晴秋side-5
掃き掃除を終えた後、神薙が作ってくれたご飯を馳走になった。食べる事が好きなだけあって、神薙の作るご飯は旨い。
ばあちゃんが作る飯も、いつも世話になってる惣菜屋の惣菜も旨いけど、神薙の飯は間違いなく俺にとってドストライクな味付けだ。
「神薙ってさ、飯作るの上手いのな!しかも味もめっちゃ俺好みで、最高に旨い。うちさ、ばあちゃん家で妹と三人で住んでんだけどさ、ばあちゃんの作る飯旨いんだけど、味付け薄い訳。だからこんなに旨い飯作って貰えて俺は今猛烈に感動している!ありがとう神薙。そしてご馳走様!」
で、遅いからって事で神薙とお父さんが駅まで車で送ってくれた。
「安倍君またいつでもおいで!堀川君にもよろしくね。気をつけて帰るんだよ。」
神薙のお父さんはやっぱいい人だ。
「晴明、寄り道しないで真っ直ぐ家に帰るのよ!いい?明日遅刻しちゃダメよ⁉︎」
俺は小学生低学年か?
「わーってるって!お前は俺のオカンか⁉︎って、まぁ俺オカンいないから知らないけどさ。おやじさん送ってくれてありがとうございました!宗人によろしく伝えておきます。おやすみなさい。」
神薙親子の車が見えなくなるまで見送ると、俺は小田原に帰るため今日あった出来事を振り返りながら電車に乗る。
一応神薙をいじめてた連中には軽く脅し入れといたから多分大丈夫だと思うけど、しばらく神薙を気にしとこうと思う。
小田原駅に着いて駅を出た所で見知った顔と目が合う。
「おっ、ベーヤンじゃん!今帰りか?ヤケに遅いじゃねーかよ、この不良少年!」
そう言うと笑顔で俺に右手を挙げる。
「なんだよ不良少年って。野暮用だよ、ヤボよー。っかよ、今日、忠ちゃん家行ったんだぜ?珍しくセッキーしかいなくってよ、2人で駅前のバーガーショップで寂しく飯食ってた。俺より不良少年なクセに今日は珍しく学校か?」
俺に話しかけてきたこの男、名を中原忠と言う。
「いや、先輩に原チャの修理してもらってたから取りに行ってた。んでベーヤン、野暮用の割にはちょっと顔腫れてねーか?」
まぁ、目の上に絆創膏貼ってるし、バレるわな。
「女の子1人に対して七人が寄って集って嫌がらせしてたから、ついカーっとなってさ。何発か喰らったけど、負けてねーよ。」
それを聞いて忠ちゃんはニタニタと笑う。
「ベーヤンが割って入ったって事は、その女の子かなり可愛いって事だよな?相変わらず女好きだね〜ベーヤンは!いっつも一方通行の恋ばかりだよな、ベーヤン!そろそろ実といいな。」
痛いとこ突いて来やがる。
「そんなんじゃねーって。中学生になって初めて出来た女友達なんだわ。ちょっと不器用なとことかもあるけどさ、なんか強ぇーんだよ。弱みなんて決して見せない芯の強いヤツっていうかさ。それとこんな俺にも嫌な顔せず仲良くしてくれるんだわ。忠ちゃんにも紹介するからさ、明日ちょっと付き合ってよ。」
忠ちゃんには不思議な魅力がある。
男にも女の子にもモテるって言うか、気がつくと忠ちゃんの周りには自然と人が集まってくる。
「ベーヤンがそう言うなら、その子は間違いなくいい子なんだろうな。いつか話してた宗人って友達にも合わせてくれよ。んでもって一緒に飯でも行こうや。俺まともな方の友達いねーから、ベーヤンの友達に興味あるんだよな〜。取り敢えず後乗りなよ。家まで送ってくからさ。」
忠ちゃんの原チャの後ろに跨ると、少し肌寒い夜の風を切って走り出す。
「俺なんか忠ちゃんと違って友達少ないけどさ、ただ間違いなく胸張って紹介できる友達だよ。多分さ、忠ちゃんもすぐ仲良くなれると思うよ。2人とも容姿で人を判断しないし、意外と義理堅いんだよ。んじゃ、明日放課後小田原駅に集合って事で。」
気がつくと家の前だった。
「楽しみにしてるよ。んじゃ、明日は久々に真面目に学校行くかな。」
忠ちゃんは笑ってそう言った。
「送ってくれてありがとう忠ちゃん。今度飯でも奢るよ!」
忠ちゃんはニコニコしていた。
「ベーヤンは律儀だね〜。大した事じゃねーから気にすんな。それでもベーヤンがどーしてもって言うなら、缶コーヒーでも奢ってくれよ。」
そう言って忠ちゃんは帰って行った。
携帯電話の時計を見ると、22時を回っていた。
「ヤベェー早く寝ないと起きれねー。」
そんな事を一つ呟くと、俺は家の玄関を静かにくぐった。




