直な気持ちで優子のそばに居たいと思う直也であった。この穏やかな海が物語るように直也に答えを教えてくれた。海は、穏やかな時だけではない、それは直也も知っていることである。優子への返事は決まったが、これから待ち受ける色々な試練に、直也と優子は、どうなっていくのだろうか?




