晴秋side
授業に受ける気分なんかじゃなかった。
いつ何時も神薙と一緒にいれる訳じゃないから、仕方ないって言えば仕方ないかもしれないけど、こんな学校にすらイジメまがいの嫌がらせがあるって言う事に腹立たしい。
神薙は綺麗だ。中学生とは思えない位に。勉強も出来るし、そこそこ運動神経もいい。俺と宗人以外の人達に対しては、とても人当たりも良く、神薙に淡い恋心を抱いてる男子も少なくないはず。
何度か告白されてるのを見た事もあるし。
ただやっぱりそれを面白くないって思ってる奴らが少なからずいる。特に同性からの嫉妬だろうな。
そういう連中を早目に何とかしないと、今日以上にエスカレートしても厄介だ。
そんな事を考えながら、宗人や神薙とは違う友人達がたむろする場所へ足を向ける。
「お、珍しいなベーヤンがこんな時間から顔出すなんて。」
そう言って缶コーヒーを投げてよこす。
俺はそれをキャッチすると、礼を言う。
ベーヤンてのはあだ名で、安部だからベーヤンになったらしい。
「サンキュー。まぁ、俺にだって授業をサボりたい気分の日もあるさ。」
ここは俺が所属する足柄倶楽部ってチームの溜まり場で、メンバーの一人の部屋だ。部屋って言ってもプレハブ小屋で、宗人や神薙とは違った毛並みの友人が集まる場所だ。
足柄倶楽部ってのは、この辺一帯でそこそこ名の知れた中学の不良6人が集まって出来たチーム。
ただ誰彼構わず喧嘩もしないし、金を巻き上げたり、盗みをしたりもしない。
気のいい連中が仲良く遊ぶってのが殆どだ。
「あーヤバィわ。俺飯食うの忘れてた。セッキーは飯食った?食ってないなら飯買いに行かね?」
俺に缶コーヒーをくれたのがセッキー。本名は石田。夜遊びなんかする時は大抵いつも一緒に行動することが多い。
「お!そう言えば今朝から何も食べてなかった気がするわ。どうする?いつもの総菜屋か?ただ今日はハンバーガーな気分なんだけどさ、ハンバーガーでどう?」
たまにはハンバーガーもいいなと思い、二人で駅前のハンバーガー屋まで行く事にする。
徒歩の俺はセッキーのチャリンコの後ろに乗せてもらう事になるのだが、またセッキーのチャリンコが凄いアメリカンな訳。
自転車なのにハンドルはもの凄いチョッパーで、自転車なのにフロントホークもとんでもない事になってる。
正直もの凄く痛々しいのだが、自慢げにそのアメリカンチャリで嬉しそうに走り回るセッキーの姿に、誰もそれを指摘する事が出来ない。
恥ずかしさを押し殺すと、セッキーのアメリカンの後ろにまたがる。
セッキーはアメリカンを発信させると、とってもご機嫌な声で"ジェームズディーンの様に"を口ずさみ始めた。
「セッキーその歌好きなー。よく歌ってるけど昔の歌なの?」
そう言うと、セッキーは答える。
「オヤジの青春時代の曲なんだってさ。不覚にもカッコイイって思っちまってさ!今じゃ一番のお気に入りだぜ。」
そう話すと更にご機嫌になったセッキーは、アメリカンを何故かジグザグ走行させながらバーガーショップへ向かった。




