彼女の思いは
あたしに晃さんという新しい友達が出来た。
中学の時の一件以来、あたしは他の人と話すことを避けてきた。
そのことは別に悲しいことではなかった。
あたしの傍にはいつも楷渡がいたから、楷渡はあたしの幼馴染でとっても優しくしてくれている。
楷渡といると、どんな時でも楽しい。
そして、それが今は2倍になった。
ううん。2倍何かじゃない。もっと、それ以上・・・
どうしてかな?
何でだかわからないけど、晃君と一緒にいると楽しいし、嬉しい。
晃君ともっと一緒にいたいって思う。
楷渡以外にこんなことを思ったのは初めてで、驚いた。
でも、もっと驚いたのは楷渡以上に一緒にいたいって思ってること。
この想いは何だろうかって、ずっと疑問に思っていた。
そんなある時に、晃さんと二人きりになった放課後に、晃さんに突然キスをされてしまった。
気持ち悪いとか、嫌だとか、普通はそういうの思うんだろうけど、あたしは嫌だとは思わなかった。
だけど、いきなりで驚いたことと、何故だか少し悲しくなって突き飛ばしてしまった。
どうして悲しくなったのかは自分でもよくわからない。
だけど・・・
それからしばらくは晃さんはあたしに話しかけて来なかった。
あたしは晃さんが気になったけど、いつか向こうから話しかけてくるって思ったから、何も言わずにいつも通りに過ごしていた。
そうしている毎日はとてもつまらないもので、今までと同じなのに、毎日辛かった。
どうして、ただ晃さんが話しかけてこなくなっただけなのに、楷渡が仕事で一緒にいれないのはいつものことなのに・・・
どうして?
そんな疑問を抱えながら、今日は図書館に向かった。
楷渡の仕事が終わりそうだから、図書館で直接帰るのを待つことにした。
そしたら・・・『あの・・・』
晃さんと遭遇した。
あたしは普通に話したかった。
だけど・・・『ごめ・・・でも、あっ・・・』
会ったら普通に話そうって思っていたのに、何だか急に恥ずかしくなって、言葉になっていたかもわからないことを言って飛び出してしまった。
正直何を言ったか自分でもわからない。
あたしの馬鹿。
どうして素直に晃さんと話そうとしなかったのだろうか。晃さんが話しかけようとしてくれていたのに、これじゃあこの前のことを怒って
避けてるみたいに思われちゃうじゃない。
あたしって本当に他人と関わるのが苦手で、だからどうしていいかわからなくて、だから体が勝手に動いちゃうんだよね。
きっとそれだけが原因だよ・・・
だけど、あたしのその考えは、家に訪ねてきた楷渡によって覆された。
『なあ沙希。お前晃に・・・』
楷渡は怒った顔をして家に上がってきた。
そして言いにくそうに晃さんの名前を言った。それだけで何を言いたいのかわかったあたしは、楷渡に『あたしは怒ってないよ』と言った。
そしたら、楷渡は怒った顔から、急に真剣な顔になって言った。
『お前、何されたんだ?』
『えっ?』
『キス・・・された話しじゃないの?』
その話しだと思っていたのに、楷渡は違う話しをしていたのだろうか?
でも、他に晃さんの話しで何かあるだろうか?
思考を巡らせながら、キョトンとしていると、楷渡は『そうか』と納得したような、しかしどこか腑に落ちないような顔をしていた。
『楷渡?』
少し心配そうに聞くと、楷渡は小さく『よし』と言って、あたしの目をまっすぐに見てきた。
『お前、晃のことが好きなんだな』
『えっ』
いきなりとんでもないことを言うものだから、あたしはすっとんきょんな声を出してしまった。
『だってそうだろう。普通嫌いな奴にされたら怒るか、何かするだろう。そうじゃなかったら好きしかねえだろ』
楷渡はきっぱりと言い切った。
そうなのかな?
あたしは今まで友達だっていなかった。
そりゃ、小学校の頃は少しはいたけれど、本当に女子が数人程度だった。
楷渡と以外はほとんど一緒にいることはなかった。
だから誰を好きとか、誰を嫌いとか、そんなこと考えたこともなかった。
『そうなんだろう?』
『そんなこと言われても・・・』
楷渡は、半分好きだということを決め付けるように聞いてきた。
『わからないよ』
『そうか』
楷渡はそこからしばらく何も言ってこなかった。
あたしの本棚から本を取って、黙って勝手に読み始めた。
勝手に本棚から出すのはいつものことなので、何も怒ることはないけれど、今の状態で話しを切られるのは少し嫌だった。
だけど、あたしも何も言おうとはしなかった。
楷渡の言った言葉を真剣に考えようと思ったからだ。
しばらくそのことを考えていたけど、あたしの中から答えは出てこなかった。
恋愛何てしたことのないあたしに、答えを出せという方が難しいに違いない。
それに、本当に好きかわからない。
ただ楷渡が言ってるだけ、何を根拠に言っているのかはわからない。
だけど、この思いを確認したいと思った。
どうしたら、いいんだろうか・・・




