VOL.3 聖夜に舞い降りた天使
俺は晋也が帰ったのを確かめると、もう一度寝ようと布団に戻った。
だがなかなか寝付けない。なんでだろう。
体は眠りたいはずなのに脳みそがそれを許さない。
ガキみたいに羊の数を数えてみても、
音楽をかけてみても、
俺が眠りに落ちることはなかった。
寝るのをあきらめて俺は起き上がり、朝飯のカップラーメンを用意することにした。
やかんでお湯をわかしながら不意に壁にかけられたカレンダーを見ると、あることに気がついた。
今日は12月24日。
クリスマスイブ。
なんだか不意に昔の記憶が蘇ってきた。
そわそわしながらお袋の帰りを待っているガキの頃の俺。
時計は12時をとっくに過ぎている。
しばらく待って、サンタの恰好をしたお袋が大きなケーキとプレゼントを持って帰ってくる。
ささやかだけど俺もお袋も幸せそうに笑ってた。
何故だか知らないが不意に涙がこぼれた。
あんな奴、もうお袋なんかじゃないって思ってたはずなのに。
もう二度と思い出したくなんてなかったはずなのに。なんでだろう・・・。
なんであんな奴のこと、思い出しちゃったんだろう。
不意に部屋のドアを叩く音がした。
多分晋也が忘れ物でも取りに来たんだろう。
すぐに分かった。
だってこの家に誰かが訪ねてくるなんてこと、滅多にないから。
「はい」
俺は涙をタオルで乱暴に拭き、扉を開けた。
相手の顔を見て俺は立ち止まった。
聖夜に舞い降りた天使。
そんなものを見たような気がした。