プロローグ
小説はほぼ素人です
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その日は昼だというのに空は暗かった。
小雨が降り、微弱ではあるが雷鳴が聞こえていた。
両手は頑丈な鎖で何重にも巻かれ錠がかけられて、周りを甲冑で身を包んだ男たちが囲んでいる。
目の前には断頭台が置かれていて死を実感できた。
「これより3657番の刑を執行する。」
刑を執行するためのものと思われる錆付いた斧を持った男が野太い声をあげた。
それに伴い、頭を断頭台に押さえつけられる。
「刑を行うにしては随分といい場所だな」
この言葉がその時の最後の抵抗だった。
そこは眺めの良い丘であり、雨で視界が悪いとはいえ目の前に広がる帝国の首都の眺めは絶景だった。
本来は石の壁に囲まれた地下の狭い処刑場で行われるはずが、なぜか自分だけは他の場所に連れられた。
そこにどんな意図があるのか、ずっと考えていた。
挑発の意と単純な疑問を込めて言った言葉だった。
「笑みまで浮かべるとは随分と余裕そうだな、恐くはないのか?」
どうやら笑っていたらしい、他人に言われるまで気づかなかった。
自分が思っている以上に余裕を感じているようだ。
思えば自分が死ぬ間際だというのに体の震え等は一切無かった。
「お前に言われて気づいた。自分でも驚く程に落ち着いていられる。まるでこれから助かるのがわかっているかの様にな」
「助かる?貴様はこれから処刑されるんだ。この斧でなあ!」
男は勢いよく斧を振り下ろしてみせた。
そして斧はすぐ目の前に突き刺さり、強い衝撃が伝わった。
しかしながら驚きはしなかった。
「面白くもない奴だ。もういい、次はその首を落とすぞ」
無反応だったことに腹を立てたのか、男は再度斧を構えて振り下ろす。
今度は正確に狙いを定めてくるだろう。
しかしいつまで経っても斧が首を落とすことはなかった。
「何だ……一体…」
代わりに地面に転がったのは周りを取り囲んでいた男達の頭だった。
夥しい量の血が地面に流れおちていた。
目の前には紅く染まった剣が置かれていた。
「誰の仕業かは知らんが予感が当たったな。」
一本の剣と斧を手に取り、処刑を免れた男はその場から姿をけした。