4 次々にうめき声や絶叫、怒号があがり、一時その場は混乱し騒然となった
前門の虎後門の狼。挟み込まれてしまった、というのが一番適切だろう。
そうしているうちにも、ぞくぞくと群がり集まってくる。
ついには数十人の危なっかしい連中の集団に、おれとツキミは周囲を取り囲まれてしまった。
そのうちのひとりが鉄パイプを振り上げて向かってきた。
ツキミは刀を振って斬り倒した。 が、すぐに次の奴が襲いかかってくる。角材を振り回し、殴りつけてきた。
おれは身を屈めた。
ツキミは接近して、男の懐に一撃を加えてたおす。するとまた次の奴が向かってくる。またもツキミがはね返し、倒した。
今度はふたり同時に来た。振り下ろされたバットをおれは後ろに飛び退き避けた。
ツキミが一振り、二振り。
二人の男はバタ、バタと倒れた。
これだけ倒しても、周りは人の山だ。ツキミがいくら倒したところで、すぐに次のやつが現れて襲いかかってくる。
キリがなかった。そしてまた、ひとりが様子を伺って攻撃して来ようとしている。
ツキミは肩で息をしていた
。いくらツキミでも数が多すぎるみたいだ。
おれたちを取り囲む黒い人の壁は、ガンガン圧迫感を与え続けてくる。いつまでこの状態に耐えられるか、打開する方法はあるのだろうか、と考え始めたとき、
「ぐわぁっ!」
という、うめき声が、取り囲む輪の外側から聞こえてきた。
「どうした?」
「ぎょぇっ!」
「ぎぅんっ!」
と、次々にうめき声や絶叫、怒号があがり、一時その場は混乱し騒然となった。
人の壁がだんだんと形を変えて、崩れていった。
連中の悲鳴や絶叫は止まない。ますます混乱は激しくなる。次第に連中で塞がれていたおれたちの前に、一筋の道ができた。
その先にいたのは、如意棒と改造銃をそれぞれ構えて奴らに立ち向かう、鹿毛井と平矢間さんだった。
「待たせたな」
と、鹿毛井は二本指を顔の近くに立てて、
「よっ」
という風に言った。
なに格好つけてんだよ、本当に格好いいじゃねえか!
おれはツキミの手をつかんで、その場から抜け出した。
敵の陣形はバラバラになり、いったんはピンチを抜け出すことができた。
「囃子、早く行けよ」
鹿毛井は殴りかかってくる敵を相手にしながら言った。
「桐咲さんを止めに行くんだろう」
如意棒で激しく打ち付けて、相手をねじ伏せた。
「どうだ!」
と、勝利のポーズを決めて雄たけび。
「どうして鹿毛井たちがここにいるんだよ」
「まえに言っただろ。おれも桐咲さんの暴走を止めるのを手伝うって」
そうか、そうだったな。確かそんなこと言ってたっけ。すっかり忘れてたぜ。
「だが、あの時とはかなり状況が変わっちまったぞ。それでもいいのか?」
「いまさら遅いだろ」
「ああ。助かる」
「わかったなら早く行け、ここはおれたちが食い止める」
と、うしろからおれに襲いかかってきたやつを、鹿毛井が棒で突いて倒した。また助けてもらった。
平矢間さんは銃声を轟かせて威嚇している。
「囃子くん、大丈夫?」
と、平矢間さんが言った。
「ああ、鹿毛井と平矢間さんのおかげで助かったよ」
「そう。よかった」
平矢間さんは笑みをみせた。
「ここはわたしと鹿毛井くんが引き受けるから、早くツキミちゃんとかおりちゃんの所へ行って、かおりちゃんを止めてあげて」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「本当はね……わたし、一度かおりちゃんのことを応援しようと思ったこともあったんだ。でもね、やっぱりそれはいけないことだってわかってたから、すぐにやめたの。ごめんね。一度でもそういうふうに思っちゃって……」
哀しそうに笑う彼女の表情を、襲いかかってくる男が変貌させる。
キッと力強い目つきになった平矢間さんの改造銃が火をふいた。
「だから、今はちゃんと、囃子くんのことを応援してるからね」
「理、行こう」
と、ツキミが呼んだ。
「ツキミちゃんが呼んでるよ。早く行ってあげて」
「わかった」
と、おれは言って、
「それじゃあ行ってくる。頼んだぞ、ふたりとも!」
平矢間さんが銃をぶっ放し、相手が怯んだところに、鹿毛井がすかさず如意棒を振り回して数人を一気になぎ倒した。道が開いた。
おれとツキミは、また桐咲を目指して、走り出した。
西校舎を出た。
あたりから怒号や悲鳴が聞こえてくる。
追って来るやつはまだいない。
鹿毛井たちががんばって塞き止めてくれているのだ。
それにしてもあの不良ども、おれたちを狙うだけでなく、学校を破壊することをも楽しんでいる。
校舎脇を走り抜け、東校舎の前にるいた。疲れたから少し歩こう。
あたりりの様子を慎重にうかがいながら、歩みをすすめる。
「ねえ、理。桐咲さんどこにいるの?」
「わからねえ」
だけど、大多数のやつらが東校舎から入り込んできやがったから、後方にいた桐咲はたぶん入口付近にまだいるはずだ。
会って、おれがあいつを全力で止めてやる、必ずな!




