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僕らの夢  作者: SHIORI
6/6

VOL.5 俺とあいつとオムライス。

その後俺はむさぼるようにただひたすらに寝た。

出来ることなら全てを忘れてしまいたかった。

お袋のことも、そしてあの女のことも。



夕方。

俺はふと目を覚ました。

起きたばかりでまだぼーっとする頭のままベランダに出ると、空がオレンジに夕焼けしていてすごくきれいだった。


俺は小さい頃から空が好きだった。

晴れ渡った青い空、

オレンジの夕焼け空・・・。

きれいな海と空が重なり、そこに水平線が見えたならサイコーだ。

つらいときはいつも空を見ていた。

悲しいときはいつも空に励まされていた。

どうして俺は落ち込んだとき空を見てしまうんだろうか。

もしかしてそれは俺がまだ頑張れるからなのかな。



しばらく空を眺めていると不意にドアをノックする音が聞こえた。


そういえば晋也が来るかもとか言ってたっけ。

たまにはゲーセンでも行こうかな。


「晋也、開いてるから入ってこいよ」

だがなかなかドアは開かない。


「晋也?」


俺はドアを開けた。

するとそこにいたのは晋也ではなく、あの女だった。西原小雪とかいう、あのお説教女。


「お前・・・・・・」


言葉を失う俺の前に奴はスーパーの袋を掲げた。


「夕飯、作ってあげようかと思って」


「は?」


「大丈夫、自慢じゃないけど料理は上手い方だから」

「ちょっと待てよ」


「いいから、いいから」


制止する俺を押し切って家の中に上がり込み、奴は台所で何かを作り始めた。

俺はもうあきれて何も言えず、ただ奴の様子を伺っていた。


「もう、汚いなあ。台所は食べ物を扱うんだからきれいにしなきゃ」


もう何年も掃除してない埃まみれの台所にそう文句を言っている。

こいつ、大人しく見えるが実は・・・・・・?



しばらく経って奴はオムライスを作りあげた。

俺の分と自分の分を皿に盛り付け、差し出した。


「はい、どうぞ」


「いらねえよ」


「せっかく作ったのに」


そう言いながらも奴は自分の分を一口食べた。


「・・・・・・ん? 美味しい」

自分で作ったくせに。


「ほら、石田くんも食べなよ」


「だからいらねえって」



すると奴は泣きそうな目で俺を見てきた。

これだから女ってやつは。


「はいはい、分かりました。食えばいいんだろ、食えば」


俺はオムライスを一口食べた。



・・・・・・ん?

なんだ、これは。

美味しい!!



俺は気がついたら夢中で食べていた。

奴はそんな俺を嬉しそうに見ている。



どうしてだろう。

久しぶりに何かを食いたいと思った。

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