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第6話 選抜試験

翌日。


ハンクは古ぼけたバックを持ち、空港の滑走路にいた。依頼完了を報告するため、とりあえずアメギリア連邦に戻ることにしたのだ。この間の騒ぎは幾らかは治まったがまだ衛兵の目が厳しい。至るところで検問がひかれている。ハンクは隣のラビア王国を経由して連邦に戻ろうとしたが王国に行く道も検問がひかれ完全にアウトだった。


ハンクは正規のルートは諦め裏の人脈を使い、民間の輸送機に乗れるように掛け合い、なんとか輸送機に乗れる約束を取り付けた。


賄賂を渡して。


「悪いな、急で。」


輸送機のパイロットは一つの札束を数えながら言った。


「大丈夫ですよ、旦那には感謝してますし。それと旦那のスペースは確保しましたよ。奥の右側にどうぞ。」


「あいよ。」



パイロットが貨物室の奥を指差すとハンクは貨物室に入って行く。指示された奥の右側に歩いていくと空いたスペースに毛布と椅子が置いてあった。荷物が囲まれているが椅子があれば問題ないだろうとハンクは思った。


ハンクは荷物を脇に置いて椅子に座り、腕時計を見た。時刻は朝の9時、アメギリアには夜の8時ごろに着く。それまでは寝て時間を潰そうとハンクはもう一枚の毛布をかぶりそのまま横になった。その間輸送機は滑走路を離陸したらしく窓の外は雲が見えていた。


ハンクは大きなあくびをし、まぶたをゆっくり下ろしていき眠った。








グアイ暦1830年5月9日


アメギリア連邦

フォルニア州ブラフ陸軍基地



今日は連邦軍の兵士選抜試験の日。ここには多くの若者が兵士になる試験を受けるため集まっていた。人間、獣人、亜人も含めた多種多様な種族が基地の格納庫にいた。


「やれやれ今回こんなにいるのかよ。」


一人の長身の狼獣人がぼやいた。彼の名はハンク・ギードル。今日はこの選抜試験を受けるために来た。ハンクは兵士になる気は微塵もなかったが兵士になれば色々と特権が付くと耳に挟み志願したのだ。


(兵士になれば寮に入れるし、飯も三食付きだからな♪これで酒場の用心棒で生計を経てる必要はなくなるぜ。)


ハンクは少しにやけた。しかしハンクは周りを見た。自分と同じ考えを持つ人間はここに大勢いるようで全員ゴロツキときた。犯罪者や用心棒、チンピラなどがいる。


すると格納庫の入口付近に軍服を着た男が三人入って来た。


「全員集まれ!これから試験内容を説明する!!」


格納庫内に響く声に全員が一斉に三人の前に集まった。ハンクもそれに続き、歩いて行った。


「では説明を始める!一回しか言わないのでよく聞け!」


軍服の男の一人が試験内容を説明し始めた。試験内容は簡単な物だった。


1,支給された地図に載っている場所に行く事。


2,脱走又は違反した者は厳しい処罰を受ける。


この二つを守り道を歩くだけの試験だった。全員から笑い声がする。


「簡単じゃねぇか。」


「目をつぶってでも出来るぜ!」


と言うゴロツキもいた。だがハンクは少し疑問を感じた。


(簡単すぎる…なんかあるな。)


ハンクの気持ちを知らずゴロツキ共は意気揚々としていた。


「試験は今から20分後丁度に行う。それまでこちらが支給した服と装備を着用するように!」


軍服の面接官はそう言うと格納庫の外に出ていった。それに入れ替わるように大量の装備を載せたカートが入って来た。


カートには連邦軍兵士の戦闘服とバックパックが載せてあった。でもそれとは別のカートが運ばれてきた。そのカートには連邦軍のライフルがあった。試験官の一人がライフルの一つを持ち言った。


「諸君らは今から実際にこれらを着用しろ!それとこのM667ライフルは君らを守る武器として支給する!」


なんだって?ライフルを持つ?ハンクは試験官の持つライフルを見た。M667ガバンドライフルは連邦軍が制式採用している主力武器の一つだ。ボルトアクション式で装弾数は10発、普通の猟銃を軍用に転用した物でもある。ハンクはこのライフルを何回か用心棒の仕事で使った事がある。そんなライフルを身を守る武器として渡す。


確認だがここには犯罪者もいる。そいつらにそんな武器を渡して大丈夫だろうかとハンクは思った。試験官は他にもナイフや手榴弾、拳銃と地雷まで渡してきた。


(おい…。これ普通の選抜試験だよな?)


普通は訓練をしてから実弾を渡すはず。でもここにいる全員は幾らかの武器を扱った犯罪者と素人ばかりだった。しかしここに来た以上試験を受けるしかない。ハンクはとりあえず支給された装備一式を着る事にした。


試験官の説明を聞きながらハンクは装備を身体に着けていく。正直自分の身長に合う服が有るか心配もしたが大柄な種族専用の物もあったのでなんとか着る事ができた。一通りの着替えを済ませたハンクはふと周りを見た。全員手こずっている中一人の男は慣れた手つきで素早く着替えていた。


(お?同族か。)


その男はハンクと同じ白い毛並みの狼獣人だ。男は着替えが終わると支給された武器の動作確認をし始めた。


(随分速いな…。まるで訓練された兵士じゃねぇかよ。)


感心しているとその男はハンクを見ると近付いてきた。目の前に来ると喋りかけてきた。


「何だ?俺に用か。」


「君も今日の試験を受けるのか?」


「ああ、そうだ。」


「武器の動作確認はした方がいい。いつでも使えるようにしないと。」


「お、おう!」


男はそう言うとまた元の場所に歩いて行った。ハンク

は戸惑いながらも武器の動作確認をした。何回か使用したとはいえ確認に手こずる。


「時間だ!!集まれ!」


丁度時間になったらしく試験官が吠えた。ハンクは武器を持ち、急いで駆けていく。全員が試験官の前に集まると試験官が言った。


「それでは試験を始める!時間は無制限、指定された場所に行く事。合図は拳銃の発射と同時!」


試験官がそれだけ言うと手に拳銃を持ち、空に向けて引き金を引いた。発砲音と共に格納庫にいた全員が走り出す。ハンクもそれに続き走り出した。格納庫から全員居なくなり、残された試験官が隣にいた眼鏡の男に話し掛けた。


「さて…今回何人ぐらい残りますかな?」


眼鏡の男は眼鏡の位置を合わせながら。


「まぁ全員は無理でしょうな。素人ばかりです。例外を含めればですけどね。」


眼鏡の男はコートのような軍服のポケットから手のひらサイズの無線機を取り出すとどこかに連絡をとり始めた。


「私だ、今そちらに向かった。そうだ…。最初に見えた奴から潰すように。」







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