VOL.1 俺。
俺、石田翔。15歳。
雪の降るある寒い日、小さな予備校の前を通ると、せっかくの冬休みだというのに必死な顔した奴らが参考書片手に建物の中から出て来た。
多分奴らは中3で、数ヶ月後に控えた受験ってやつのために必死で勉強してるんだろう。
ほんとなら俺も中3で、今頃あいつらと同じように受験生やってるはずだった。だけど俺はもう、何年も前に制服を脱ぎ捨てた。
学校なんて行かない。センコーたちのオモテヅラだけのきれいごとであふれたつまらない学校には。
生徒たちがセンコーに幼稚な反抗かましてるくだらない学校には。
学校なんて何の意味があるんだろう。
勉強するため?
友達を作るため?
将来幸せになるため?
いや、そんなのは違う。
どうせ意味なんて最初からないんだから行かないほうがよっぽどマシだ。
だから俺は学校なんて行かない。
俺が学校に行かなくなった最初の頃、『心配』というタテマエのもとによくセンコーどもが家に来たり電話をしたりしてた。
中2の頃の女の担任なんかはよく飯を作りに来てくれたっけ。
ウザかったけど、実はほんの少しだけ嬉しかったりもした。
だけど最近ではそんなこと全くない。
中3になって担任が男に変わったからなのか、それともやっとあきらめてくれたのか。
まあ、俺にはどうでもいいことだけど。
ついでに言っとくが、俺には親がいない。元ヤンだったという親父は俺がまだ幼かった頃にバイク事故で死んだ。
無理矢理な走り方をしていて大型トラックとぶつかったらしい。
それからは飲み屋をやっていたお袋と二人きりで暮らしていたが、そのお袋もちょうど3年前のクリスマスに好きな人が出来たからとだけ言い残して家を出て行った。
それからというもの、俺はたった一人で生きている。情けない話だが、俺は捨てられたんだ。それはまるで小さな犬のように。
そのとき俺は分かった。
世の中に愛なんて存在しない。
俺は愛なんて信じない。