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Triangle Relation  作者: 東京 澪音
2/23

イメチェン

暖かな日差しと優しい風が僕の頬を撫でていく。


このコミュニティ・スクールに通いだして二年目の春。

僕の心は少しずつ癒えていき、今では普通に誰とでもコミュニケーションがとれるまでに回復した。


晴秋はというと、暴力的な部分は残っているものの、以前よりも感情豊かで良く喋るようになっていた。

相変わらず友達はゼロだ。


あ、僕がいるから友達はゼロじゃない、1だ。


最近では、誰かが晴秋と何かあると、自然と僕が仲裁に立つことが常となっていた。

今ももめ事を仲裁したばかりだ。


「晴秋、気に入らない事があってもすぐ暴力に訴えちゃ駄目だよ。そんなんじゃいつまで経っても友達が出来ないよ。大抵の事は話し合いで解決出来るんだからさ。」


そう晴秋を諭すと、不貞腐れた顔で不機嫌そうに答える。


「宗人がいるから、別に友達なんていらねーよ。」


めんどくさそうにそう吐き捨てる。


「それじゃダメだよ晴秋。暴力で誰かを従わせても、そこから生まれるものは憎しみや悲しみだけなんだ。でも友達が増えれば、喜びや楽しい気持ち・嬉しい気持ちが心の中で膨らんでいって、毎日が自然と楽しくなっていくんだ。友達が沢山できたら、素敵な事がそれだけ沢山増えるって事なんだよ。時に必要な暴力もあるんだろうけど、それは正当な理由がある時だけだ。大切な何かを守る為とかね。僕らも来年は中学生になる。いつまでも子供じゃいられないよ。」


僕の言葉に頭を掻きむしる晴秋。


「あーもぅ!!宗人の話は難しすぎてよくわからないよ!お前は妙に大人びてるんだよ!お前こそもっと子供らしくしろよ!ついでに今話した事をもっとわかりやすく言ってくれ!」


気が短いと言うかなんというか。

晴秋はこういう事に直面すると癇癪をおこす。


これが暴力に繋がってしまう。

いわゆる負の連鎖ってやつだ。


「すぐに怒らず、相手の気持ちになって色々考えて。思いやる気持ちと笑顔さえ絶やさなければ、友達なんてあっという間に出来るものだよ。相手に嫌な気持ちを与えるんじゃなくて、楽しい気持ちを与える。そうすれば晴秋は間違いなく人気者になれる筈だよ。あ、女の子にもモテモテになるかもね!」


考えてみれば晴秋はマセガキだった気がする。

宝物だと言って、拾ったエロ本を見せてもらった事があるけど・・・。


なるほど、なるほど。


「本当か!?本当にモテモテになれるんだな!?」

僕の胸ぐらを掴むと少し興奮気味に尋ねてくる。


「離せ晴秋、苦しいって!」


お、悪い悪いつい、ね。

ってな具合で笑う晴秋。


「晴秋だったらさ、いつも不機嫌で誰彼構わず当たり散らす暴力的な女の子と、いつも笑顔で誰にでも優しい素敵な女の子だったら、どっちの女の子がいい?」


そう質問してみる。

まぁ、普通ならば後者を選ぶよね?


でも晴秋の答えは違ったんだ。


「両方だな!」


この答えにはいささかビックリした。

「どうして?普通なら優しい女の子の方じゃないの?」


僕はどうしてもこの答えを知りたくなった。


「だってさ、二人とも女の子じゃん。不機嫌な子には不機嫌な理由がある訳でさ、話してみたら素敵な子かもしれないじゃん!それと笑顔の女の子の方だけど、この子だっていつでもニコニコしてる訳じゃないだろ?不機嫌になる時だってあるだろ?つまりさ、俺から言わせればどっちも女の子って訳で、よく話もしないで二人に甲乙はつけられないって事。」


驚きを隠せなかった。

あの晴秋が、だ!あの晴秋がそんな事を言うだなんてさ。


うまく言えないけど、出来の悪い息子の成長が垣間見えて、ついホロっと涙してしまいそうになる親の気分だ。


「晴秋、そこまで人の気持ちがわかってるんだったら、なぜもっと皆と仲良くしないんだ!?今の晴秋なら簡単な事だろう!?」


するとまたもやめんどくさそうに答える。


「えー嫌だよ俺。だって対象が女の子だからそう答えたけど、男に興味ないし。」


駄目だ。

駄目過ぎる。


お前はどこぞのホストか!

さっきとは正反対に、ダメな息子のさらなる駄目さ加減に悲しくなっあ親の気分だ。


うーん・・・・。


「晴秋、女の子ってのはね、誰にでも分け隔てなく優しくて、時に面白く、頼りがいのある男の子が好きなんだよ。今の晴秋じゃ一生かかってもモテモテにはなれないよ!女の子に好かれたいんなら、笑顔を絶やさない、明かるく優しい男にならなきゃ!」


ダメ元でそう諭してみた。


「マジか!?でも確かにお笑い芸人とかモテモテだもんな!そうかそうか。俺に足りないのは面白さなんだ!中学生を目の前にイメチェンだな!よし、俺頑張る!」


この時の僕のアドバイスが良かったのか悪かったのか不明だが、この日を境に晴秋の性格は、少しずつ少しずつおかしな方向に変わっていくのであった。


晴秋ごめんよ~。



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