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Triangle Relation  作者: 東京 澪音
10/23

ラーメン屋にて

うらちょう商店街。

旧名を栄通り商店街という。


つい最近までは商店主の高齢化から活動が衰退し、訪れる人たちが激減。

このままではまずいと、若手が奮起して立て直しを図り、活気が戻りつつある。


それでもまだまだ知名度が低いのだが、ここは知る人ぞ知るディープスポットでもある。

何がディープなのか?飲食店がディープなのだ。


その中でもひと際異彩を放つのがこのラーメン三郎・・・との事だ。


「いよいよこの日が来たわ。行きましょう。」

店の前でそう呟くとラーメン三郎の扉を開ける。


「おぃ宗人、神薙キャラ変わってね?」

キャラが変わったとか変わらないとか。僕らは知り合って間もない訳だからその辺はよくわからないけど、何となく言わんとしている意味は分かった。


「うーん、それが判るほどにまだ親しくないからわからないけど、確かにイメージする神薙さんとは少しかけ離れてるかな。でもそれは僕らが神薙さんに抱くイメージであってさ・・・。偏見の目で見ちゃいけないと思うんだ。兎に角、これから知っていけばいい事だよ。」


そう晴秋に答え、僕らも神薙さんの後に続き店内に入る。


店に入ると開いている席に座り、メニューを眺め注文する。


「えーと、ラーメン豚入り一つと、二人は何にする?」

晴秋と神薙さんに注文を聞く。


「俺はラーメン大の豚入り卵ダブル。神薙は?」

晴秋の問いに少し考え答える神薙さん。


「私はラーメン大豚入り、野菜・油・辛めマシマシで!」

それを聞いた店主が若干驚きつつ聞き返す。


「お嬢ちゃん、本当に大丈夫かい?ウチの事知らずに注文すると後で泣きみるよ?」

このやり取りの数分後に知った事だが、この店は結構有名なデカ盛りの店だったらしく、食べきれないのではと心配した店主の優しさから出た言葉だった。


「大丈夫です。その辺はこの店に来る前から調査済みです。ラーメン大豚入り野菜・油・辛めマシマシお願いします。」


毅然とした態度の神薙さんの気迫に押され、店主はそれ以上何も言わなかった。


「カッコいいな神薙!よしっ、俺もマシマシでお願いします!」


ナメていた。

僕らは完全に三郎をナメていたんだ。


注文し終えると、僕らはそれぞれ改めて自己紹介する。

住んでいる場所や趣味。僕と晴秋にに至っては、出会いから現在までを掻い摘んで神薙さんに説明した。


「そう言えばさ、さっき神薙電話で境内の掃除とか言ってたけどさ、実家は寺か何かか?」

実は僕も気になっていた。


掛けた相手が父親という事までは分かったが、そこから先が判らない。

晴秋が言うように、境内の掃除と言ったらお寺か神社と言う事になる。


「家は秦野にあるお稲荷様を祀った神社なの。ソコソコ有名なんだけどね。境内の掃除は昔から私の仕事で、その他にも社務所の手伝いなんかもしているわ。今日は入学式が終わったらすぐに帰って手伝いをするつもりだったんだけどね。特にやる事もないし。」


確か秦野に有名な神社がある事は聞いた事がある。

でも詳しい事は判らない。家に帰ったらPCで調べてみよう。


「へぇー、って事は神薙は巫女さんなんだな!やっぱあれか!?巫女服とか着ちゃうのか!?近々お邪魔するわ!」



邪な事を考えているであろう晴秋。


「なんかその言い方嫌だわ。コスプレしてるみたいで。せめて巫女装束っていって欲しいわ。」


そんなやり取りの直後、先程頼んだラーメンが運ばれてくる。


「ラーメン大豚入り野菜・油・辛めマシマシお待ち!で、こっちが卵ダブル。」


それを見た晴秋と僕は言葉を失う。


「な、んだ、コレ?俺が想像していたラーメン大じゃねーぞ。例えるならアレだ、マウンテン!」

そう言ったきり急に大人しくなる晴秋。


「まぁ、でもこれで千円でしょ?安いんじゃないかな?僕は大盛りにしなくて良かったよ。けどさ、神薙さんは大丈夫なの?」


すっかり蒼くなっている晴秋を横目に尋ねると、意外と冷静そうな神薙さんがいた。


「問題ない。ネットとかで調べて想定済みだから、多分イケるわ。じゃあ、のびない内に食べましょう。頂きます。」


そう言うと、目の前の富士山の様なラーメンを黙々と食べだした神薙さん。

完全にその量の多さにビビっている晴秋。

普通に美味しくラーメンを頂く僕。


三者三様、様々な思いを胸に黙々とラーメンを食べる僕ら。

30分ほどすると全て食べ終えた神薙さんがそこにいた。


「ふーっ。少しキツかったけど、まだ若干の余裕はあるわ。次回は豚ダブルにしようかしら?」

それを聞いた店主は驚きを隠せない様子だった。


晴秋は途中でギブアップ。食べきれない野菜と麺を僕が肩代わりして何とか食べきった。

「俺はもう二度とチャレンジしないぞ!ラーメンは美味しく最後まで食べるからラーメンなんだよ!」


誰もチャレンジしろとは言ってないし、マシマシにしたのは晴秋自身の意思だ。


「兄ちゃん、お前さんはよく頑張ったよ?男には負けると分かっていても、戦わなきゃならない時があるって、かの有名な宇宙海賊も言ってたしな!ただ、たまたま相手が悪かっただけだ。次は大丈夫!イケるさ!」


よく分からない慰めを店主に掛けてもらい号泣する晴秋。


「オヤジ~!!」

この店主、なんだか晴秋と同じ匂いがする様な気がする。


そんなこんなで、店内が大分混雑してきた為、僕らは店を後にした。


「ご馳走様。今度また違うお店を探しておくから、一緒に行きましょう。その時は私がご馳走するわ。」

少し前とは違い、角の取れた様に優しく微笑む神薙さんに返事をすると、僕らは小田原駅に向かって歩き出した。




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