嫌がらせ?
なんだかんだで、僕も神薙さんも晴秋も、皆んなとうまくやってるもんだと思ってた。
最初は敬遠されてた晴秋も、すっかりクラスの男子に溶け込んで、今じゃいつも話の中心にいる気がするし、神薙さんは結構面倒見いいから、男子と一部の女子に慕われていたりする。
ただそれを面白くないと思う女の子なんかも少なからずいて、時々凄い目付きで神薙さんを睨みつける子もいる。
僕はと言えば、あれ以来長さんと呼ばれるようになっちまったが、それなりにクラスメイトとは良好な関係を築く事が出来ている。
僕らの楽しい学生生活は、今以上に楽しくなるって信じてたんだ。
ある日の休み時間、神薙さんがクラス全員の数学ノートを教科の先生に提出しに行く途中、突然右側から出てきた女生徒にわざとらしく体当たりされて突き飛ばされた。
僕と晴秋は偶然にもそれを目撃してしまい、慌てて神薙さんに近寄り助け起す。
僕は散らばったノートを、晴秋は神薙さんを抱えつつ、睨みをきかす。
「おぃ!アンタ今のソレ、わざとかよ?それとも偶然かよ?どっちにしろよ、取り敢えず神薙に謝れよ!それがスジだろ?」
久しぶりに晴秋が怒ってるのを見た気がする。ぶつかってきた女生徒は、黙ったまま下を向く。
「晴秋まって。私は大丈夫だから気にしないで。周りをよく見てなかった私にも非はあるわ。だからね、落ち着いて、ね?」
納得出来ないって雰囲気タラタラな晴秋だったが、神薙さんの言葉に渋々だが怒りを鎮めた。
「おぃ!次同じ事やったらよ、俺は女だろうと容赦しねーからな。アンタ顔覚えたから。」
晴秋の脅しが効いたのか、女の子はビックリして慌ててその場を走り出した。
「はい神薙さん。これでノート全部だよ。あ、折角だから半分手伝うよ。それと晴秋さ、いくら頭きてもあんな言い方しちゃダメだよ。晴秋が怖い人って学校中に知れ渡ったら、ハーレム化計画は頓挫するよ?だから次回からはもう少し柔らかくいってあげて。」
どこか不満そうに晴秋が答える。
「お前だって見ただろ!ありゃ〜どう見てもわざとだろ!俺はよ、友達に手を出されて落ち着いていられる程、冷たい人間じゃねーんだよ。神薙よぅ、俺は今度も同じ様な事があったら、容赦しねーよ。お前もさ、なんかあったら遠慮しないで俺や宗人を頼ってくれ。俺達3人は五分のダチだ。それだけは忘れるな。」
そう言うと、晴秋は教室とは違う方へ歩いて行っちまいやがった。
僕は神薙さんのノートを半分持って、一緒に職員室に提出しに行く。
神薙さんは何も言わなかったけど、多分これが初めての事じゃないはず。その証拠に、最近膝や腕などに青タンや絆創膏が目立つ様になったからだ。
晴秋はこれに気づいていた?
これからは僕も神薙さんの様子を伺う様にしなくちゃな。友達を、対等な友達と思えるこの子を守らなければ!
そんな決意をしながら教室に戻った。
4時間目、晴秋の姿はどこにもない。
多分相当頭にきたんだと思う。
僕らはそれぞれの思いを胸に、気だるい4時間目の授業をなんとか乗り切った。
昼休み、晴秋が戻ってきた。
さっきとは違って、いつもの晴秋といった感じだった。
「おっ!お二人さん悪いんだが、俺様今日早退するわ。なんか体調優れねーしさ。だから適当に言っといてよ?って事でお先に〜」
そう言うと僕らの返事を聞かずにダッシュで教室を出て行った。
「しょうがないな〜晴秋は!神薙さん、取り敢えず一緒にご飯食べちゃおうよ。
腹が減っては戦は出来ぬ、だよ。」
そう言うと神薙さんを急かし、いつもの空き教室に向かった。
「そう言えば、5時間目小テストだったわよね?平均点取れなかった場合、罰として毎日放課後に補習を2時間受けさせるって先生言ってたけど、晴秋大丈夫なのかしら?」
いや大丈夫なはずないでしょ⁉︎
まぁ、自分でしでかした事だから、自分で竭拭いてもらうしかないんだけどさ…ご愁傷様晴秋。
そんな晴秋の確定した未来の悲しみを話のネタに、僕らは珍しく二人で昼食をとるのだった。




