始めて3人で登校した日
朝6時近くに目が覚めた僕は、着替えを済ませ近くの河原まで散歩に出かける。
毎日の日課ではあるものの、毎朝よく続くな〜って我ながら感心する。
綺麗な花をいくつか摘み取ると、家の前の道路の角に建てられたお地蔵さんにその花を供えると、そっと手を合わせ静かに目を閉じる。
この場所は妹の亡くなった場所で、花が大好きだった彼女が寂しくないように、僕は出来る限り毎朝ここに花を供える。
日課が終わると帰って朝食だ。
玄関を開けたら目玉焼を焼く音がしたので、今日はパンと目玉焼、ウィンナーを二本とコーンスープと言ったところだろうか?
「ただいま。お、やっぱりな。ビンゴだよ!」
そんな事を言いながら、テーブルにつく。
「あ、おはよう父さん。」
新聞に目を通しながらコーヒーを飲んでいる父さんに声を掛ける。
父は新聞を読むのを一旦やめ、僕の方に向き直る。
「宗人おはよう。どうだい中学校は?友達はもう出来たか?可愛い子はいたか?」
楽しそうに質問をしてくる。
「あ、うん!友達は晴秋以外に一人出来たよ。しかも物凄い美人なんだ!」
ほうほう。
などと相槌を打ちながら顎の部分を手のひらで触る。
「その〜なんだ、今度〜一度ウチに連れてきなさい。宗人の父として一度挨拶せにゃならんな。」
そんな話をしていると、母がコーンスープをよそって運んできてくれる。
「あら!そんな美人な子と仲良くなったの?凄いじゃない宗人!で、その子と母さんどっちが綺麗?」
食べ物を目の前にその質問はひどいと思うが、背に腹は変えられない。
僕は渋々答える。
「えっと、か・かあさんdeath!」
ギロッとコチラを見ながら目の前にコーンスープが置かれる。
「本当?なんか少し最後が変だったけどまぁいいわ。宗人には母さんのウィンナー一本あげちゃう。父さんは若い子の話してたからウィンナー無しね!」
父さんは悲しそうな顔で母さんを見た。
御愁傷様です父さん。
食事を終えると一旦部屋に戻り制服に着替える。顔を洗い髪をとかしたら、父さんと一緒に家を出る。
「行ってきます!」
和田河原駅まで歩いて、そこから電車で小田原まで。
父さんと最近のニュースなどの話をしながら電車に揺られ、気がつくとあっという間に小田原についた。
「じゃ、父さん行ってきます!」
そう言うと、僕は片手をあけて父が乗る電車が走り去るのを見送る。
それから西口ロータリーにある北条早雲の像まで歩いて行くと、そこには既に神薙さんが待っていた。
「おはよう神薙さん!早いね。晴秋はまだ?」
そうたずねてみる。
「おはよう宗人。まだ晴秋は来てないわ。まぁ、待ち合わせまでまだ10分程あるし、もうすぐ来るわよ。」
神薙さんは携帯の時計で時間を確認すると、バックの中にそれをしまう。
まぁ、晴秋だからね。どうせギリギリでしょ?などと考えていると、喫茶ケルンの方から猛ダッシュでコチラに向かって来る茶髪頭が見えた。
「むねひとコるぁ〜っ‼︎」
なんだか知らないけど朝からだいぶご立腹の様子。
「どうど〜ぅ。」
そう言って晴秋をたしなめる僕。
「俺は馬じゃねぇーよ。ブン殴るぞ!」
鼻息荒く僕を威嚇してくる。
「それよりお前、昨日の夜俺を特急列車に放り投げて帰ったろ!お陰で気がついたら終点東京だったよ!そんでもって特急券買わされて、今朝始発で地元に戻ってきたわ馬鹿野郎!」
そんな話をしていると神薙さんが晴秋の肩に手を置く。
「間に合って良かったじゃない!さすが晴秋ね。」
笑顔でそんな事を言うあたり、だいぶ晴秋の扱い方がわかってきた様子。
「お、おう。まあな!」
晴秋が馬鹿で良かったよ。取り敢えずこの件は一件落着だな。
「さ、そろそろ行こうか。僕ら3人ではじめての登校だ!」
たわいもない話をしながら歩く通学路も、3人だと今までよりも楽しいと感じる。
桜舞う坂道を登って行くと、僕らの学校が見えてきた。




