6.転校生
次の日、転校生が来るという噂でクラス中の男子やら女子やらが騒いでいた。
特に、男子。
可愛い女の子やら、美人な女の子やら、大和撫子の様な和風美人だったとか、超絶可愛い10歳くらいの見た目の少女だったとかetc——.
なんか、尾ひれ背びれ(?)付いているような気がするけど、まさかとは思う。
まさかは思うけど、昨日登校する時に出会った女の子ではないだろうな。
不安が胸を締めつける。
時に、そういう時の不安というものは当たるわけで——。
「はい。では、転校生をご紹介します。入って来て、時雨 猫くろおに ねこさん」
「はい」
担任の先生に呼ばれて入って来た転校生——。
その人は、昨日出会った女の子だった。
目が合う。
「あ」
彼女は、パチリとウインクをして、俺に手を振る。
クラス中に沸き起こる歓声。
「俺に手を振ったんだよ」
「違う、俺だ」
野獣共が雄叫びを上げる。
彼女の幼女のような容姿は、女子達にも受けるそうで、
「キャーーー!!」
「なにあれ。お人形さん!? 可愛い!」
などと黄色い声が教室内に響き渡る。
紺を基調としたワンピースの制服だ。
スカートの裾と胸にあるリボンの縁には、純白な線が刻まれている。
右胸には、本校常峰丘高校のシンボル——。
二羽の鳩が咥え、交差させる黄金の杖と剣。
それは、「魔力や能力と特別な力を知、倫理を持って制し、平和を為す」という意味があるらしい。
彼女の愛らしい姿と見事に調和が取れて、ピリリと緊張感を持った空気を醸し出している。
制服は似合っているが、この学園の空気に体が染み込んでいない感じだった。
背中まである濡鴉ぬれがらす色の髪は、ツインテールにしており、その髪型は彼女の幼い容姿を更に幼くさせていた。
が、そんな彼女の容姿とは裏腹にその深紅の瞳だけは、冷ややかな、冷徹な印象を受けた。
「それじゃ、金石くんの隣が丁度空いているわよね。それじゃ、時雨さん。金石くんの隣でね。金石くん、時雨さんに色々教えてあげてね」
「は、はい」
不服だ。
口を尖らせるが、そんなのはこの教師には効かない。
時雨がスタスタと華麗な足取りで机の間を歩いてくる。
その様は、まるで小生意気なお姫様のよう。
時雨は、はにかんだ表情で手を振る。
「おーい、君、昨日会ったですね」
おい、止めろ。
目立つだろうが!
クラス中がザワザワとざわめきだす。
「え、どういうこと? 金石くんこの子と知り合い?」
「マジかよ。おい」
ああ、これだ。
こうなるから俺は嫌いなんだ。
僕の右隣に座る時雨。
「よろしくですよ。金石くん♪」
く、くそったれ!
目を細めて、隣にいる美少女を睨みつける。
すると、どうだ?
こいつ、得意げにフフンと笑いやがった!
くそ!
僕こいつ嫌いだ!